【ことわざ】
叶わぬ時には親を出せ
【読み方】
かなわぬときにはおやをだせ
【意味】
言い訳に困ったときには、親を引き合いに出して口実を作れという意味。


【英語】
・use one’s parents as an excuse.(親を口実にする)
【類義語】
・苦しい時には親を出せ(くるしいときにはおやをだせ)
・切ない時は親を出せ(せつないときはおやをだせ)
「叶わぬ時には親を出せ」の語源・由来
「叶わぬ時には親を出せ」は、困ってどうにもならないときに、親を理由に持ち出すことを表すことわざです。「叶わぬ」は、思いどおりにならない、またはどうにもできない状態を表し、「口実」は、言い逃れの材料や、そのための言葉を指します。
このことわざには、中国古典の特定の人物や出来事にもとづく故事はありません。日本語の生活感覚の中で、困った場面の言い訳として「親」を持ち出す発想が、短い言い回しとして定着したものです。
古い形としては、「切ない時は親を出せ」が知られています。「切ない時は親を出せ」は、苦しい時や困った時には、親を引き合いに出して言い訳や口実の種にせよ、という意味をもち、「叶わぬ時は親を出せ」と同じ意味の言い方として扱われます。
ここでの「切ない」は、現在よく使う「胸がしめつけられるようにつらい」という意味だけでなく、困って苦しい、身動きが取りにくいという意味に近く働いています。そのため、「切ない時」と「叶わぬ時」は、どちらも「どうにもならず、言い訳に困る時」を指す言い方としてつながります。
早い用例として、『名歌徳三舛玉垣(めいかのとくみますのたまがき)』(1801年初演・江戸時代後期、桜田治助ら作)に、「コレ、『せつない時は親を出せ』と言ふが、親の代りに子を出すとは」とあります。
『名歌徳三舛玉垣』は歌舞伎の作品で、近世の会話や芝居のせりふの中に、当時の言い回しを伝えています。この用例では、「親を出せ」ということわざをふまえながら、「親の代りに子を出す」と言い換えており、この表現が観客に通じる言葉であったことがうかがえます。
この古い用例は、「親を出す」が実際に親をその場に呼ぶという意味ではなく、親の名や親の都合を言い訳の材料にするという意味で使われていたことを示しています。親の病気、親の命令、親の都合といった理由は、他人が強く疑いにくいものとして、口実にしやすかったと考えられます。
後には、「切ない時は親を出せ」のほか、「苦しい時には親を出せ」「叶わぬ時には親を出せ」という形でも使われるようになりました。いずれも、言い訳に困ったとき、親を引き合いに出して口実を作るという意味を共有しています。
「叶わぬ時には親を出せ」は、親を本当に大切にする教えを述べることわざではありません。むしろ、都合が悪くなったときに親を理由にするずるさや、人が言い訳を作るときの身近な手段を、少し皮肉をこめて言い表すことわざです。
そのため、現在このことわざを使うときは、安易な言い逃れをすすめるよりも、親を口実にしてその場を切り抜けようとする態度を指す場合が多くなります。古い芝居のせりふに残る生活の知恵と皮肉が、現代にも「言い訳をするときの人間らしい弱さ」を表す言葉として伝わっています。
「叶わぬ時には親を出せ」の使い方




「叶わぬ時には親を出せ」の例文
- 友人は約束を断る理由に困り、叶わぬ時には親を出せとばかりに母の用事を持ち出した。
- 叶わぬ時には親を出せというが、親を口実にしてばかりいると信用を失う。
- 会議を早く抜けたい彼は、叶わぬ時には親を出せと言うように、父の通院を理由にした。
- 子どものころ、門限を理由に遊びを断る友人を見て、叶わぬ時には親を出せということわざを思い出した。
- 叶わぬ時には親を出せではなく、自分の都合は自分の言葉で説明すべきだ。
- 用事を引き受けたくないからといって、叶わぬ時には親を出せのような言い訳に頼るのはよくない。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・浦山政雄・松崎仁校注『歌舞伎脚本集 下 日本古典文学大系54』岩波書店、1961年。























