【ことわざ】
会うた時に笠を脱げ
【読み方】
おうたときにかさをぬげ
【意味】
知人に会ったら、すぐ笠を脱いであいさつせよということ。転じて、よい機会に出会ったら、逃さずに利用せよというたとえ。


【英語】
・Make hay while the sun shines(好機のあるうちに利用せよ)
【類義語】
・門に入らば笠を脱げ(もんにいらばかさをぬげ)
・善は急げ(ぜんはいそげ)
・思い立ったが吉日(おもいたったがきちじつ)
「会うた時に笠を脱げ」の語源・由来
「会うた時に笠を脱げ」は、道で知人に会ったら、その場ですぐ笠を脱いであいさつする、という礼儀のたとえから生まれたことわざです。笠は、雨や雪を防ぎ、日光をさえぎるために頭にかぶるものを指します。
昔の外出では、笠は今の帽子に近い役割をもつ身近な被り物でした。相手に会った時に笠を取ることは、相手を敬い、きちんと向き合う姿勢を示す行いでした。
このことわざの第一の意味は、知人に出会ったら、あいさつの機会を逃してはいけないというものです。あいさつは、あとでしようと思っても、すれ違った瞬間を過ぎてしまえば、同じ形ではできなくなります。
そこから意味が広がり、よい機会に出会ったら、逃さずに利用せよという教えにもなりました。礼儀の機会を逃さないという考えが、好機を逃さないという広い意味へ移ったのです。
このことわざの古い用例には、『犬子集(えのこしゅう)』(1633年・江戸時代前期、松江重頼編)巻五に収められた「月も名にあふた所で笠をぬげ〈慶友〉」があります。ここでは、「会うた」に当たる古い表記として「あふた」が使われています。
『犬子集』は、江戸時代前期の俳諧撰集です。松江重頼が編み、1633年に刊行され、天文年間以降の作品を集めた句集として知られています。
松江重頼は、江戸時代前期の俳人で、俳諧を松永貞徳に学びました。『犬子集』の刊行によって、俳諧を新しい時代の文芸として広めるうえで大きな役割を果たしました。
『犬子集』は、発句や付句を多く収めた撰集で、縁語や掛詞を用いた言葉遊び、古典や故事を取り入れた表現を特色とします。そのため、「月も名にあふた所で笠をぬげ」という句も、日常の礼儀を題材にしながら、俳諧らしい軽みをもつ表現として読むことができます。
この句に出てくる「笠をぬげ」は、単に頭の被り物を取る動作だけを表すのではありません。出会ったその時に礼を尽くす、という行動の速さと礼儀の大切さを表しています。
近い言い方に「門に入らば笠を脱げ」があります。人の家の門内に入ったら笠を脱いであいさつするのが礼儀である、という考えから、礼儀はその場で行うべきものだという意味を表します。
「会うた時に笠を脱げ」は、その場を過ぎてからでは遅いという点を、礼儀の形から分かりやすく伝えています。人に会った時のあいさつだけでなく、好機に出会った時の行動にも当てはまるため、現在では「機会を逃すな」という教えとしても用いられています。
「会うた時に笠を脱げ」の使い方




「会うた時に笠を脱げ」の例文
- 先生に廊下で会ったら、会うた時に笠を脱げの心で、すぐにあいさつする。
- 取引先の担当者に会えたので、会うた時に笠を脱げと考えて、その場でお礼を伝えた。
- よい先生に質問できる機会が来たなら、会うた時に笠を脱げで、遠慮せず聞くべきだ。
- 友人に謝る機会を逃さないよう、会うた時に笠を脱げと思って、その日のうちに話しかけた。
- 地域の人に助けてもらったら、会うた時に笠を脱げで、次に会った時すぐ感謝を伝えたい。
- 会うた時に笠を脱げというように、好機は目の前にあるうちにつかむことが大切だ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・株式会社平凡社『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。
・松江重頼編『犬子集』1633年。
・Cambridge University Press, Cambridge Dictionary, “Make hay while the sun shines.”























