【ことわざ】
命は宝の宝
【読み方】
いのちはたからのたから
【意味】
命は、どんな宝よりも尊く、何ものにも代えがたい大切なものということ。命があってこそ、ほかの物事も意味をもつ。


【類義語】
・命あっての物種(いのちあってのものだね)
・命は法の宝(いのちはほうのたから)
・命が物種(いのちがものだね)
【対義語】
・命は鴻毛より軽し(いのちはこうもうよりかるし)
・命は義によりて軽し(いのちはぎによりてかるし)
「命は宝の宝」の語源・由来
「命は宝の宝」は、中国の古い人物や出来事をもとにした言葉ではなく、命を最も尊い価値としてとらえる日本語の教訓から成り立つことわざです。「命」は、生物が生きていくためのもとの力であるとともに、「最も大切なもの」という意味でも用いられます。ここでは、単に生きている状態だけでなく、すべての行動や喜びの土台となるものとしての命を指しています。
「宝」は、金銀や玉のような貴重な品を表すだけでなく、ほかのものと取り替えることのできない、かけがえのないものも指します。古くは『万葉集』(8世紀後半成立、奈良時代)にも、金銀や玉より子がまさる宝だという趣旨の歌があり、古い日本語の中でも、「宝」は、財物だけでなく、特に大切な存在を表す言葉として使われてきました。
このことわざは、「宝」という言葉を二度重ねることで、「宝の中でもさらに宝である」と強めています。つまり、財産・地位・名誉・成功など、人が価値あるものと考えるものがいろいろあっても、命を失えば、それらを受け取ることも、守ることも、使うこともできません。そのため、「命は宝の宝」は、命をすべての価値の根本に置く言い方となっています。
近い考え方は、江戸時代の言葉にも表れています。『毛吹草』(1638年・江戸時代前期、松江重頼編)には、「命は法の宝」という言い方があり、ありがたい仏法を聞けるのも命があればこそ、という意味を表します。これは「命は宝の宝」と同じ形ではありませんが、命があってはじめて大切な教えや価値に触れられるという考えを示しています。
また、『狂言記』(1660年・江戸時代前期)には、「いのちが物だねぢゃ」とあり、のちの『座笑産』(1773年・江戸時代中期)には、「とかく命有ての物だね」という形が出てきます。「物種」は物事の根源という意味で、命があって初めて何事も成り立ち、死んでしまえばおしまいだという考えを表します。
こうした「命こそ根本である」という考えと、「宝」をかけがえのないものとする日本語の感覚が重なって、「命は宝の宝」という短い言い方が成り立っています。危険をおかしてまで利益を求める場面や、無理をして心身をそこなう場面で、このことわざは、「まず命を守ることが大切だ」と静かに戒める言葉として使われます。
「命は宝の宝」の使い方




「命は宝の宝」の例文
- 命は宝の宝だから、危険な場所には興味本位で近づかない。
- 祖父は、無理をして働きすぎる父に、命は宝の宝だと静かに言った。
- 命は宝の宝という思いから、避難訓練では一人ひとりの安全を最優先にした。
- 大切な試合でも、けがを押して出場するのはよくない。命は宝の宝である。
- 災害の知らせを聞き、家族は命は宝の宝だと考えて、早めに避難した。
- 命は宝の宝という言葉は、財産よりもまず生きていることを大切にする教えを伝える。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年。
・『狂言記』1660年。
・『座笑産』1773年。























