【ことわざ】
鼬の最後っ屁
【読み方】
いたちのさいごっぺ
【意味】
追い詰められたときに、苦しまぎれの非常手段に出ること。また、最後に見苦しい行動をすることのたとえ。


【英語】
・last resort(ほかの方法がないときの最後の手段)
・final emergency measure(追い詰められたときの最後の非常手段)
・final defence when one is cornered(追い詰められたときの最後の防御)
【類義語】
・窮余の一策(きゅうよのいっさく)
・苦肉の策(くにくのさく)
・悪あがき(わるあがき)
【対義語】
・立つ鳥跡を濁さず(たつとりあとをにごさず)
・正攻法(せいこうほう)
・正々堂々(せいせいどうどう)
「鼬の最後っ屁」の語源・由来
鼬(いたち)は、敵に襲われたり追い詰められたりしたとき、肛門の近くにある一対の腺から、強い悪臭のある液体を出して身を守ります。この動物の習性が、「鼬の最後っ屁」という言い方のもとになっています。
この言葉は、もとは実際の動物の行動を指す、かなり具体的な言い方でした。鼬が命の危険に迫られたとき、最後の武器として悪臭を放つ姿から、追い詰められた者が苦しまぎれに非常手段を使うことへと、意味が広がりました。
古い形として、『類船集(るいせんしゅう)』(1676年・江戸時代前期、高瀬梅盛著)に、「鼬の最後の屁(へ)とて一命あやうき時ひる事有」とあります。これは、鼬が命の危ないときに屁をひる、つまり、身を守るために悪臭を出すことがあるという意味の記述です。『類船集』は、俳諧付合(つけあい)語集で、言葉と、それに関係する語や説明を集めた書物です。
この段階では、「鼬の最後の屁」という形が、動物の行動そのものを説明する言い方として出ています。その後、「最後屁」という部分だけでも用いられるようになり、江戸時代中期の1762年には「さいご屁」の例が出ます。また、「さいごべ」から変化した「さいごっぺ」という形も広まり、「最後っ屁」は、追い詰められたときの悪臭から、苦しまぎれの手段や最後の手段を表す語へと移っていきました。
明治時代になると、このことわざは、人間社会の比喩として、いっそうはっきり使われています。『社会百面相』(1902年、内田魯庵著)には、「鼬の最後屁のようなものだ」という用例があり、追い詰められた人が自分を守るためにとる見苦しい手段をたとえる表現として用いられています。
そのため、このことわざは、「最後まで努力する」というよい意味ではなく、追い詰められて相手を不快にさせるような手段を使うという、批判的な意味を含みます。鼬の悪臭そのものが好ましくないものとして受け取られたため、人の行動にたとえる場合にも、さげすみやあきれのニュアンスを伴いやすい表現になりました。
現在の「鼬の最後っ屁」は、物事がうまくいかなくなった最後に、相手を困らせたり、見苦しい言い逃れをしたりする行動を指して使います。もとの動物の習性から、最後の非常手段、さらに最後の醜態という意味へと移ったことわざです。
「鼬の最後っ屁」の使い方




「鼬の最後っ屁」の例文
- 負けが決まったチームが、終了間際に相手へ乱暴な抗議をしたのは、鼬の最後っ屁にすぎない。
- 退職する日に会社中へ悪口のメールを送るとは、まさに鼬の最後っ屁だ。
- 試合で不正が見つかったあと、相手の責任にしようとした発言は鼬の最後っ屁だった。
- 交渉がまとまらないと分かると、相手の評判を落とそうとする鼬の最後っ屁のような行動に出た。
- 発表の失敗を隠すために、友人の準備不足を責めたのは鼬の最後っ屁と言える。
- 店の不正が明るみに出たあと、客を悪く言い始めた店主の態度は鼬の最後っ屁だった。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・平凡社編『世界大百科事典 改訂新版』平凡社、2007年。
・高瀬梅盛『類船集』1676年。
・内田魯庵『社会百面相』博文館、1902年。
・Electronic Dictionary Research and Development Group『JMdict』。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』。























