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【敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなり】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなり

【故事成語】
敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなり

【読み方】
あえておくれたるにあらず、うますすまざればなり

【意味】
大きな働きをしてもそれを自分の手柄として誇らず、控えめにふるまうこと。功績があっても前に出ず、へりくだるたとえ。

ことわざ博士
この故事成語は、ほんとうは人からたたえられてよい働きをした人が、それを自分の手柄として言い立てないときを表すよ。
助手ねこ
少し照れているだけの場面より、みんなを助けたり集まりを守ったりしたあとで、なお前に出すぎない場面によく合うニャン。

【英語】
・Meng Zhifan does not boast of his merit.(孟之反は自分の功績を誇らない)
・It was not that I dared to stay behind; my horse would not advance.(わざと後れたのではなく、馬が進まなかった)

【類義語】
・能ある鷹は爪を隠す(のうあるたかはつめをかくす)
・実るほど頭を垂れる稲穂かな(みのるほどこうべをたれるいなほかな)
・大賢は愚なるが如し(たいけんはぐなるがごとし)

【対義語】
・大言壮語(たいげんそうご)
・我が門で吠えぬ犬無し(わがかどでほえぬいぬなし)
・犬の遠吠え(いぬのとおぼえ)

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「敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなり」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語は、『論語(ろんご)』の雍也第六にある、孟之反(もうしはん)の話から来ています。孔子はそこで「孟之反不伐」と述べ、まず彼が自分の功績を誇らない人であったことをたたえています。

続く文には、敗走する軍の殿(しんがり)を務め、城門に入ろうとしたとき、馬にむちを当てて「非敢後也、馬不進也」と言ったことが記されています。日本語では、これが「敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなり」と読まれてきました。

ここでいう「後れた」とは、ただ遅れたということではありません。退く味方を守るために最後尾に残ったということで、殿は軍の中でもとくに危険で重い役目です。

古い注では、孟之反は魯の大夫で、斉と戦ったときに軍が大敗したと説明されています。そして「不伐」とは、自分の功績を自分で言い立てなかったことだと説かれています。

この戦いの場面は、『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』哀公十一年の記述とも結びついています。これは紀元前484年(魯の哀公11年・春秋時代末期)のことで、そこには斉の軍が魯を攻め、孟之側が後れて入り、しんがりとなったことが書かれています。

その記述では、孟之側は馬を進めながら「馬不進也」と言っています。『論語』の章では、その前に「非敢後也」という言葉を加えることで、わざと残ったのではないと述べ、自分だけが名誉を受けることを避けた姿がいっそうはっきり伝わります。

つまり、もとの話で孟之反は、ほんとうに大きな働きをしています。けれども、城門で人々が迎え、その功をたたえようとしたとき、自分だけが名を得ることを望まず、馬のせいにして前へ出ませんでした。

このため、この故事成語のいちばん大事なところは、ただ遠慮深いとか、ほめられるのが苦手だというだけではありません。ほんとうは目立ってよい働きがあった人が、その功績を自分の口で飾らず、静かに引くところに意味があります。

日本でも『論語』は、孔子とその弟子たちの言行を伝える基本の書として長く読まれてきました。その流れの中でこの章も学ばれ、孟之反の態度は、功を誇らない人の手本として受け取られてきました。

近世初めには、すでに『論語集解』の刊本にこの章が入り、日本語の訓読でも読まれていました。また、後の注釈書にも「敢テ後レタルニ非ス、馬ノ進マ不レハナリ」といった読み下しが見え、日本でこの句が学びの言葉として受け継がれていたことが分かります。

こうして、もとの章の中のせりふが、後には一つの独立した故事成語として使われるようになりました。今では、苦しい場面で人のために働いたのに、自分の手柄として言い立てない人をほめる言葉として用いられています。

ですから、この故事成語は、結果だけを小さく言うための決まり文句ではありません。人を助け、集まりを守り、それでも功績を独り占めしないという、孟之反の静かな気高さまで含んでいるところに、長く伝わってきた重みがあります。

「敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなり」の使い方

健太
さっきの避難訓練で、一年生の列が階段で止まったから、最後まで後ろについて校庭まで出たんだ。先生にほめられたけれど、なんだかはずかしかったよ……。
ともこ
泣いていた一年生が落ち着いて歩けたのは、健太くんが後ろで見守ったからだよ。今日習った敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなりって、こういう感じだね。
健太
そんな立派なことじゃないよ。上ばきが脱げた子がいたから、はき直すまで待っていただけなんだ。
ともこ
でも、そのおかげで列があわてずに進めたんだもの。次も困っている人がいたら、今みたいに静かに助けようね。
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「敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなり」の例文

例文
  1. 修学旅行で体調をくずした友人の荷物を持ち、列の最後を歩いた生徒がそのことを自分から語らない姿は、敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなりというほかない。
  2. 停電の夜に懐中電灯を配り、祖父母が寝室に入るまで見届けた兄が、ただ少し遅くなっただけだと言うのは、敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなりの心である。
  3. 試合後、控え選手を陰で支え続けた主将が、勝ちはみんなのおかげだとだけ述べるのは、敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなりの態度だ。
  4. 地域の防災訓練で高齢者の避難を最後まで手伝った人が、自分の役目を話題にしないのは、敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなりといえる。
  5. 締切直前に資料の誤りを直して企画全体を救った担当者が、裏方の仕事ですとだけ言うのは、敢えて後れたるに非ず、馬進まざればなりと評せる。




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