【慣用句】
行き掛けの駄賃
【読み方】
ゆきがけのだちん
【意味】
本来の用事のついでに、ほかのこともして少し得をすること。転じて、あることをするついでに別のこともすること。


【英語】
・while you’re at it(そのついでに)
・as a little extra on the way(行く途中の小さなおまけとして)
・kill two birds with one stone(一度の手間で二つのことをする)
【類義語】
・一石二鳥(いっせきにちょう)
・一挙両得(いっきょりょうとく)
・ついでに(ついでに)
【対義語】
・骨折り損のくたびれ儲け(ほねおりぞんのくたびれもうけ)
・無駄足(むだあし)
・徒労(とろう)
「行き掛けの駄賃」の語源・由来
「行き掛けの駄賃」は、もともと、どこかへ行く途中で荷物を運び、その報酬を受けることから生まれた言い方です。今の感覚では「ついでに少し得をする」という意味で使いますが、もとの姿は、道中の実際の働きに結びついていました。
ここでいう「行き掛け」は、出かけて行くその途中のことです。まだ目的地に着く前の道すがら、という意味が土台にあります。
「駄賃」は、荷物を運ぶ駄馬や人足に払う賃金を指す言葉です。昔は、品物を運ぶこと自体が大切な仕事でしたから、荷を運んだぶんの賃金がはっきり意識されていました。
つまり、この慣用句のもとの場面では、すでにどこかへ向かっている人が、その途中で別の荷物も運び、少し余分の賃金を受け取ることになります。新しく大きな手間をかけるのではなく、すでに出かけている流れの中で得をするところが大事です。
この成り立ちから、「行き掛けの駄賃」は、主な用事とは別にもう一つ何かをして、少し利益を得ることを表すようになりました。利益といっても、大もうけではなく、ついでに入る小さな得という感じがよく合います。
古くの人びとの暮らしでは、移動そのものに今よりずっと手間がかかりました。そのため、どこかへ行くついでに別の用事も済ませることには、実際の知恵と節約の意味があったのです。
この言い方は、そうした生活の感覚をそのまま残しています。わざわざもう一度出かけるのではなく、一度の動きの中で二つ三つの用を足すことが、合理的で価値あることとして感じられていたのでしょう。
やがて、この慣用句は、お金を受け取る場合だけでなく、広く「ついでに別のこともする」という意味へ広がりました。現代では、買い物の帰りに役所へ寄る、学校へ行く途中で提出物を出す、といった場面にも自然に使われます。
ただし、「行き掛けの駄賃」には、ほんの少しくだけた味わいがあります。きちんとした改まった文章より、日常の会話ややわらかい文章の中で使うほうがしっくりきます。
また、この慣用句は、思いがけない幸運が向こうから落ちてくる場合には向きません。自分がもともと動いている途中で、もう一つの用事や小さな得が加わる、という形で使うのが本筋です。
似た表現の「一石二鳥」は、ひとつの行動で二つの利益を得ることを広く言います。それに対して「行き掛けの駄賃」は、出かける途中や、すでに始めた用事の流れの中で、ついでに得をする感じがよりはっきりしています。
ですから、この慣用句のいちばん大事な点は、「本来の用事が先にあり、そのついでにもう一つの用や小さな利益が加わる」というところです。そこを押さえると、意味の輪郭がきれいに見えてきます。
「行き掛けの駄賃」の使い方




「行き掛けの駄賃」の例文
- 駅前の書店へ行くので、行き掛けの駄賃で銀行の振り込みも済ませた。
- 母は買い物のあと、行き掛けの駄賃でクリーニング店にも寄ってきた。
- 委員会の用紙を職員室へ届けるついでに、行き掛けの駄賃で図書室の本も返してきた。
- 出張先が取引先の近くだったので、行き掛けの駄賃で別件のあいさつ回りも終えた。
- お寺へ花を届ける道すがら、行き掛けの駄賃で祖母の薬も受け取ってきた。
- 市役所へ住民票を取りに行った帰りに、行き掛けの駄賃で郵便局の用事まで片づけた。























