【慣用句】
親の脛をかじる
【読み方】
おやのすねをかじる
【意味】
子どもが経済的に自立できず、親に養ってもらって生活すること。


【英語】
・live off one’s parents(親に生活費を頼って暮らす)
・be dependent on one’s parents(親に扶養されている)
【類義語】
・脛をかじる(すねをかじる)
・親掛かり(おやがかり)
「親の脛をかじる」の語源・由来
「親の脛をかじる」は、子どもが親の脚にかじりつく姿を思わせる、体の一部を用いた比喩表現です。この言い回しでは、「脛」が、働いて収入を得る力を象徴し、その脛を子どもがかじり取ることによって、親の稼ぎを頼りに暮らす様子を表しています。
親に養われる状態そのものは、この表現が生まれる前から、別の言い方で表されていました。『寝物語』(1656年・江戸時代前期)には「おやにかかり」とあり、『色道大鏡(しきどうおおかがみ)』(1678年・江戸時代前期、藤本箕山著)には「親がかりの身」という表現が出てきます。いずれも、親に生活を支えてもらうことを直接表した言い方です。
「親の脛」をかじるという比喩が使われた古い例は、『教訓続下手談義(きょうくんぞくへただんぎ)』(1753年・江戸時代中期、静観房好阿著)の第一巻にあります。この作品は、五巻五冊からなる書物で、庶民の身近な暮らしや振る舞いを、笑いを交えながら戒める内容をもっています。
その中には、「三十迄も大かた親の脛(スネ)かぶるが沢山」とあります。三十歳になるまで親に養われ続ける者が多い、という意味で、すでに現在とほぼ同じように、成人しても親から経済的に独立しない状態を表しています。
この古い用例では、現在の「かじる」に当たる部分が、「かぶる」となっています。「かぶる」は、物をかんで食べる、くらいついて食べるという意味をもつ古い言葉で、「かじる」と同じ意味に用いられました。そのため、「親の脛をかぶる」は、現在の「親の脛をかじる」と同じ組み立ての表現です。
明治時代になると、「かじる」を用いた形が、はっきりと現れます。坪内逍遥の小説『当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)』(明治18〜19年)には、「到底書生をしてをるうちは、親父の脚(スネ)をかぢってをるのだから」とあります。学業を続けている間は、父親に生活を支えてもらっている、という場面で使われています。
この用例では、「脛」が「脚」と書かれ、「かじる」が旧仮名遣いの「かぢる」となっています。表記には「脛」「臑」、「齧る」「噛る」などの違いがありますが、現在では、「親の脛をかじる」という書き方も広く用いられています。
また、「脛をかじる」だけでも、親や他人に養ってもらうという意味になりますが、「親の脛をかじる」とすれば、子どもが親の収入や蓄えを頼って暮らしていることを明確に表せます。江戸時代の「親の脛かぶる」から、明治時代の「親父の脚をかぢる」を経て、現在の言い方へと受け継がれてきた慣用句です。
「親の脛をかじる」の使い方




「親の脛をかじる」の例文
- 兄は大学を卒業してからも定職に就かず、親の脛をかじる生活を続けている。
- いつまでも親の脛をかじるわけにはいかないと、彼はアルバイトを始めた。
- 画家を目指す彼女は、親の脛をかじることへの申し訳なさを抱きながら制作を続けた。
- 会社を辞めた弟は、再就職するまで親の脛をかじることになった。
- 友人は親の脛をかじる暮らしから抜け出すため、住み込みの仕事を探した。
- 親の脛をかじる息子に、父は生活費の一部を自分で負担するよう求めた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年。
・『小学館プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・静観房好阿『教訓続下手談義』1753年。
・坪内逍遥『当世書生気質』1885〜1886年。























