【ことわざ】
淡きを食らい薄きを着る
【読み方】
あわきをくらいうすきをきる
【意味】
ぜいたくをせず、粗衣粗食に甘んじて、つつましく暮らすこと。


【英語】
・be content to live simply.(質素に暮らすことに満足する)
【類義語】
・粗衣粗食(そいそしょく)
・質素倹約(しっそけんやく)
【対義語】
・贅沢三昧(ぜいたくざんまい)
「淡きを食らい薄きを着る」の語源・由来
「淡きを食らい薄きを着る」は、「淡い味のものを食べ、薄い衣類を着る」という、日々の衣食をそのまま組み合わせた表現です。「淡い」は、食べ物でいえば味があっさりしていることにつながり、「薄い」は、衣服を重ねすぎないことにつながります。そこから、濃い味や豪華な食事、厚い衣服や飾った身なりを求めすぎない、つつましい暮らしのたとえになりました。
このことわざでいう「淡き」は、単に味が薄いというだけではありません。味の濃いもの、美味を重ねた食事、ぜいたくな食べ方を控えるという意味を含みます。また「薄きを着る」も、寒さをがまんして無理に薄着をするという意味ではなく、必要以上に着飾ったり、身のまわりをぜいたくにしたりしない態度を表します。衣食という毎日の基本にしぼって、暮らし方全体の慎ましさを言い表しているのです。
この考え方は、江戸時代の養生思想ともよく重なります。貝原益軒の『養生訓』(1712年完成、1713年刊行、江戸時代中期、貝原益軒著)には、飲食・衣服・住まいなどは命を養うためのものであり、外からの養いを重くしすぎると、かえって体の元気を損なうという考え方が述べられています。さらに、日用の飲食・衣服・器物・住まいなどについては、少しよければ足りるので、十分によいものばかりを求めてはならない、とも書かれています。
食については、『養生訓』に、薬を飲む日は「淡き物」を食べて薬の力を助け、濃い味のものを食べて薬の力を損なってはならないという一節があります。また、朝夕の食事で塩味が少なければ、のどがかわかず、湯茶を多く飲みすぎず、胃の働きにもよいという趣旨の記述もあります。ここでの「淡き」は、味を控えめにし、体をいたわる食べ方として語られています。
一方で、このことわざは、貧しさをただ悲しむ言い方ではありません。「粗衣粗食」は、粗末な衣服と粗末な食事、また簡素な生活のたとえです。「淡きを食らい薄きを着る」もそれに近く、物が少ないことそのものより、ぜいたくに流されず、必要なもので身を整える姿勢に重みがあります。がまんだけを説くのではなく、欲を控えることで暮らしを乱さない、という教えとして受け取ると分かりやすい表現です。
現在でも、このことわざは健康や食生活の話題で使われることがあります。薄味のものを食べ、厚着をしすぎないことを、質素な生活や健康法のたとえとして説明する例があり、塩分を取りすぎない食事や、薄着の習慣に触れて語られることもあります。昔の暮らしの知恵をもとに、今では「ぜいたくを控え、体にも財布にも無理のない生活をする」という意味で使われることわざになっています。
「淡きを食らい薄きを着る」の使い方




「淡きを食らい薄きを着る」の例文
- 留学資金をためるため、兄は淡きを食らい薄きを着る生活を続けた。
- 祖母は淡きを食らい薄きを着ることを大切にし、無駄な買い物をしなかった。
- 会社を立ち上げたばかりのころ、父は淡きを食らい薄きを着る思いで毎日を過ごした。
- 災害のあと、町の人々は淡きを食らい薄きを着る暮らしの中で、互いに助け合った。
- 豪華な食事を減らし、淡きを食らい薄きを着る生活に変えてから、家計にゆとりが出た。
- 夢をかなえるまでは淡きを食らい薄きを着る覚悟で、彼女は仕事と勉強に励んだ。
主な参考文献
・松村明監修、池上秋彦・金田弘・杉崎一雄・鈴木丹士郎・中嶋尚・林巨樹・飛田良文編集委員『デジタル大辞泉』小学館。
・飯間浩明編『四字熟語を知る辞典』小学館、2018年。
・近藤いね子・高野フミ編『小学館 プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・貝原益軒『養生訓』1712年完成、1713年刊行。























