【ことわざ】
雉も鳴かずば撃たれまい
【読み方】
きじもなかずばうたれまい
【意味】
余計なことを言わなければ、災いを招かずにすむことのたとえ。不用意な発言によって、自分から不利益や面倒を招く場合に用いる。


【英語】
・Silence is golden.(沈黙は金、言わないほうがよいことがある)
・Least said, soonest mended.(余計に話さないほうが、こじれた事態がおさまりやすい)
【類義語】
・口は禍の門(くちはわざわいのかど)
・口は禍の元(くちはわざわいのもと)
「雉も鳴かずば撃たれまい」の語源・由来
「雉も鳴かずば撃たれまい」は、雉が鳴かなければ人に居場所を知られず、撃たれることもなかっただろう、という具体的な情景から生まれたことわざです。雉は古く「キギス」「キギシ」とも呼ばれ、その声が高く鋭い鳥として、日本の伝承の中でもよく取り上げられてきました。
このことわざでは、雉の鳴き声が、そのまま人間の「余計な発言」に重ねられています。目立たずにいれば災いを避けられたのに、自分から声を出したために危険を招く、という比喩です。
由来としてよく結びつけられるのが、摂津(せっつ)の長柄(ながら)の橋などに伝わる人柱伝説です。長柄の橋に関わる話には、父が橋の人柱となり、その悲しみの中で雉が撃たれる場面を見た娘が歌を詠むものが伝わっています。
その古歌は、「物いはじ父は長柄の橋柱 鳴かずば雉も撃たれざらまし」という形で伝えられます。これは、「私は何も言うまい。父は長柄の橋柱となった。雉も鳴かなければ撃たれなかっただろう」という意味に読み解けます。
この歌の後半にある「鳴かずば雉も撃たれざらまし」という考えが、ことわざとして短く整っていきました。雉が声を立てたために撃たれたという場面が、人が余計なことを言って災いを招くことのたとえとして受け取られるようになったのです。
江戸時代後期の『諺苑(げんえん)』(1797年・江戸時代後期、太田全斎著)は、俗語や俗諺を集めた国語辞書です。この書物に関わる古い用例として、「雉も鳴かずば打たれまい」と同じ意味の言い方が伝えられており、近世にはことわざとして整理されていたことが分かります。
表記には、「撃たれまい」のほかに「打たれまい」もあります。また、「鳴かずば雉も打たれまい」「鳥も鳴かずば打たれまい」「鳴く虫はとらる」のような近い形も伝わっています。
「撃つ」は雉を射止める場面を強く思わせる表記で、「打つ」は古い言い回しとして広く用いられる表記です。どちらも、ことわざの意味としては、実際に鳥を撃つことではなく、言葉によって自分から災いを招くことを表します。
このことわざは、単に「黙っていればよい」とだけ教える言葉ではありません。言うべきことを言わないすすめではなく、言わなくてもよいことを軽々しく口にすると、相手を傷つけたり、自分の立場を悪くしたりするという戒めです。
一方で、事が起きてしまったあとに、当人の不用意な言葉だけを責めるような使われ方もあります。そのため、人を強く責める場面ではなく、発言の慎重さを考える場面で用いると、ことわざの教訓が分かりやすく伝わります。
現在では、学校、家庭、仕事、友人関係など、さまざまな場面で使われます。秘密をもらしたり、余計な冗談を言ったり、わざわざ自分の失敗まで明らかにしてしまったりしたときに、「雉も鳴かずば撃たれまい」と表します。
「雉も鳴かずば撃たれまい」の使い方




「雉も鳴かずば撃たれまい」の例文
- 秘密の話を自分から口にしてしまい、雉も鳴かずば撃たれまいという結果になった。
- 友人の失敗をからかったせいで自分の失敗まで知られ、雉も鳴かずば撃たれまいと思い知らされた。
- 会議で余計な冗談を言って注意を受け、雉も鳴かずば撃たれまいの例となった。
- 兄は黙って片づければいいのに言い訳を重ね、母を怒らせ、雉も鳴かずば撃たれまいとなった。
- 不用意な発言で相手を不快にさせ、雉も鳴かずば撃たれまいと反省した。
- 試合前、相手に軽口をたたきチーム全体が気まずくなり、雉も鳴かずば撃たれまいという空気になった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・太田全斎『諺苑』1797年。























