【ことわざ】
言いたいことは明日言え
【読み方】
いいたいことはあすいえ
【意味】
言いたいことがあっても、その場ですぐには口にせず、時間をおいてよく考えてから言うのがよいということ。


【類義語】
・腹の立つ事は明日言え(はらのたつことはあすいえ)
「言いたいことは明日言え」の語源・由来
「言いたいことは明日言え」は、思ったことをすぐ口にするのではなく、ひとまず時間をおいてから言葉にするよう戒めることわざです。ここでいう「明日」は、何でも後回しにせよという意味ではありません。怒りや不満に動かされたまま話せば、必要以上に強い言葉を使ったり、取り返しのつかない失言をしたりすることがあります。そこで、一晩ほど間をおき、考えを落ち着かせてから伝えるほうがよい、と教えているのです。
このことわざは、「言いたいことがある」という、ごく身近な場面をもとにしています。言葉は、いったん口から出ると、なかったことにはできません。だからこそ、言う内容が正しいかどうかだけでなく、今、その場で言うべきか、相手に届く言い方になっているかまで考えることが大切になります。「明日言え」という命令の形には、口を閉ざせというのではなく、言葉を軽々しく扱わないようにという教えがこめられています。
同じ教えを、怒りの場面にしぼって表した言い方として、「腹の立つ事は明日言え」があります。腹立ちまぎれに物を言えば、後になって悔やむような結果を招くことがあるので、よく考えてから話すことが肝心である、という意味です。「言いたいことは明日言え」は、この戒めを、怒りに限らず、勢いのまま口にしそうな言葉全体へ広げて表した形といえます。
江戸時代には、この教えを「旨い物は宵に食え」と組み合わせ、対照的に示す例が多くありました。「旨い物は宵に食え」は、おいしい食べ物は味が落ちる前に早く食べるのがよく、転じて、得になることは機会を逃さず進めるのがよい、というたとえです。よい機会は早くつかみ、腹立ちや不用意な発言は急がず控えるという、暮らしの中の知恵が、二つのことわざを並べることで分かりやすく表されました。
この組み合わせでは、「宵」と「明日」が鮮やかに対になっています。食べ物や好機のように、時を逃せば価値が下がるものは今のうちに大切にし、怒りにまかせた発言のように、急ぐほど害が生まれやすいものは明日まで待つ、という考え方です。こうして、「言いたいことは明日言え」は、単に我慢を求める言葉ではなく、急ぐべきことと、落ち着いて扱うべきこととを見分ける教えとして受け継がれてきました。
今の生活でも、友だちとの言い争い、家族への不満、学級会での反論、仕事での厳しい意見など、すぐに言葉を返したくなる場面は少なくありません。そのようなとき、少し時間をおくことで、相手を傷つけるための言葉ではなく、問題を解決するための言葉を選びやすくなります。「言いたいことは明日言え」は、伝えることをあきらめる教えではなく、伝えるからこそ、言葉を慎重に選ぶよう促すことわざなのです。
「言いたいことは明日言え」の使い方




「言いたいことは明日言え」の例文
- 腹立ちまぎれに抗議の手紙を書いた父は、言いたいことは明日言えと思い直して、投函を控えた。
- 友だちに責められて言い返したくなったが、言いたいことは明日言えと心に決め、その場では黙って帰った。
- 学級会で感情的な発言が続いたため、先生は言いたいことは明日言えの教えを示し、話し合いを翌日に延ばした。
- 地域の会合では、言いたいことは明日言えを心得て、怒りにまかせた批判ではなく、落ち着いた提案を述べたい。
- 部下への不満をすぐメールに書こうとした課長は、言いたいことは明日言えと考え、翌朝に文章を読み直した。
- 言いたいことは明日言えということわざは、家族の間でも、相手を傷つけずに気持ちを伝えるための戒めとなる。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。























