【ことわざ】
犬に肴の番
【読み方】
いぬにさかなのばん
【意味】
番をさせる相手の選び方が不適当なこと。過ちを起こしやすい相手に、かえってその過ちを助けるような役目を任せること。


【英語】
・Don’t let the fox guard the henhouse(きつねに鶏小屋の番をさせるな)
・Don’t set a wolf to watch the sheep(狼に羊の番をさせるな)
【類義語】
・猫に鰹節(ねこにかつおぶし)
・盗人に鍵を預ける(ぬすびとにかぎをあずける)
「犬に肴の番」の語源・由来
「犬に肴の番」は、犬に肴の見張りをさせれば、守るどころか食べてしまうだろう、という身近なたとえから生まれたことわざです。「肴」は、酒を飲むときに添える食べ物を指す言葉で、魚だけに限らず、酒席に出す料理全般を表します。
このことわざの芯にあるのは、「欲しがる相手に、その欲しがるものを守らせてはいけない」という考え方です。犬は食べ物に引かれやすい動物としてとらえられ、その犬に肴の番を頼むという形で、人選を誤る危うさを分かりやすく表しています。
「犬」に関することわざには、吠える、食べる、かみつくなど、犬の行動の特徴を人間社会のたとえに移したものが多くあります。「犬に肴の番」もその一つで、犬そのものを悪く言う表現というよりも、任せる側の判断の甘さを戒める言い方です。
同じ発想は、「猫に鰹節」にもよく表れています。猫の好物である鰹節をそばに置けば、油断できず、過ちが起こりやすい状況になるという意味です。「犬に肴の番」と「猫に鰹節」は、どちらも好物を目の前にした動物を用いて、危険な任せ方をたとえています。
また、「盗人に鍵を預ける」も、近い考え方をもつことわざです。盗難を防ぐための鍵を盗人に預ければ、守る役目が、かえって災いを広げることになります。この関係から、「犬に肴の番」は、ただ「不向きな人に頼む」というよりも、誘惑や利害がその人の前にあるため、失敗や悪事を招きやすい場合に用いる表現として定着しました。
英語にも、「きつねに鶏小屋の番をさせるな」「狼に羊の番をさせるな」という、よく似た発想のことわざがあります。どれも、守るべきものと、それをねらいやすい者との組み合わせを避けるべきだという教えを、動物のたとえによって短く表しています。
つまり、「犬に肴の番」は、任せる相手をよく見きわめる大切さを教えることわざです。相手を信じること自体を否定するのではなく、その相手が、つい過ちを起こしやすい立場に置かれていないかまで考える必要がある、という注意を含んでいます。
「犬に肴の番」の使い方




「犬に肴の番」の例文
- 甘い物が大好きな弟にケーキの留守番を頼むのは、犬に肴の番だ。
- 会計をよく間違える人に集金袋を一人で預けるのは、犬に肴の番になりかねない。
- 秘密をすぐ話してしまう友人に相談内容を広めないでと言うのは、犬に肴の番のようなものだ。
- ゲームをしたがっている子に、遊ばないようにゲーム機を見張らせるのは犬に肴の番だ。
- 店の商品を欲しがっている人だけに倉庫の管理を任せれば、犬に肴の番となる。
- いたずら好きな子に花壇の道具を預けたため、犬に肴の番だったと先生は反省した。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・馬場俊臣「『犬』に関することわざ(2)――『犬』をどう捉えてきたか――」『札幌国語研究』第25号、北海道教育大学国語国文学会・札幌、2020年。
・Martin H. Manser・Rosalind Fergusson『The Facts on File Dictionary of Proverbs Second Edition』Infobase Publishing、2007年。























