【ことわざ】
金の草鞋で探す
【読み方】
かねのわらじでさがす
【意味】
根気強く、あちこちを探し回ること。簡単には見つからない、得難い人や物を探し求めることのたとえ。


【英語】
・search high and low.(あらゆる所をくまなく探す)
【類義語】
・草の根を分けて捜す(くさのねをわけてさがす)
「金の草鞋で探す」の語源・由来
「金の草鞋で探す」の「金」は、「きん」ではなく「かね」と読みます。ここでは、黄金や金銭ではなく、金属、特に鉄を指しており、「きんのわらじ」と読むのは誤りです。
「草鞋(わらじ)」は、わらなどの植物を編んで作る履物です。歩き続けると底が擦り減るため、長い旅では、途中で何足も履き替える必要がありました。
これに対して、「金の草鞋」は、鉄で作った、いくら歩いても簡単には擦り切れない丈夫な草鞋を表します。実際の旅支度を述べたものではなく、どれほど長く歩き回っても探し続けられる履物を思い描いた表現です。
したがって、このことわざが表すのは、少し辺りを探して終わりにすることではありません。普通の草鞋なら何足も擦り切れるほど歩き、長い時間と手間をかけて、見つかるまで根気強く探すことです。
古い用例は、『たきつけ草』(1677年・江戸時代前期、作者不詳)に出てきます。この作品は、『もえくゐ』『けしずみ』と合わせた三巻から成る遊女評判記で、遊郭から帰る若者と老人の問答を軸に、遊女や遊郭について語る形を取っています。
その中に、「くるわの中をかねのわらぢにて、七へんたづねたりともあるまじ」とあります。これは、遊郭の中を鉄の草鞋で七度探し回ったとしても、そのような人はいないだろう、という意味です。
この用例では、長く歩き回る苦労だけでなく、探している相手がめったにいないことも表しています。現在の「苦労を重ねて探す」という意味と、「簡単には得られない人や物を求める」という意味とが、すでに結び付いています。
「金の草鞋」という言葉そのものも、江戸時代前期には、いくら歩いても擦り減らない丈夫な草鞋の意味で使われていました。また、表記には「金」と「鉄」があり、どちらも「かね」と読みます。
言い回しにも、いくつかの形があります。「金の草鞋で尋ねる」のほか、「鉄の草鞋で尋ねる」「金の足駄で尋ねる」「金の草鞋で捜す」などが使われてきましたが、いずれも、根気強く探し回ることを表します。
古い形では「尋ねる」が使われていますが、現在では「探す」も広く用いられます。「尋ねる」から「探す」へと言葉が替わっても、遠くまで歩き、手を尽くして、得難いものを求め続けるという意味は変わりません。
このことわざは、単に探す範囲が広いことだけを表すものではありません。見つけるのが難しく、それでも探すだけの価値がある人や物を、容易に諦めず求め続けるところに、表現の重みがあります。
このように、「金の草鞋で探す」は、擦り切れない鉄の草鞋を履いてどこまでも歩くという誇張から生まれました。江戸時代にはすでに、めったにいない相手を根気強く探す表現として使われ、現在までその意味を保っています。
「金の草鞋で探す」の使い方




「金の草鞋で探す」の例文
- 町工場は、古い機械を修理できる職人を金の草鞋で探すことになった。
- 博物館では、失われた古文書の別本を金の草鞋で探している。
- 社長は新しい事業を任せられる人材を金の草鞋で探す覚悟を決めた。
- 父は製造が終わった時計の部品を金の草鞋で探し、ようやく手に入れた。
- 地域の歴史を知る語り手を金の草鞋で探すうち、百歳近い老人にたどり着いた。
- 優れた技術と誠実な人柄を兼ね備えた後継者は、金の草鞋で探しても容易には見つからない。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・国書刊行会編『江戸時代文芸資料 第4』名著刊行会、1964年。
・作者不詳『たきつけ草・もえくゐ・けしずみ』1677年。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Dictionary.』























