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【嬰児の貝を以て巨海を測る】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・英語)

嬰児の貝を以て巨海を測る

【故事成語】
嬰児の貝を以て巨海を測る

【読み方】
えいじのかいをもってきょかいをはかる

【意味】
幼い子どもが小さな貝殻で大海の水量を測ろうとするように、力や手段があまりにも足りず、到底なし遂げられないことのたとえ。

ことわざ博士
「嬰児の貝を以て巨海を測る」は、しようとすることの大きさと、それに用いる力や手段との間に、埋められないほどの隔たりがあることを表すよ。
助手ねこ
大きすぎる計画に、わずかな人数・時間・道具だけで取り組もうとする場面で用いるニャン。

【英語】
・attempt the impossible(不可能なことを試みる)

【類義語】
・蛤で海をかえる(はまぐりでうみをかえる)
・貝殻で海を測る(かいがらでうみをはかる)

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「嬰児の貝を以て巨海を測る」の故事

故事成語を深掘り

「嬰児の貝を以て巨海を測る」のもとになった表現は、『漢書(かんじょ)』(後漢、1世紀、班固を中心に編纂)の「東方朔伝」に収められた「答客難」に出てきます。『漢書』は、前漢一代の歴史を、人物の伝記などによって記した史書です。

「答客難」は、前漢の東方朔が、客から投げかけられた非難に答えるという形で書かれた文章です。後に、『文選(もんぜん)』(南朝梁、6世紀前半、蕭統ら編)にも収められました。

文章の初めで、客は東方朔に問いかけます。これほど多くの書物を学び、知恵にも弁舌にも優れているのに、長年仕えても高い地位に就けないのは、本人に何か欠点があるからではないか、というのです。

東方朔は、蘇秦や張儀が活躍した戦国時代と、天下が統一された前漢の時代とでは、才能ある者が力を発揮できる機会が異なると答えます。人の成功や不遇を、その人の能力だけで単純に決めつけることはできないと説きました。

その議論の中に、「以筦窺天、以蠡測海、以筳撞鍾」とあります。管を通して天をのぞき、小さな器で海を測り、細い草の茎で大鐘を打つという、三つのたとえを並べたものです。

続いて、「豈能通其條貫、考其文理、發其音聲哉」とあります。そのような小さな道具では、物事の筋道を理解し、細かな仕組みを調べ、鐘の本当の音を響かせることなどできない、という意味です。

原文の「蠡」は、ひょうたんで作った小さなひしゃくを指す字として解釈されてきました。一方、日本では、ほら貝またはひさごを表す字とも理解され、「貝」で海を測るという形へと結びつきました。

原文の「以蠡測海」は、もともと、限られた知識や小さな見方だけで、広大な物事の全体を判断しようとすることを戒める比喩でした。「貝殻で海を測る」や「管を以て天を窺う」には、現在もこの意味が残っています。

日本語の「嬰児の貝を以て巨海を測る」という形は、『平家物語(へいけものがたり)』(13世紀初め成立、鎌倉時代)の巻七に古い用例があります。『平家物語』は、平氏の繁栄から滅亡までを描いた軍記物語です。

そこでは、木曽義仲が平家の大軍との戦いを前に八幡宮を見つけ、側近の大夫房覚明に、戦勝を願う願書を書かせます。その願書は、義仲が、自分の力だけでは到底なし遂げられないほど大きな戦いに臨むことを、神に訴える内容です。

願書には、「今この大功を起すことたとへば嬰児の貝を以て巨海を測り蟷螂が斧を怒らかいて龍車に向かふが如し」とあります。幼い子どもが貝で大海を測ることと、かまきりが斧のような前脚を振り上げて大きな車に向かうこととを並べ、義仲の側の力があまりにも小さいことを表しています。

その直後には、国と君主のために兵を起こすのであって、自分や一族の利益のためではない、と続きます。不可能に近い大事業であっても、私欲ではなく正しい志によって挑むのだと、神に訴えているのです。

この用例では、中国の原文にはなかった「嬰児」と「巨海」が明示されました。そのため、狭い見識への戒めよりも、幼児の小さな力では広大な海を測れないという、力と対象の大きさの隔たりが強く印象づけられています。

こうして日本語では、わずかな力や不十分な手段によって、あまりにも大きな仕事を行おうとすること、すなわち、到底できないことのたとえとして定着しました。現在も、計画の規模に対して、人数・時間・能力・道具などが著しく足りない場合に用いる故事成語です。

「嬰児の貝を以て巨海を測る」の使い方

健太
夏休みの自由研究で、海岸にある砂粒を一粒ずつ数えて、浜全体の数を出そうと思うんだ!
ともこ
何キロも続く海岸だよ? 二人で全部数えるなんて、夏休みが何年あっても終わらないよ。
健太
たしかに、嬰児の貝を以て巨海を測るような計画だったね……。もっと現実的な方法を考えなくちゃ。
ともこ
小さな升一杯分の砂粒を数えて、浜の広さから全体を推定しようよ。それなら研究になりそう!
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「嬰児の貝を以て巨海を測る」の例文

例文
  • 三人だけで町中の空き家を一日ですべて調べるのは、嬰児の貝を以て巨海を測るような計画だ。
  • 数枚の古い写真だけで城下町の全景を完全に復元しようとするのは、嬰児の貝を以て巨海を測るに等しい。
  • 一台の家庭用機械で山ほどの廃材を一晩に処理するなど、嬰児の貝を以て巨海を測るようなものだ。
  • 一人の力だけで社会全体の問題をすぐに解決しようとすれば、嬰児の貝を以て巨海を測ることになりかねない。
  • 限られた予算と二週間の日程で巨大な施設を完成させるという方針は、嬰児の貝を以て巨海を測るほど無理がある。
  • 膨大な古文書を一晩ですべて読み解こうとした彼は、嬰児の貝を以て巨海を測る計画だったと気づいた。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・班固著、小竹武夫訳『漢書6 列伝3』筑摩書房、1998年。
・蕭統編、李善注『文選』南朝梁、6世紀前半成立。
・市古貞次校注・訳『新編日本古典文学全集46 平家物語(2)』小学館、1994年。





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