【ことわざ】
蚊がうすづけば雨が降る
【読み方】
かがうすづけばあめがふる
【意味】
蚊の群れが、臼をつくように盛んに上下して飛ぶのは、雨が降る前ぶれであるということ。


【類義語】
・蚊が餠搗く(かがもちつく)
・カのもちつき(かのもちつき)
・ウンカのもちつきは雨(うんかのもちつきはあめ)
「蚊がうすづけば雨が降る」の語源・由来
「蚊がうすづけば雨が降る」は、中国古典の故事から出た言葉ではなく、虫の群れ方と天気の変化を結びつけた、日本の天気に関することわざです。蚊の群れが上下に動きながら飛ぶ様子を、臼をつく動作に見立て、そこから雨の前ぶれを読み取った言い方です。
「うすづく」は、漢字で「臼搗く」と書き、穀物などを臼に入れて杵でつくことを表します。上下にくり返す動きが目立つため、蚊の群れが空中で上下する様子を、この言葉でたとえたと考えられます。
このことわざと特に近い言い方に、「蚊が餠搗く」があります。「蚊が餠搗く」は、蚊が群れ集まり、上下に移動しながら浮かぶさまをいい、雨降りの前兆とする言い方です。
「蚊が餠搗く」の古い用例は、『好色万金丹(こうしょくまんきんたん)』(1694年・江戸時代前期、夜食時分作)に出てきます。この作品は、五巻五冊の浮世草子で、大坂新町を舞台にした好色短編集です。
その用例には、「栢(かや)の鋸屑燻らせば、蚊(カ)のもちつくは破れけり」とあります。栢の鋸屑をいぶすと、群れて上下していた蚊の集まりが散ってしまう、という場面で、蚊の群れの動きが「餠搗く」と表されています。
ここで大切なのは、単に蚊が多いというだけではなく、群れがまとまって上下に動く姿です。杵を上げ下げして餅を搗くような動きに重ねたため、「餠搗く」や「うすづく」という表現が生まれました。
また、「蚊柱(かばしら)」という言葉も、このことわざの背景を考えるうえで重要です。蚊柱は、夏の夕方などに、蚊が軒先のあたりで柱のように群がっている様子を表す言葉です。
蚊柱をつくる虫は、日常の言い方では「蚊」と呼ばれることがありますが、現在の虫の分類では、ユスリカ科・ガガンボダマシ科・ヒメガガンボ科など、カ科以外の双翅類も含まれます。こうした群飛は、日本では古くから、生物の動きで季節や天気を知る手がかりとされ、雨の兆しと結びつけられてきました。
同じ発想から、「カのもちつき」「カツボのこめつき」「ウンカのもちつき雨を呼ぶ」といった言い方も伝わっています。いずれも、小さな虫が群れて上下する姿を、米や餅をつく動作に見立て、その後の雨を予想する言葉です。
「蚊がうすづけば雨が降る」は、こうした「蚊が餠搗く」「カのもちつき」と同じ観察の流れにある言い方です。「餅を搗く」よりも「臼を搗く」という形にして、上下運動のたとえをそのまま天気のことわざに結びつけています。
このことわざは、天気を正確に予報する科学的な法則というより、暮らしの中で自然をよく見てきた人々の経験を短くまとめた言葉です。空の色、雲の形、鳥や虫の動きから天気の変化を感じ取っていた時代の知恵が、蚊の小さな動きにも表れています。
つまり、「蚊がうすづけば雨が降る」は、蚊の群れが臼をつくように上下して飛ぶ様子を、雨の前ぶれとして受け取ったことわざです。小さな虫の動きから空模様を読もうとする、昔の人の細やかな自然観察がこめられています。
「蚊がうすづけば雨が降る」の使い方




「蚊がうすづけば雨が降る」の例文
- 夕方の庭で蚊の群れが上下に飛んでいたので、祖母は蚊がうすづけば雨が降ると言って洗濯物を取り込んだ。
- 田んぼの近くで小さな虫が群れて動いていたため、父は蚊がうすづけば雨が降るを思い出して畑仕事を早めに切り上げた。
- 校庭のすみに蚊柱のような群れが立ったので、先生は蚊がうすづけば雨が降ると話し、外の道具を片づけさせた。
- 空はまだ明るかったが、川辺で蚊が上下に飛んでいたため、蚊がうすづけば雨が降ると考えて傘を持って出た。
- 夏祭りの準備中、蚊の群れが盛んに動いていたので、係の人たちは蚊がうすづけば雨が降ると見て、屋台に雨よけをかけた。
- 蚊がうすづけば雨が降るという言い伝えのとおり、その夜は急に雲が広がり、やがて強い雨になった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・平凡社編『世界大百科事典』平凡社、1988年。
・小川環樹・西田太一郎・赤塚忠・阿辻哲次・釜谷武志・木津祐子編『角川新字源 改訂新版』KADOKAWA、2017年。
・夜食時分『好色万金丹』1694年。























