【ことわざ】
重荷に小付け
【読み方】
おもににこづけ
【意味】
すでに重い負担を抱えているところへ、さらに新たな負担が加わること。つらさが重なり、耐えがたくなることのたとえ。


【英語】
・the straw that breaks the camel’s back(積み重なった負担に最後の小さな負担が加わり、耐えられなくなること)
【類義語】
・重き馬荷に上荷打つ(おもきうまににうわにうつ)
「重荷に小付け」の語源・由来
「重荷に小付け」は、重い荷物の上に、さらに小さな荷物を添えて載せる姿をもとにしたことわざです。「重荷」は、文字どおりの重い荷物から、心身を圧迫する大きな責任や苦労を表す言葉へと意味を広げました。「小付け」は、大きな荷物に追加して付ける小さな荷物を指します。
「重荷」を苦しみや心の負担にたとえる言い方は、平安時代から使われていました。『古今和歌集(こきんわかしゅう)』(905〜914年頃成立、平安時代前期)の歌には、「人恋ふる事をおもにと担ひもて」とあり、人を恋しく思う苦しさを、肩に担ぐ重い荷物になぞらえています。
「重荷」と「小付け」を組み合わせた古い例は、『後撰和歌集(ごせんわかしゅう)』(951〜953年頃成立、平安時代中期)にあります。村上天皇の歌に、「年の数つまんとすなるをもににはいとど小附をこりも添へなん」とあり、すでに積み重なる重荷に、さらに小さな荷を添える姿が詠まれています。この段階では、荷物を重ねる具体的な姿を用いながら、年齢や務めの重さを表す言い方となっています。
江戸時代前期の評判記『もえくゐ』(1677年)には、「こひのおもににこづけをそへ」とあります。ここでは、恋の苦しみを「』(1677年)には、「こひのおもににこづけ重荷」とし、その上に別の苦しみを「小付け」として添える言い方になっています。「小付け」が、実際の荷物だけでなく、すでにある苦労に追加される負担を指すようになったことが分かります。
『絵本千賀浦(えほんちがのうら)』(1750年・江戸時代中期、田中羅山著。1778年改正)には、「重荷に小付といふハ後撰乃哥に」とあり、この言い方を『後撰和歌集』の歌と結び付けています。さらに、暮らしに困っている人に新たな養育の負担が加わる場合や、家族の困った振る舞いによって苦労が増す場合を例に挙げ、「せんかたなき重荷に小付」と表しています。これにより、江戸時代には、日常の苦労が重なることを表すことわざとして、はっきりと解説されていたことが分かります。
明治時代の『当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)』(1885〜1886年、坪内逍遙著)にも、「重荷に小附とは思いながらも」という形で使われています。この用例では、すでに大きな事情を抱えているところに、さらに負担を加えることへのためらいを表しており、現在とほぼ同じ意味で用いられています。
「大荷に小付け」という形もありますが、意味は同じです。もとは、大きな荷物の上に小さな荷物を重ねる具体的な姿でしたが、平安時代の和歌、江戸時代のことわざ解説、明治時代の文学作品を経て、今では、すでに苦しんでいる人に新たな問題が加わることを表す言葉として定着しています。
「重荷に小付け」の使い方




「重荷に小付け」の例文
- 試験勉強だけでも大変なのに、委員会の仕事まで任され、まさに重荷に小付けとなった。
- 家族の介護に追われる中で複雑な手続きまで必要となり、彼女には重荷に小付けだった。
- 売り上げの落ち込んだ店で冷蔵庫まで故障し、重荷に小付けの状態に陥った。
- 引っ越しの準備中に水道管の修理まで重なり、重荷に小付けとなった。
- 人手不足に悩む職場で新しい事業が始まり、社員たちは重荷に小付けだと受け止めた。
- 災害からの復旧が続く地域に物価の上昇まで重なり、重荷に小付けの苦しさが増した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『古今和歌集』905〜914年頃。
・『後撰和歌集』951〜953年頃。
・『もえくゐ』1677年。
・田中羅山『絵本千賀浦』1750年、1778年改正。
・坪内逍遙『当世書生気質』1885〜1886年。























