【故事成語】
足を知らずして靴を為る
【読み方】
あしをしらずしてくつをつくる
【意味】
人の本性には大きな違いがなく、同じ種類のものは性質もおおむね似通うというたとえ。


【英語】
・Birds of a feather flock together.(似た者同士は集まる)
【類義語】
・同類相求む(どうるいあいもとむ)
・類は友を呼ぶ(るいはともをよぶ)
【対義語】
・十人十色(じゅうにんといろ)
「足を知らずして靴を為る」の故事
この故事成語は、中国・戦国時代の思想書『孟子(もうし)』の「告子(こくし)」上篇に出てくる比喩にもとづく表現です。『孟子』は、孟子の言行や思想を記した書で、性善説を中心に仁義や王道政治を説く儒教の経典として重んじられてきました。
「告子」上篇では、人の本性をめぐる議論の中で、孟子が「同じ種類のものは、だいたい似た性質をもつ」という考えを示しています。豊かな年に人々が落ち着き、凶作の年に荒れやすくなるのは、生まれつきの資質がまったく違うからではなく、生活の苦しさが心をそこなうからだと説明し、そのあと麦の生長をたとえにして、同じ種類のものは互いに似るという筋道を立てています。
その流れの中で、龍子の言葉として「不知足而為屨、我知其不為蕢也」という一節が出てきます。これは、足の細かな大きさを知らずに屨、つまり履き物を作っても、それが蕢、すなわち草で編んだ器のような別物にはならない、という意味です。
この比喩の要点は、「一人一人の足は完全に同じである」ということではありません。足には足としての共通した形があるので、足を知らずに作っても、靴は靴らしい形になるという点にあります。宋代の朱熹(しゅき)による注釈でも、足の大小を知らずに履き物を作っても、必ず足の形に似て、草器にはならないという趣旨が説明されています。
孟子はさらに、味を好む口、音を聞く耳、美しいものを見分ける目を例にして、人には共通してよいと感じるところがあると説きます。そして心についても、理や義をよいと感じる共通のはたらきがあると考え、聖人だけがまったく別の種類の人間なのではなく、人として同じ本性をもつという考えへつなげています。
日本語では、原文の「屨」を、現代の読者に分かりやすい「靴」で表す形が広まり、「足を知らずして靴を為る」として用いられます。「為る」はここでは「つくる」と読み、細かな個別差をすべて知らなくても、同じ種類であれば共通する性質を推し量れる、という意味を表します。
ただし、この故事成語は、人の違いを軽く見るための言葉ではありません。もとの文脈では、人に共通する本性や性質を述べるための比喩として用いられているため、個々の違いを無視して決めつけるのではなく、同じ種類に備わる共通点を考える場面で使うのが自然です。
「足を知らずして靴を為る」の使い方




「足を知らずして靴を為る」の例文
- 新しい委員会の説明を作るとき、同じ学年の生徒がつまずきやすい点を見込むのは、足を知らずして靴を為るという考え方に近い。
- 同じ型の機械なら故障しやすい部分も似るため、足を知らずして靴を為るとして点検の順番を決めた。
- 子ども向けの図鑑では、読者の細かな好みを知らなくても、足を知らずして靴を為るの発想で身近な例から説明を始める。
- 町内の防災訓練では、過去に同じ地域で困った点を参考にし、足を知らずして靴を為るとして必要な案内を整えた。
- 同じ競技を始めたばかりの選手には似た不安があるので、コーチは足を知らずして靴を為ると考えて基本練習を組んだ。
- 足を知らずして靴を為るとはいえ、最後には一人一人の事情を聞いて、準備した計画を直す必要がある。
主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・朱熹『四書章句集注』。
・『孟子』中国・戦国時代。























