【ことわざ】
雁も鳩も食わねば知れぬ
【読み方】
がんもはともくわねばしれぬ
【意味】
雁の肉か鳩の肉かは、食べてみない者には分からないことから、経験してこそ物事の本当の価値が分かるというたとえ。


【英語】
・The proof of the pudding is in the eating.(物事の良し悪しは、実際に試してみて分かる)
【類義語】
・嘉肴有りと雖も食わずんばその旨きを知らず(かこうありといえどもくらわずんばそのうまきをしらず)
・食わず嫌い(くわずぎらい)
・見ると聞くとは大違い(みるときくとはおおちがい)
「雁も鳩も食わねば知れぬ」の語源・由来
「雁も鳩も食わねば知れぬ」は、雁の肉と鳩の肉を比べるたとえから生まれたことわざです。どちらの肉であるか、また、どちらがどのような味わいであるかは、実際に食べた者でなければ分からない、という考えをもとにしています。
雁は、カモ科ガン亜科の水鳥で、日本では冬に飛来する渡り鳥として知られています。古くから食用にもされ、美味な鳥として扱われてきたことが、このことわざの背景を理解する手がかりになります。
鳩もまた、種類によっては狩猟の対象となり、食用にされてきました。キジバトは食用にされ、肉団子、焼き鳥、ローストなど、他の野鳥と同じように料理されることがあります。
このことわざでは、雁と鳩の味そのものを説明したいのではありません。食べるという直接の経験を通してはじめて分かることがある、という生活感のある比喩になっています。
古い形としては、江戸時代前期の仮名草子『是楽物語』(1655〜1658年ごろ)下巻に、「実(げに)鴈(ガン)も鳩も、くふたるものこそ知(シラ)め」という用例があります。これは、現在の「食わねば知れぬ」と同じ発想を、「食うた者が知る」という形で表したものです。
『是楽物語』の場面では、ある食事やもてなしについて、実際にその場で味わう者でなければ、身にしみる味わいや良さは分からない、という文脈でこの言い方が出てきます。単に食べ物の種類を当てる話ではなく、経験した者にしか分からない実感を述べる言葉として使われています。
この古い用例では、「鴈」という表記も使われています。現代では、同じ鳥を表す字として「雁」を用いるのが一般的で、このことわざも「雁も鳩も食わねば知れぬ」と書かれる形で定着しています。
また、このことわざには「雁も鳩も食うた者が知る」という形もあります。こちらは、経験した者こそが知っている、という面を前に出した言い方で、「食わねば知れぬ」は、経験しなければ分からない、という面を前に出した言い方です。
似た発想は、中国古典に由来する「嘉肴有りと雖も食わずんばその旨きを知らず」にもあります。これは、どんなにおいしい料理でも食べなければそのよさは分からない、また、よい教えも学ばなければよさが分からない、という意味を表します。
ただし、「雁も鳩も食わねば知れぬ」は、特定の中国の人物や歴史的事件をもとにした言葉ではなく、日本語のことわざとして、江戸時代の用例を通して確認できる表現です。鳥の肉の味という身近な比喩から、物事の真価は経験によって分かる、という教えへ広がったものといえます。
現在では、食べ物だけでなく、勉強、習い事、旅行、仕事、新しい道具など、実際にやってみなければ良さや難しさが分からない場面に用いられます。評判だけで決めつけず、自分で確かめる姿勢を促すことわざです。
「雁も鳩も食わねば知れぬ」の使い方




「雁も鳩も食わねば知れぬ」の例文
- 新しい料理を見た目だけで苦手だと決めるのは早い、雁も鳩も食わねば知れぬ。
- 評判だけで本の面白さを決めつけず、雁も鳩も食わねば知れぬと思って一章だけ読んでみた。
- 海外研修は大変そうに見えたが、雁も鳩も食わねば知れぬで、参加して初めて得るものの大きさが分かった。
- 最新の道具は使いにくそうに思えたが、雁も鳩も食わねば知れぬで、実際に使うと作業がずっと楽になった。
- 友人のすすめる映画を先入観で避けるのは、雁も鳩も食わねば知れぬに反する。
- 職場の新しい方法も、雁も鳩も食わねば知れぬで、試してから良し悪しを判断すべきだ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・佐竹昭広ほか編、渡辺守邦・渡辺憲司校注『新日本古典文学大系 74 仮名草子集』岩波書店、1991年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』Cambridge University Press.























