【ことわざ】
風邪は万病の元
【読み方】
かぜはまんびょうのもと
【意味】
風邪を軽く見て放っておくと、さまざまな病気を引き起こす原因になるという戒め。たかが風邪と思って油断してはならないという意味。


【英語】
・The common cold can develop into all kinds of illness.(風邪がさまざまな病気に発展することがある)
【類義語】
・風邪は百病の長(かぜはひゃくびょうのちょう)
・風邪は百病の元(かぜはひゃくびょうのもと)
「風邪は万病の元」の語源・由来
「風邪は万病の元」は、風邪を軽い病気だからと油断せず、早めに治すべきだという生活上の戒めを表すことわざです。古い形としては、「風邪は百病の長」「風邪は百病の元」という言い方も伝わります。
この考え方の奥には、古代中国の医学にあった「風」と病気の結びつきがあります。『黄帝内経(こうていだいけい)』は、中国の古典医学書で、戦国時代から秦・漢にかけての医学文献を集めたものとされ、現存本は『素問(そもん)』と『霊枢(れいすう)』に分けられます。
『黄帝内経』は、黄帝と岐伯(きはく)・雷公(らいこう)らとの問答形式で、生理・病理・診断法・治療法を述べます。『素問』は、戦国時代以来の医学論文を綴り合わせたもので、一人の作者による書物ではなく、唐代の王冰が再編・注解し、宋代に林億らが校正した形で伝わっています。
『素問』風論には、「故風者,百病之長也,至其變化,乃為他病也」とあります。これは、風は多くの病の先に立つものであり、変化すれば別の病にもなる、という意味です。
また、『素問』骨空論にも、「余聞風者,百病之始也」とあります。ここでも、風は多くの病の始まりとして扱われ、外から入る風が寒け・汗・頭痛・体の重さ・悪寒などを起こすものとして述べられています。
ここでいう「風」は、単なる空気の動きではなく、体に悪い影響を与える外からの気を指します。古代中国では、悪い風が体に入ると人を損ない、さまざまな病気を引き起こすと考え、それを風邪(ふうじゃ)と呼びました。
日本語でも、「風邪」は初めから現在の「かぜ」だけを表したわけではありません。『医心方』(984年・平安時代中期、丹波康頼撰)には、体内に入って種々の病気を引き起こす風という意味で、「風邪」が出てきます。
その後、「風邪」はしだいに、かぜ・かぜひき・感冒を指す言葉としても使われるようになりました。江戸時代後期の人情本『春色梅児誉美』(1832〜1833年、為永春水著)には、「折節風邪(フウジャ)の煩ひに」という用例があります。
一方で、病気の「かぜ」に「風邪」の字を当てることが一般的になったのは、明治以降です。それ以前には、風という自然現象、体に入る悪い風、感冒としての「ふうじゃ」が重なりながら、現在の表記と意味に近づいていきました。
近代の用例としては、宮沢賢治『楢ノ木大学士の野宿』(1923年)に、「俗にかぜは万病のもとと言いますがね」と出てきます。このころには、現在と同じように、風邪を軽く見ないよう戒める言い方として広く通じる形になっていました。
したがって「風邪は万病の元」は、中国古代医学の「風が多くの病の始まりになる」という考えを背景にもち、日本では「風邪」を病気の「かぜ」と結びつけながら定着したことわざです。現在では、風邪そのものだけでなく、小さな不調を甘く見ない心がけを表す言葉として使われます。
「風邪は万病の元」の使い方




「風邪は万病の元」の例文
- 風邪は万病の元だから、熱が下がっても無理に登校しないほうがよい。
- 祖母は、風邪は万病の元と言って、のどの痛みだけでも早めに休ませてくれた。
- 大事な会議を控えているので、風邪は万病の元と考えて早めに体調を整えた。
- 風邪は万病の元という言葉どおり、小さな不調を放っておくと長引くことがある。
- 父は忙しくても、風邪は万病の元だからと、咳が出た日は早く寝るようにしている。
- 遠足の前日に体調をくずした弟に、母は風邪は万病の元だから今日は休みなさいと言った。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・『黄帝内経素問』。
・丹波康頼『医心方』984年。
・為永春水『春色梅児誉美』1832〜1833年。
・宮沢賢治『楢ノ木大学士の野宿』1923年。























