【ことわざ】
親の因果が子に報う
【読み方】
おやのいんががこにむくう
【意味】
親が行った悪事の報いが、罪のない子供に災いとなって現れること。


【英語】
・The sins of the fathers are visited upon the children(親の罪のために子供が苦しむ)
【類義語】
・親の罰は子に当たる(おやのばちはこにあたる)
・親の罪子に報う(おやのつみこにむくう)
【対義語】
・親の光は七光(おやのひかりはななひかり)
「親の因果が子に報う」の語源・由来
「親の因果が子に報う」は、仏教に由来する「因果」の考えを、親と子の関係に当てはめたことわざです。「因果」は、もともと原因と結果、また、その二つのつながりを表します。仏教では、過去に行った善い行いや悪い行いが原因となり、それに応じた結果がもたらされるという意味でも用います。
「因果」という言葉は、日本では『法華義疏(ほっけぎしょ)』(7世紀前半成立)に、すでに用例があります。この段階では、物事の原因と結果を表す仏教の言葉でしたが、『太平記(たいへいき)』(14世紀後半成立、南北朝時代)では、前に行った業の報いという意味でも使われています。さらに近世には、「因果な身」のように、不運で不幸な境遇そのものを表す言葉へも広がりました。
因果応報は、本来、善い行いには善い結果が、悪い行いには悪い結果が伴うという考えです。しかし、「親の因果が子に報う」では、そのうち、悪い行いと悪い結果だけを取り上げ、しかも、行為をした親ではなく、その子供が災いを受ける形で表しています。何の罪もない子供が苦しむ理不尽さを示すと同時に、親は、自分の行いが子供に及ぼす影響を考えなければならないという戒めにもなっています。
このことわざの古い用例は、曲亭馬琴の読本『阿旬殿兵衞實々記(おしゅんでんべえじつじつき)』(1808年・江戸時代後期、曲亭馬琴作、歌川豊広画)にあります。この作品は『旬殿実々記』とも呼ばれ、江戸で全十巻が刊行されました。
その巻三に、「親の因果が子に報ひ、艱苦の中に人となして」とあります。親の悪い因果が子に及び、その子が苦しみの中で成長した、という意味です。この時点で、親の悪業の結果を罪のない子が受けるという、現在とほぼ同じ意味の言い方が成り立っていました。
古い形では「親の因果が子に報ゆ」ともいい、本文では「報ひ」と書かれています。「報ゆ」は「報いる」の古い形で、行為に応じた結果が返ってくることを表します。その後、「報う」「報い」などの形も広く用いられ、現在の「親の因果が子に報う」という形に定着しました。
後には、「親の因果が子に報い」という形が、見世物小屋の呼び込みの決まり文句にも使われました。親が犯した悪事のために、子供が珍しい姿や病気をもって生まれたのだという物語を作り、人々の同情や好奇心を引こうとしたものです。こうした使い方は、見世物にされた人を、親の罪の結果であるかのように扱い、偏見を強めるものでした。
太宰治の『薄明(はくめい)』(昭和21年)にも、「親の因果が子に報い」という言い方が出てきます。ここでは、本人に直接の原因が見当たらない不幸を、親の過去の行いと結び付けて語っています。江戸時代の読本に現れた表現が、近代にも、子が親の行為の結果を負わされることを表す言葉として受け継がれたことが分かります。
現在では、親の借金、不正、犯罪、無責任な振る舞いなどによって、子供の暮らしや信用まで損なわれる場面を表すことがあります。ただし、病気や障害を親の悪行と結び付けたり、苦しんでいる子供を責めたりするために使うべき言葉ではありません。このことわざは、罪のない子供が親の行為によって苦しまないよう、大人は、自分の行動に責任をもつべきだという戒めとして受け取ることが大切です。
「親の因果が子に報う」の使い方




「親の因果が子に報う」の例文
- 父親の不正によって一家の信用まで失われ、親の因果が子に報う結果となった。
- 親の因果が子に報うというが、借金を残された子供には何の罪もない。
- 物語では、悪事を重ねた領主の子が国を追われ、親の因果が子に報う筋書きとなっている。
- 会社を私物化した経営者の息子まで非難される様子は、親の因果が子に報うようで気の毒だった。
- 親の因果が子に報うことのないよう、父は家族の将来を考えて誠実に働いた。
- 親の因果が子に報うということわざは、親の行動が子供の人生にも影響することを戒めている。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・Merriam-Webster, Inc., 『Merriam-Webster.com Dictionary』。
・曲亭馬琴『阿旬殿兵衞實々記』1808年。
・太宰治『薄明』新紀元社、1946年。























