【命は鴻毛より軽し】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語)

命は鴻毛より軽し

【故事成語】
命は鴻毛より軽し

【読み方】
いのちはこうもうよりかるし

【意味】
命を捨てることは少しも惜しくない、ということ。正義や大切な使命のためなら、自分の命をも惜しまない覚悟を表す。

ことわざ博士
「命は鴻毛より軽し」は、命そのものを軽んじる言葉ではなく、命より重い価値に向かう覚悟を表しているよ。
助手ねこ
無謀な行動をほめる場面ではなく、義や責任のために身を投げ出すほどの決意をいう場面で用いるニャン。

【類義語】
・命を鴻毛の軽きに比す(いのちをこうもうのかろきにひす)
・死を鴻毛の軽きに比す(しをこうもうのかろきにひす)
・命は義によりて軽し(いのちはぎによりてかるし)

【対義語】
・命あっての物種(いのちあってのものだね)
・命どぅ宝(ぬちどぅたから)

「命は鴻毛より軽し」の故事

故事成語を深掘り

「命は鴻毛より軽し」は、前漢(ぜんかん)の歴史家・司馬遷の文章に由来する表現です。もとの考えは、『文選(もんぜん)』(六朝・梁の昭明太子蕭統編、530年ごろ成立)に収められた「報任少卿書(じんしょうけいにほうずるしょ)」の一節にあります。

その一節には、「人固有一死、或重於泰山、或軽於鴻毛、用之所趨異也」という趣旨の言葉があります。やさしく言えば、人はだれでも一度は死ぬが、その死は泰山ほど重いことも、鴻毛ほど軽いこともあり、何のために命を用いるかによって、その重みが変わるという意味です。

「鴻毛」は、鴻の羽毛のことで、きわめて軽いもののたとえです。これに対して、泰山は、中国で重く大きなもののたとえとして引かれる山です。そのため、この一節では、「とても重い死」と「とても軽い死」が、強い対比によって表されています。

司馬遷は、前145年ごろから前86年ごろの人で、前漢の武帝に仕えた歴史家です。匈奴に降った李陵を弁護したために武帝の怒りを受け、宮刑に処せられましたが、父の遺志を継ぎ、中国の歴史書『史記(しき)』を完成させました。

この故事で大切なのは、司馬遷が「死ぬこと」そのものを軽く考えたのではないという点です。司馬遷は、ただ死んで名誉を守る道ではなく、屈辱に耐えてでも『史記』を書き上げる道を選びました。そこには、命や死の重みは、何を守り、何を成しとげるためのものかによって決まるという考えがあります。

日本語では、『太平記(たいへいき)』(南北朝時代の軍記物語、1370年代に現在の形になったと考えられる)に、「命を鴻毛(ゴウモウ)よりも軽(カロク)せり」という形の古い用例があります。これは、激しい合戦の中で、命を惜しまず戦う姿を表す文脈で使われています。

のちには、「死を鴻毛の軽きに比す」という近い言い方も用いられました。浄瑠璃(じょうるり)『鬼鹿毛無佐志鐙(おにかげむさしあぶみ)』(1710年ごろ)には、忠義の武士が死を軽く見るという文脈での用例があり、義や忠節と結びついた言い方として広まっていったことが分かります。

こうして、「命は鴻毛より軽し」は、命を粗末にする言葉ではなく、命よりも重い義や使命の前では、死をも恐れないという強い覚悟を表す故事成語として用いられるようになりました。もとの文章の考えをふまえると、この言葉は、「何のために命を使うのか」を深く問う表現だといえます。

「命は鴻毛より軽し」の使い方

健太
社会の時間に、火事の中へ人を助けに向かった消防士の話を読んだよ。こわくなかったのかな?
ともこ
きっと、命は鴻毛より軽しという覚悟だったんだと思う。でも、むやみに危ないことをしたわけじゃないよ。
健太
人を救う責任と訓練があったから、危険の中でも進んだんだね。
ともこ
うん!自分勝手な無茶ではなく、大切な命を守るための強い決心なんだね。

「命は鴻毛より軽し」の例文

例文
  • 武士は主君への義を守るため、命は鴻毛より軽しという覚悟で戦場へ向かった。
  • その歴史小説では、仲間を救うために命は鴻毛より軽しと決意する人物が描かれている。
  • 命は鴻毛より軽しという言葉は、命を粗末にする意味で軽々しく使うべきではない。
  • 正義を守るために危険を引き受ける姿を、命は鴻毛より軽しと表すことがある。
  • 彼は命は鴻毛より軽しという覚悟で、人々を助ける仕事に生涯をささげた。
  • 命は鴻毛より軽しは、命よりも重い義や使命を前にしたときの決意を表す故事成語である。

主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・蕭統編『文選』530年ごろ成立。
・司馬遷「報任少卿書」『文選』所収。
・『太平記』1370年代成立。
・吾妻三八作『鬼鹿毛無佐志鐙』1710年。




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