【ことわざ】
犬は人に付き猫は家に付く
【読み方】
いぬはひとにつきねこはいえにつく
【意味】
犬は飼い主や家族になついて従い、猫は住み慣れた家や場所になじむ、という犬と猫の性質の違いを表す言葉。


「犬は人に付き猫は家に付く」の語源・由来
「犬は人に付き猫は家に付く」は、中国の古い故事から生まれた言葉ではなく、人とともに暮らす犬と猫の様子を比べた、日本のことわざです。ことわざには、昔から言い伝えられてきた短い言葉として、生活体験から生まれた見方や教訓を含むものが多く、この表現も、引っ越しや住まいの変化に対する犬と猫の違いを、分かりやすい対句にしたものです。
この言葉の古い形として、明治時代の『諺語大辞典(げんごだいじてん)』(1910年、藤井乙男編)には、「犬ハ人ニ附キ猫ハ家ニ附ク」という表記が出てきます。同書は、諺をはじめ、故事・俗伝・隠語・地口など三万余を収めた辞典であり、この項目では、住まいを移すとき、犬は主人に従って家を去り、猫は主人について行かずにその家に残る、という意味で説明しています。
ここでいう「付く」は、単に体を近づけるという意味ではなく、心や生活のよりどころとして結びつくという意味を含みます。「人に付く」は飼い主や家族に従うこと、「家に付く」は住み慣れた家や場所に強くなじむことを表します。古い表記では「附キ」が用いられ、現在は「付き」または「つき」と書かれる形が一般的ですが、表している内容は大きく変わっていません。
このことわざは、犬をよく、猫を悪く見るための言葉ではありません。犬に関することわざの分類でも、この表現は、犬をほめる言葉やけなす言葉ではなく、犬が飼われる存在であることに関わる中立的なことわざとして挙げられています。主人が引っ越す際、犬は主人について家を去るが、猫はその家に残る、という説明からも、重点は優劣ではなく、犬と猫の結びつき方の違いにあります。
猫については、住み慣れた場所を自分のなわばりとしてとらえ、そのなわばりに強い執着をもつ性質があると述べられています。また、猫と一緒に引っ越す場合には、慣れたにおいのある物や安全な場所を用意し、新しい家に少しずつ慣れさせることが大切だとされています。こうした性質が、昔の人の目には、「猫は家に付く」という言い方として映ったといえます。
一方、現在の暮らしでは、猫も飼い主や家族に愛情を示し、人との関係を大切にすることがあります。そのため、このことわざは、すべての犬や猫に必ず当てはまる決まりとしてではなく、昔からの観察にもとづき、犬は人との結びつき、猫は場所との結びつきが目立ちやすいという違いを、簡潔に表した言葉として受け取るのがよいでしょう。
「犬は人に付き猫は家に付く」の使い方




「犬は人に付き猫は家に付く」の例文
- 引っ越しの日、犬はすぐ家族のあとを追ったが、猫は古い家の押し入れを気にしていて、犬は人に付き猫は家に付くという言葉を思い出した。
- 祖母は、飼い猫が新居で落ち着くまで時間がかかった様子を見て、犬は人に付き猫は家に付くと言った。
- 犬は旅行先でも家族の近くにいれば安心したが、猫はいつもの部屋を離れるのを嫌がり、犬は人に付き猫は家に付くを実感した。
- 転勤で家を移るとき、犬の世話より猫の環境づくりに気を配ったのは、犬は人に付き猫は家に付くという考えがあったからだ。
- 犬は人に付き猫は家に付くというように、動物によって安心するよりどころは同じではない。
- 新しい住まいに慣れない猫のため、使い慣れた毛布を置いた母は、犬は人に付き猫は家に付くという言葉を大切にしていた。
主な参考文献
・藤井乙男編『諺語大辞典』有朋堂、1910年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・馬場俊臣「『犬』に関することわざ(一)―『犬』をどう捉えてきたか―」『札幌国語研究』第24号、北海道教育大学札幌校国語国文学会、2019年。
・今泉忠明監修『ネコの本音』ナツメ出版、2006年。























