【ことわざ】
甘い物に蟻がつく
【読み方】
あまいものにありがつく
【意味】
甘い物に蟻が集まるように、利益やうまい話があるところへ人が集まること。


【英語】
・like bees to a honeypot(魅力あるものに多くの人が引き寄せられるように)
【類義語】
・蟻の甘きにつくが如し(ありのあまきにつくがごとし)
・窪い所に水溜まる(くぼいところにみずたまる)
「甘い物に蟻がつく」の語源・由来
このことわざは、砂糖や蜜のような甘いものに蟻(あり)が集まる身近な光景を、人間社会の利害に重ねた表現です。「甘い物」は、ただの食べ物ではなく、得になるもの、心を引き寄せる条件を表し、「蟻がつく」は、そこへ多くの人が寄ってくる様子を表します。
同じ発想の言い回しに、「蟻の甘きにつくが如し」があります。これは、蟻が甘いものへ集まることから、利益のあるところへ人が群がり集まることをたとえた表現で、「甘い物に蟻がつく」は、その比喩をより平易な形で言い表したものといえます。
また、この比喩は一語の「蟻付(ぎふ)」にもなりました。「蟻付」は、蟻が甘いものに寄りつくように、大勢の者が群がり集まることを指します。古い用例として、『国史略(こくしりゃく)』(1826年・江戸時代後期、巌垣松苗著)に「蟻附而上」とあり、鎌倉の兵が大勢で押し寄せて登る様子を、蟻がびっしり付く姿にたとえています。
明治時代になると、この比喩は、物理的に人が群がる場面だけでなく、名声や利益のある場所へ人が寄る意味にも広がります。田口卯吉の『日本開化小史(にほんかいかしょうし)』(1877〜1882年・明治時代、田口卯吉著)には、「名利の存する場所」に人が「蟻付」するという形の用例があり、ここでは人が利益や名誉にひかれて集まる意味がはっきりしています。
さらに、明治34年(1901年)の「裸美人に巡査立番の議」には、「蟻の甘きに就くが如く」という形が出てきます。ここでは、話題になった展覧会へ観覧者が一斉に集まる様子を表しており、「甘いものに蟻が寄る」比喩が、社会の出来事を描く言い方として使われていたことが分かります。
このように、もとの具体的な背景は、甘いものへ蟻が集まる自然な観察にあります。その観察が、「蟻付」「蟻の甘きにつくが如し」などの形で、人や兵が群がる様子、さらに利益やうまい話に人が集まる様子へと広がり、現在の「甘い物に蟻がつく」ということわざとして、得のあるところには人が集まるという経験則を短く伝える表現になりました。
「甘い物に蟻がつく」の使い方




「甘い物に蟻がつく」の例文
- 新しい店が無料券を配ると、甘い物に蟻がつくように人が集まった。
- 補助金が出ると聞いて、多くの会社が甘い物に蟻がつくようにその事業へ参入した。
- 有名選手のサイン会には、甘い物に蟻がつくようにファンが押し寄せた。
- 賞品の豪華な大会には、甘い物に蟻がつくように参加希望者が増えた。
- 土地の値上がりが見込まれると、甘い物に蟻がつくように投資家が集まった。
- 簡単にもうかるという話には、甘い物に蟻がつくように人が寄ってくるものだ。
主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・小学館『大辞泉』編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・巌垣松苗編『国史略』1826年。
・田口卯吉『日本開化小史』1877〜1882年。
・黒馬散人「裸美人に巡査立番の議」『中央新聞』1901年。
・HarperCollins Publishers『Collins English Dictionary』.























