【ことわざ】
危ない橋も一度は渡れ
【読み方】
あぶないはしもいちどはわたれ
【意味】
安全で堅実な方法ばかりでは成功しにくいので、時には危険を承知で冒険してみよ、という教え。


【英語】
・Nothing ventured, nothing gained.(危険を冒さなければ何も得られない)
【類義語】
・虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
【対義語】
・君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)
・石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)
「危ない橋も一度は渡れ」の語源・由来
「危ない橋も一度は渡れ」は、「危ない橋を渡る」という比喩をもとに、危険を承知で挑戦することをすすめる形にしたことわざです。「危ない」は災いが起こりそうで危険な状態を表し、「渡る」は一方から他方へ移動する意味をもちます。つまり、もとの具体的な情景は、落ちるかもしれない不安定な橋を、それでも向こう岸へ行くために渡るという場面です。
「危ない橋を渡る」は、いまにも落ちそうな橋を渡ることから、仕事などで危険なことにあえて挑戦することへ意味が広がった言い方です。また、特に法律に触れるか触れないかのぎりぎりの行為を指して使われることもあります。この点では、単に「勇気がある」というだけでなく、「危うさを含む行動」という陰のニュアンスももっています。
これに近い言い方は、明治21年(1888年)初演の歌舞伎作品『月梅薫朧夜(つきとうめかおるおぼろよ)』(河竹黙阿弥作)とも結びついて伝わっています。この作品は、明治期の新しい世相を取り入れた散切物(ざんぎりもの:明治の風俗を扱う歌舞伎)の一つで、同時代の事件や社会の空気を芝居に取り込もうとした時期の作品です。
ただし、「危ない橋も一度は渡れ」は、「危ない橋を渡る」よりも教訓の形がはっきりしています。「も一度は渡れ」と言うことで、危険そのものを喜ぶのではなく、安全策ばかりにとらわれると成功の機会を失う、という考えを強めています。あえて冒険にも挑戦してみよ、堅実で安全なことばかり考えているところに成功はない、という意味で使われます。
このことわざの「橋」は、目標へ向かう途中にある不安や困難のたとえです。川のこちら側に残っていれば落ちる危険はありませんが、向こう岸にある成果には近づけません。そのため、この表現は「危険を無視してよい」という意味ではなく、準備や判断をしたうえで、必要な挑戦から逃げないことを教える言葉として読むのがふさわしいです。
同じ橋の比喩でも、「石橋を叩いて渡る」は、堅い石橋でさえ安全を確かめてから渡るという意味で、用心深さを表します。これに対して「危ない橋も一度は渡れ」は、慎重さだけでは前に進めない時がある、という方向へ読む人の背中を押します。二つのことわざを比べると、危険を避ける知恵と、危険を引き受ける勇気の違いが分かりやすくなります。
「危ない橋も一度は渡れ」の使い方




「危ない橋も一度は渡れ」の例文
- 新しい商品を出すには失敗の可能性もあるが、危ない橋も一度は渡れと考え、会社は小さく試験販売を始めた。
- 大会で勝つために難しい技へ挑むのは不安だったが、危ない橋も一度は渡れという気持ちで、選手は練習を重ねた。
- 文化祭の劇で主役を引き受けるのは勇気がいるが、危ない橋も一度は渡れと思い、彼は舞台に立つことを決めた。
- 家族は反対したが、姉は十分に準備したうえで、危ない橋も一度は渡れと海外留学に踏み出した。
- 友人との共同制作は意見がぶつかるおそれもあったが、危ない橋も一度は渡れと考えて、一緒に作品を作った。
- 地域の新しい催しは成功するか分からなかったが、危ない橋も一度は渡れの精神で、住民たちは初めて夜市を開いた。
主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge Dictionary, Cambridge University Press.























