【ことわざ】
愛想尽かしは金から起きる
【読み方】
あいそづかしはかねからおきる
【意味】
女が男につれなくなったり、別れを考えたりするのは、金銭上の問題が原因であることが多いということ。


【類義語】
・金の切れ目が縁の切れ目(かねのきれめがえんのきれめ)
「愛想尽かしは金から起きる」の語源・由来
このことわざの核にある「愛想尽かし」は、相手への好意や愛情がなくなって嫌になること、また、その心を表す冷たい態度や言葉を指します。「愛想」が尽きることから、親しかった相手から心が離れ、つれなく振る舞うという意味へつながっています。
「愛想尽かし」の古い用例として、『生玉心中(いくたましんじゅう)』(1715年・江戸時代中期、近松門左衛門作)に、「あいそづかしいふてくだんす」という言い方が出てきます。この作品は、大坂の茶碗商の子である嘉平次と遊女おさがとの心中事件を脚色した浄瑠璃(じょうるり)で、男女の関係が崩れていく場面に「愛想尽かし」という言葉が用いられています。
ただし、この用例が示すのは、「愛想尽かし」という言葉が、江戸時代中期にはすでに使われていたということです。「愛想尽かしは金から起きる」ということわざ全体が、『生玉心中』から直接生まれたという意味ではありません。
江戸時代中期以後、「愛想づかし」は、浄瑠璃や歌舞伎(かぶき)の世話物で、男女の別れにかかわる重要な場面を指す言葉にもなりました。そこでは、女が男を思いながらも、男の出世、多額の金が必要な事情、義理などのために、本心とは反対に冷たく振る舞い、男がそれを心変わりと受け取って、悲劇へと進む筋立てが用いられました。
江戸時代後期の人情本『春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)』(1832〜1833年、為永春水作)にも、「あいそづかしもされんか」と心配する場面があります。ここでは、相手から冷たく遠ざけられることを恐れる心が表されており、「愛想づかし」が、恋愛関係の不安を語る言葉としても使われていたことが分かります。
また、「愛想尽かし」には、後に料理屋などの「勘定」や「勘定書」を指す使い方も生まれました。明治時代の落語『磯の白浪』(1890年)には、その意味での「愛想尽かし」の用例があり、勘定書を見れば客の愛想が尽きる、という含みから生じた言い方とされています。
一方、このことわざの「金」は、勘定書の呼び名ではなく、男女の仲を冷えさせる金銭上の問題を指します。恋人や夫婦の間に愛情があっても、金をめぐる不実や困窮が重なれば、相手への信頼が失われ、心まで離れてしまうことがある、という教えです。
この言い方は、「愛想尽かしも金から起きる」という形でも記されています。「は」の形も「も」の形も、親しい男女や夫婦の仲が、金銭の不足や扱いをめぐる問題によって冷えることがある、という世の経験を言い表しています。
もとの語釈には、女が男につれなくなるという、かつての人間関係の捉え方が表れています。しかし、現在このことわざから受け取れる戒めは、お金についての誠実さを欠けば、大切な相手の信頼まで失いかねない、ということです。
「愛想尽かしは金から起きる」の使い方




「愛想尽かしは金から起きる」の例文
- 恋人が借金を隠していたと分かり、愛想尽かしは金から起きるという通り、二人の仲は急に冷えた。
- 愛想尽かしは金から起きるといわれるように、妻は生活費を何度も使い込む夫との別れを決めた。
- 婚約中の二人は金の使い方をめぐって争い、愛想尽かしは金から起きるという結末を迎えた。
- 長年連れ添った夫婦でも、家計のごまかしが続けば、愛想尽かしは金から起きることがある。
- 祖母は、愛想尽かしは金から起きるということわざを引き、夫婦がお金の話を避けるのはよくないと孫を戒めた。
- 彼は恋人に何度も金を借りた末に別れを告げられ、愛想尽かしは金から起きるとはこのことだと思い知った。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・現代言語研究会編『故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・松井俊諭「愛想づかし」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・近松門左衛門『生玉心中』1715年。
・為永春水『春色梅児誉美』1832〜1833年。























