【ことわざ】
縁の下の鍬使い
【読み方】
えんのしたのくわづかい
【意味】
窮屈で、十分に動きが取れず、自由に働けないことのたとえ。


【英語】
・one’s hands are tied(自由に行動できない)
【類義語】
・二間の所で三間の槍を使う(にけんのところでさんげんのやりをつかう)
・雪隠で槍を使う(せっちんでやりをつかう)
・縁の下の槍持ち(えんのしたのやりもち)
【対義語】
・水を得た魚のよう(みずをえたうおのよう)
「縁の下の鍬使い」の語源・由来
「縁の下の鍬使い」は、家の縁側の下という低く狭い場所で、鍬を使おうとする姿から生まれたことわざです。縁の下は、縁側の下や床下を指し、ふつう広々と動き回る場所ではありません。
「鍬」は、田畑を掘り起こしたり、土をならしたりするために使う農具です。土を相手にする道具なので、十分に体を動かせる場所で使ってこそ、本来の働きを発揮します。
このことわざでは、鍬そのものに問題があるのではなく、鍬を使う場所の悪さに意味の中心があります。いくら役に立つ道具でも、縁の下のように頭上や周囲がつかえる場所では、思うように扱えません。
古い用例として、『俚言集覧(りげんしゅうらん)』(寛政九年(一七九七)以降成立、江戸時代中期、太田全斎著)に、「椽の下の鍬づかひ 勢不便なるをいふ」とあります。ここでは、縁の下で鍬を使うように、物事の勢いとして不便で、自由に働けないことを表しています。
『俚言集覧』は、俗語・方言・諺の類を集め、語釈を加えた国語辞書です。そこにこのことわざが収められていることから、江戸時代には、日常のたとえとして知られていた言い方であったことが分かります。
古い用例では「椽の下」と書かれています。「縁」は、家の外側に張り出した板敷きの部分を指し、「椽」とも書かれたため、古い表記では「椽の下」と表されました。
また、古い表記では「鍬づかひ」と書かれています。現代の表記では「鍬使い」と書くのが普通で、表記は変わっても、「狭い所で鍬を使うように不自由である」という意味の芯は変わりません。
似た発想をもつ言葉に、「雪隠で槍を使う」や「二間の所で三間の槍を使う」があります。どちらも、道具の大きさや動きに対して場所が狭すぎるため、自由に扱えないというたとえです。
このことわざは、「縁の下の力持ち」と形はよく似ていますが、意味は異なります。「縁の下の力持ち」は、人目につかないところで大切な役割を果たすことを表しますが、「縁の下の鍬使い」は、窮屈で力を十分に出せないことを表します。
つまり、「縁の下の鍬使い」は、本人の力や道具の価値よりも、それを生かす場所や条件が大切であることを示す言葉です。狭い場所で大きな働きをしようとしても思うように動けない、という生活に根ざした分かりやすいたとえから、現在の意味へと定着しました。
「縁の下の鍬使い」の使い方




「縁の下の鍬使い」の例文
- 狭い倉庫で大きな荷物を組み立てるのは、縁の下の鍬使いで作業が進まない。
- 広い画面で使う設計ソフトを小さな端末で扱うのは、縁の下の鍬使いに近い。
- 優れた選手でも、動く場所のない競技場では縁の下の鍬使いになってしまう。
- 新しい機械を入れても、工場の通路が狭すぎて縁の下の鍬使いの状態だった。
- 才能のある発表者を短すぎる持ち時間に押し込めては、縁の下の鍬使いで本領を発揮できない。
- 大きな机を小さな部屋に置いたため、勉強も片づけも縁の下の鍬使いになった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・太田全斎『俚言集覧』寛政九年以降成立。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary.























