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【風が吹けば桶屋がもうかる】の意味と使い方や例文!語源由来と北村孝一先生の解説コラム(類義語・英語)

風が吹けば桶屋が儲かる

【ことわざ】
風が吹けば桶屋がもうかる

【読み方】
かぜがふけばおけやがもうかる

【意味】
意外なところに影響が出ること、また、あてにならない期待をすることのたとえ。風・土ぼこり・目の病・三味線・猫・ねずみ・桶という、遠回りな因果のつながりで説明される。

ことわざ博士
小さな原因から、思いもよらない離れた結果へつながることを表すたとえだよ。
助手ねこ
こじつけに近い理屈や、実現しそうにない期待を皮肉る場面にも用いるニャン。

【英語】
・butterfly effect(小さな変化が、別のところに大きな影響を及ぼすこと)

【類義語】
・瓢箪から駒(ひょうたんからこま)
・取らぬ狸の皮算用(とらぬたぬきのかわざんよう)

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「風が吹けば桶屋がもうかる」の語源・由来

ことわざを深掘り

「風が吹けば桶屋がもうかる」は、風が吹くことと桶屋の利益という、ふつうは直接結びつかない二つの出来事を、長い因果の鎖でつないでみせることわざです。強い風で土ぼこりが立ち、目を病む人が増え、三味線を弾く人が増え、三味線に使う猫の皮の需要が増え、猫が減り、ねずみが増え、ねずみが桶をかじるので、桶屋がもうかる、という筋立てで説明されます。

江戸時代の古い用例として、『新版絵入世間学者氣質(しんぱんえいりせけんがくしゃかたぎ)』(1768年・江戸時代中期、無跡散人著)には、このことわざの古い形にあたる「風が吹いたによって箱屋」という説明が出てきます。同書は明和5年に柏屋喜兵衛から刊行された浮世草子で、巻頭にも「世間学者氣質」と書かれています。

この段階では、現在のように「桶屋」ではなく「箱屋」がもうかる形でした。箱屋は、重箱や食器を入れる木箱などを扱う商売であり、ねずみが木製品をかじるという発想から、箱を作る商売に利益が及ぶという筋になっていました。つまり、現在の「桶屋」という形に定まる前には、木の品物を扱う商売がもうかるという、少し広い形の話として語られていたのです。

十返舎一九の『東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)』(1802〜1809年・江戸時代後期、十返舎一九作・画)にも、よく似た話が出てきます。この作品は、弥次郎兵衛と喜多八の旅を描いた滑稽本で、蒲原の木賃宿で同宿した男の身の上話として、風から箱屋へつながる遠回りなもうけ話が語られます。

後には「箱屋」ではなく「桶屋」とする形が広まり、「大風が吹けば桶屋が喜ぶ」「大風が吹けば桶屋が儲かる」といった異形も使われました。現在では、思いもよらない影響の広がりを表すときだけでなく、確率の低い因果関係を無理に結びつける理屈や、あてにならない期待を皮肉る表現としても用いられます。

北村孝一先生のコラム
“風が吹けば桶屋がもうかる”の笑い

このコラムを書いた人
北村孝一(きたむら よしかつ)先生
北村孝一ことわざ研究者(ことわざ学会代表理事)。エッセイスト。学習院大学非常勤講師として「ことわざの世界」を講義した(2005年から断続的に2017年3月まで)。用例や社会的背景を重視し、日本のことわざを実証的に研究する。

 

“風が吹けば桶屋がもうかる”の笑い

「風が吹けば桶屋(おけや)がもうかる」という、ことわざを聞いたことがありますか?はじめて聞いたのでは、どういうことなのか、 よくわかりませんね。

強い風が吹いたとしても、もちろん、すぐに桶屋が儲かるわけはありません。屋根屋なら、風が吹きあれると、瓦(かわら)が飛んだり屋根がいたんで修繕(しゅうぜん)をたのむお客さんがふえるので、もうかるのもわかりますね。

では、なぜ、桶屋がもうかるというのでしょう。このことわざは、なぜ、どうして、と質問されることを予想して、答えを用意しています。ちょっと長くなりますが、その説明(桶屋物語ともいわれます)を聞いてみましょう。

風 (「大風」のことです)が吹くと、砂などを含む土ぼこりが空に舞い上がり、目を病(や)んで失明する人も出ます。ふつうの仕事ができなくなるので、三味線(しゃみせん)を習う人がふえます。三味線は猫の皮を張った楽器なので、猫の数がへり、ネズミがふえます。

ネズミは、天敵の猫がいないので、あばれまわって桶をかじり、桶屋が儲かるという話です。古くは、「箱屋がよろこぶ」ともいいました。箱屋は木の箱(重箱や食器を入れる木箱など)を売る商売ですから、ことわざの意味にかわりはありません。

なんだか回りくどい理屈ですが、ほんとうでしょうか? 風が吹いて舞い上がった土ぼこりで目を悪くし、失明する人が多く出て、三味線を稽古するなんて、いまでは想像もつきませんね。まずありえない話と思うでしょう。

しかし、このことわざが使われはじめた江戸時代、とくに江戸(いまの東京)では、そう簡単に否定できない次のような事情がありました。

当時は、冬の空っ風で吹き上げられる砂まじりの土ぼこり(土煙ともいう)がひどく、そのために昼間でも暗くなり、先が見えなくなることもあったのです。道路は舗装(ほそう)されてなく、人家の近くに畑や荒れ地も多かった時代でした。

土や砂粒が目に入って、目を病む人も出たのはたしかでしょう。眼科の医術が発達していなかったので、きちんとした治療が受けられず、売薬や薬師如来(やくしにょらい。病気をなおしてくれる仏様)にすがるだけで、失明してしまう人も少なくなかったようです。

目が不自由になると、これまでの仕事が続けられなくなり、芸能の道に入り、三味線を習う人がふえたのも事実でしょう。三味線は琉球(沖縄)から入ってきた当時流行の楽器で、目が不自由でも腕をみがけば食べていくことができたのです。

また、ネズミは前歯が伸びつづけるので木をかじって研(と)ぐ習性があり、樹木や木造の家屋にも被害が出ていましたから、桶をかじることもありうるでしょう。

このような背景を考えると、“風が吹けば桶屋がもうかる”というのは、まったくありえない話ではなく、あっても不思議はない感じがしてきます。

ただし、猫がへり、ネズミがふえるところまでは、かろうじて理屈がとおりますが、ネズミが桶をかじって…となると、かなり怪しくなってきます。ネズミは、とくに桶を好むわけではありません。さらに桶屋がもうかるとなると、こじつけか妄想(もうそう。ありもしないことを勝手に想像すること)といわざるをえないでしょう。

実際に一儲けしようと桶屋や箱屋をはじめると、人には笑われ、本人は大損するのがオチでしょう。弥治さん喜多さんが珍道中をくりひろげる『東海道中膝栗毛』には、箱屋で大もうけしようとして、全財産をはたいて箱を仕入れたのにまったく売れず、食うに困って六部(ろくぶ。経文をとなえて銭をもらう巡礼)になった男の話が出てきます。

では、なぜ、このようなことわざが生まれ、江戸時代から今日まで使われてきたのでしょうか? このことわざのルーツをたどっていくと、17世紀の末に笑い話を集めた本(「初音草噺大鑑」)に行き着きます。

笑い話では、桶屋は指し物屋(家具職人)になっていますが、風が吹くことにはじまる理屈は同じで、ネズミが家具をかじるので注文が舞い込むと語っています。つまり、回りくどい理屈をこねて、実現性のほとんどないもうけ話を得々と語る男を笑ったものでした。

ことわざは、こうした笑い話をたくみに要約したものといってよいでしょう。笑い話と一体になって、回りくどいストーリーにはまったく反論せず、発端(ほったん)と結論だけを取り出し、そのまま結びつけることによって、もうけ話を笑い飛ばすのです。

見事なレトリック(表現方法)ですが、この表現が300年以上の長きにわたって引き継がれてきたのには、もう少し別の要因もありそうです。

一つは、何かが起きることによって、まったく無関係と思われるものにも意外な影響がおよぶことを暗に教えてくれることです。物理学者で随筆家の寺田寅彦は、宇宙のなかのあらゆる現象は無限にあるが、これらは互いになんらかの影響関係があるとして、「風が吹いて桶屋が喜ぶ」もあながち無意義なことではない、と述べています。

もう一つは、桶屋の愚かさは笑って終わりではなく、じつは私たち自身も同じ愚かさを共有しているのではないか、という疑問です。物事を観察し、因果関係をたどり、仮説をたてて、計画をなしとげようとすることは、金もうけとかぎらず、人間の営(いとな)みに共通するものでしょう。そうした可能性をさぐろうとするとき、ともすると、私たちは過大な夢ばかり追求し、不都合な事実には目をふさぎがちです。ことわざは、他人を批判するだけでなく、自らの弱点にも目をひらいてくれるのです。

ことわざは、常識の枠をこえて、さまざまな物事を根本から考え直すきっかけにもなるといってよいでしょう。(2026/5/4)

©2026 Yoshikatsu KITAMURA

「風が吹けば桶屋がもうかる」の使い方

健太
来週の日曜日にマラソン大会があるけれど、もし雨が降ったら中止になって、僕たちは宿題をする時間ができるよね。
ともこ
そうすれば月曜日のテストでみんな満点が取れて、先生が喜んで宿題を減らしてくれるかもしれないよ!
健太
それはいくらなんでも、風が吹けば桶屋がもうかるような、ありえない話だよ。
ともこ
あはは、確かにちょっと期待しすぎだったね!
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「風が吹けば桶屋がもうかる」の例文

例文
  • 近所に新しい駅ができて、離れた商店街の客まで増えたのは、風が吹けば桶屋がもうかるような話だ。
  • 雨の日が続いたせいで家で遊ぶ子が増え、古いボードゲームが売れたというのは、風が吹けば桶屋がもうかるに近い。
  • 小さな仕様変更が別の部署の仕事量を増やすとは、風が吹けば桶屋がもうかるの典型だ。
  • 友人の一言が回り回って文化祭の出し物を変えることになり、風が吹けば桶屋がもうかるを実感した。
  • 新しい遊歩道の完成で遠くの弁当屋まで売り上げが伸び、風が吹けば桶屋がもうかると評された。
  • 何の根拠もなく、道路工事が始まれば自分の店も必ず繁盛すると考えるのは、風が吹けば桶屋がもうかる式の期待だ。

主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・無跡散人『新版絵入世間学者氣質』柏屋喜兵衛、1768年。
・博文館編輯局校訂『気質全集』博文館、1895年。
・十返舎一九『東海道中膝栗毛』1802〜1809年。
・丸山健夫『「風が吹けば桶屋が儲かる」のは0.8%!?』PHP研究所、2006年。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』Oxford University Press.





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