【ことわざ】
今日の情けは明日の仇
【読み方】
きょうのなさけはあすのあだ
【意味】
人の心は利害や感情に左右されやすく、今日の好意が明日には敵意へ変わることもあるというたとえ。


【英語】
・A friend today may be an enemy tomorrow.(今日の友が明日の敵になることもある)
【類義語】
・昨日の友は今日の仇(きのうのともはきょうのあだ)
【対義語】
・昨日の敵は今日の友(きのうのてきはきょうのとも)
「今日の情けは明日の仇」の語源・由来
「今日」と「明日」、「情け」と「仇」を向かい合わせにし、好意と敵意が短い間に入れ替わる様子を、鮮やかな対照によって示したことわざです。「今日」と「明日」という近い時を並べることで、人の心や立場がいかに変わりやすいかを強く表しています。
ここでいう「情け」は、相手への思いやりだけでなく、親しみや好意、味方として支えようとする気持ちも含みます。一方、「仇」は、自分に敵対する者や害を与える関係を指し、二つの言葉が正反対のものとして置かれています。
この表現の古い用例は、近松門左衛門作の浄瑠璃『国性爺後日合戦(こくせんやごにちかっせん)』(1717年・江戸時代中期)に出てきます。この作品は、享保2年、すなわち1717年に初演された浄瑠璃で、近松門左衛門の作品として伝わっています。
その二段目には、「昨日の味方は今日の敵、けふの情はあすのあた、頼む方なくなりはつる」とあります。昨日まで味方だった者が今日は敵となり、今日の好意も明日には敵意へ変わってしまうため、頼れる者がいなくなったという嘆きを表した一節です。
この一節では、「昨日の味方は今日の敵」と「けふの情はあすのあた」が続けて置かれています。そのため、もとの用例で重く見られているのは、親切が悪い結果を生むことではなく、利害や事情によって、人の立場や気持ちが反対へ変わることです。
古い用例では「今日の情は明日の仇」と書き、「情」の一字を「なさけ」と読んでいます。現在では、「情」に送り仮名を添えた「今日の情けは明日の仇」という表記も広く用いられていますが、読み方と意味は同じです。
同じ発想をもつ言い方に「昨日の友は今日の仇」があり、反対向きの変化を表すものに「昨日の敵は今日の友」があります。いずれも、時が移れば、敵と味方、好意と敵意が入れ替わることもあるという、人間関係の定まりにくさを表しています。
なお、「情けが仇」は、好意からしたことが、かえって相手に悪い結果をもたらすという意味です。「今日の情けは明日の仇」が人の心や立場の変化を表すのに対し、「情けが仇」は、親切そのものが思わぬ害につながる点に重きを置くため、意味の焦点が異なります。
このように、「今日の情けは明日の仇」は、今の親しさや好意だけを見て、相手との関係がいつまでも変わらないと思い込むことへの戒めです。人の心や立場は、利害や事情によって思いがけず変わることがあるという世のならいを、短い言葉で表しています。
「今日の情けは明日の仇」の使い方




「今日の情けは明日の仇」の例文
- 昨日まで同じチームで作戦を練っていた相手が、組替え後は最大のライバルとなり、今日の情けは明日の仇を実感した。
- 共同開発を進めていた二社は利益の配分をめぐって対立し、今日の情けは明日の仇という状況になった。
- 選挙中は支援し合った二人も、方針の違いから袂を分かち、今日の情けは明日の仇となった。
- 親しかった隣人同士が土地の境界をめぐって争い始め、今日の情けは明日の仇の言葉どおりになった。
- 国どうしの関係も利害によって変わるため、外交では今日の情けは明日の仇を忘れてはならない。
- 昨日まで相談相手だった同僚が昇進争いの競争相手となり、彼は今日の情けは明日の仇だと思い知らされた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・近松門左衛門『国性爺後日合戦』1717年。























