【慣用句】
柄の無い所に柄をすげる
【読み方】
えのないところにえをすげる
【意味】
無理に理屈をつけたり、口実を設けたりすること。根拠のない言いがかりをつけること。


【英語】
・make excuses(言い訳をする)
・use something as a pretext(何かを口実にする)
【類義語】
・柄をすげる(えをすげる)
・理屈と膏薬は何処へでも付く(りくつとこうやくはどこへでもつく)
・盗人にも三分の理(ぬすびとにもさんぶのり)
・鷺を烏(さぎをからす)
【対義語】
・筋を通す(すじをとおす)
・筋が通る(すじがとおる)
「柄の無い所に柄をすげる」の語源・由来
「柄の無い所に柄をすげる」の「柄(え)」は、道具を手で持ちやすくするために付ける棒状の部分を指します。ひしゃくの柄のように、握るための部分をいう言葉です。
「すげる」は、「挿げる」とも書き、はめ込む、差し込む、またそのようにして取り付けるという意味です。下駄の鼻緒や人形の首を取り付けるような場合に使う言葉です。
この二つが合わさると、「柄の無い所に柄をすげる」は、本来は柄を付ける場所ではないところへ、無理に柄を取り付けるという具体的なたとえになります。そこから、根拠のない話に無理に理由を付ける、または関係の薄いことを口実にする、という意味へ移りました。
言い換えると、この表現の芯にあるのは、「もともと支えになる部分がないのに、後から無理に支えを作る」という発想です。道具の柄なら、握るために必要な位置へ付くものですが、必要のない場所へ付ければ不自然になります。
その不自然さが、言葉の上では「無理な理屈」や「こじつけた口実」の比喩になりました。何かを責めたい、押し通したい、言い逃れしたいという気持ちが先にあり、その後から理由を付け足すような場面によく合います。
この慣用句には、「柄をすげる」「柄に柄をすげる」という短い形や近い形もあります。「柄をすげる」は、「柄の無い所に柄をすげる」の略として用いられます。
「柄をすげる」の古い用例として、洒落本『奴通』(1780年ごろ・江戸時代中期)に「柄(ヱ)をすげた」という形が出てきます。ここでは、すでに具体的な道具の話ではなく、相手の言い分やふるまいに対して、無理に理屈を付けるような言い方として使われています。
「柄の無い所に柄をすげる」という形の古い用例としては、歌舞伎『黄門記童幼講釈(こうもんきおさなごうしゃく)』(1877年・明治10年、河竹黙阿弥作)に「柄(エ)のない所へ柄(エ)をすげて、味にからんでおっしゃりますが」という言い方が出てきます。
『黄門記童幼講釈』は、講談の黄門記をもとにした歌舞伎で、明治10年に東京新富座で初演されました。この用例では、相手が筋の通らないところに無理な言いがかりを付けてからんでいる、という意味合いで使われています。
このように、もとの形は道具の「柄」を取り付ける動作から来ていますが、古い用例ではすでに、話し合いや言い争いの中での「無理なこじつけ」を表す言葉として働いています。具体的な手仕事の言葉が、人の言い分の不自然さを表す比喩へ移ったものです。
現在の「柄の無い所に柄をすげる」も、正当な理由がないのに、後からもっともらしい理由を付ける場合に使います。たとえば、失敗を認めずに別の人のせいにしたり、関係のない出来事を持ち出して相手を責めたりするような場面に当てはまります。
「柄の無い所に柄をすげる」の使い方




「柄の無い所に柄をすげる」の例文
- 失敗の原因を天気のせいにするのは、柄の無い所に柄をすげるような言い訳だ。
- 関係のない話を持ち出して友人を責めるのは、柄の無い所に柄をすげることになる。
- 彼は遅刻を注意されると、柄の無い所に柄をすげるように、時計の形まで言い訳にした。
- 相手を悪者にしたいからといって、柄の無い所に柄をすげるような言いがかりをつけてはいけない。
- 会議では、柄の無い所に柄をすげる議論ではなく、事実に基づいた説明が求められる。
- 兄は弟の小さな失敗にかこつけて、柄の無い所に柄をすげるように昨日の不満まで言い出した。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・河竹黙阿弥『黄門記童幼講釈』1877年初演。
・『奴通』1780年ごろ。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』Cambridge University Press。























