【裘を反して薪を負う】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・英語)

裘を反して薪を負う

【故事成語】
裘を反して薪を負う

【読み方】
きゅうをはんしてたきぎをおう

【意味】
目先の小さなものを惜しむあまり、その土台となる大切なものを損なうような、浅はかで本末転倒した考えのたとえ。

ことわざ博士
裘を反して薪を負うは、守ろうとしたものよりも重要なものを、かえって傷つけてしまう愚かさを表すんだよ。
助手ねこ
わずかな利益や節約に気を取られ、全体として大きな損害を招く場面で用いるニャン。

【英語】
・be penny-wise and pound-foolish.(小さな節約にこだわり、大きな損をする)

【類義語】
・一文惜しみの百知らず(いちもんおしみのひゃくしらず)
・小利大損(しょうりだいそん)
・本末転倒(ほんまつてんとう)

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「裘を反して薪を負う」の故事

故事成語を深掘り

「裘を反して薪を負う」は、中国前漢の政治討論集『塩鉄論(えんてつろん)』「非鞅」に出てくる言葉にもとづく故事成語です。『塩鉄論』は、紀元前81年に行われた塩や鉄などの専売政策をめぐる論議を、前漢の宣帝の時代に桓寛がまとめた書物です。

「非鞅」には、「愚人の裘を反して薪を負い、其の毛を愛して、其の皮の尽くるを知らざるに異なること無し」という趣旨の言葉があります。原文には、「無異於愚人反裘而負薪、愛其毛、不知其皮盡也」と記されています。

「裘(きゅう)」とは、獣の毛皮で作った衣服、すなわち皮ごろものことです。毛皮の表側には毛があり、その根元を皮が支えています。「裘を反す」とは、この衣服を裏返し、毛のある面を内側にすることを表します。

ある愚かな人は、薪を背負うと毛がこすれて傷むのを惜しみ、裘を裏返して着ました。ところが、これでは毛を守る代わりに、その毛を支えている皮の部分が薪にこすられます。皮がすり切れてしまえば、毛も付いていられず、結局は裘全体が使い物になりません。

『塩鉄論』でこのたとえを述べたのは、政府の利益を増やす政策を批判した「文学」と呼ばれる人々です。政府側は、塩や鉄の専売によって国が豊かになり、軍事費などもまかなえると主張しました。これに対して文学は、利益は天や地から突然生まれるものではなく、国の収入が増えれば、その分は民から取り立てられていると反論しました。

つまり、国の収入という目に付きやすい「毛」を大切にするあまり、国を支える民という「皮」を苦しめているということです。民の暮らしが成り立たなくなれば、国の豊かさも長くは続きません。この一節では、表面の利益だけを追い、その利益を生み出す土台を壊す政策の愚かさを、裏返した裘にたとえています。

よく似た説話は、前漢末期の学者である劉向が編んだ『新序(しんじょ)』「雑事二」にもあります。戦国時代初期、魏の文侯(ぶんこう)が外出した際、裘を裏返して刈り草を背負う旅人を見掛けました。文侯が理由を尋ねると、旅人は「毛を大切にしているからです」と答えました。

文侯は、皮の部分がすり切れてしまえば、毛も付いていられなくなることを知らないのかと、旅人を諭しました。翌年、東陽から提出された会計報告で、銭や布の上納額が十倍に増えたため、家臣たちは文侯に祝いを述べました。ところが文侯は、領地も人口も増えていないのに収入だけが十倍になるのは、人々から無理に取り立てたためだとして、喜びませんでした。

文侯は、こうした政治を、毛を惜しんで皮を傷める旅人と同じだと考えました。そして、下にいる民が安心して暮らせなければ、上に立つ君主もその地位を保つことはできないと述べました。旅人の小さな失敗が、国を治めるうえでの大きな教訓へと広げられているのです。

『新序』では、背負うものを「芻」、すなわち刈り草とし、「反裘而負芻」と記しています。一方、『塩鉄論』では「薪」となり、「反裘而負薪」という形で使われています。日本語の「裘を反して薪を負う」は、後者を読み下した形です。

この故事で大切なのは、単に裘の着方を間違えたことではありません。目に付きやすい毛だけを惜しみ、その毛を根本から支えている皮の大切さに気付かなかった点に、考えの浅さがあります。そこから、わずかな利益や目先の都合にとらわれ、もっと大切なものを失うような本末転倒の考えを、「裘を反して薪を負う」と表すようになりました。

「裘を反して薪を負う」の使い方

健太
学級菜園のトマトを結ぶひもが切れそうだけど、買い替えるのがもったいないからそのままでいいかな?
ともこ
でも、ひもが切れたら支柱が倒れて、トマトの苗まで折れるかもしれないよ。
健太
ひも一本を惜しんで苗をだめにするなんて、裘を反して薪を負うようなものだね……。
ともこ
そうだよ!放課後、新しいひもに替えよう!
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「裘を反して薪を負う」の例文

例文
  • 雨漏りの修理代を惜しんで家の柱まで腐らせるのは、裘を反して薪を負うようなものだ。
  • 検査費用を削った結果、大量の不良品を回収することになり、裘を反して薪を負うこととなった。
  • 安い材料だけを選んで建物の安全性を損なっては、裘を反して薪を負うに等しい。
  • 送料を惜しんで十分に梱包しなかったため、高価な器が割れ、裘を反して薪を負う結果になった。
  • 橋の点検費を減らして後に大修理が必要となった政策は、裘を反して薪を負うとの批判を受けた。
  • 目先の売り上げを増やすために長年の信用を失うのは、裘を反して薪を負う考え方だ。

主な参考文献

・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary.』
・桓寛『塩鉄論』前漢。
・劉向『新序』前漢。


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