【故事成語】
群軽軸を折る
【読み方】
ぐんけいじくをおる
【意味】
一つ一つは軽く小さなものでも、数多く集まれば大きな力や影響を生むことのたとえ。


【英語】
・Many a little makes a mickle.(小さなものも数多く集まれば大きなものになる)
【類義語】
・積羽沈舟(せきうちんしゅう)
・叢軽折軸(そうけいせつじく)
「群軽軸を折る」の故事
「群軽軸を折る」は、中国の古い史書『戦国策(せんごくさく)』(前漢末、劉向編)の「魏策一」にある「群軽折軸」を訓読した表現です。四字を音で読めば「群軽折軸(ぐんけいせつじく)」となり、軽い物でも数多く積めば、その重みで車の軸が折れるという意味を表します。
この言葉が出てくるのは、戦国時代の遊説家である張儀(ちょうぎ)が、秦(しん)のために魏(ぎ)の王を説得する場面です。当時、魏を含む東方の国々は、力を合わせて秦に対抗する合従(がっしょう)の同盟を結んでいましたが、張儀は、各国が秦と個別に結ぶ連衡(れんこう)の策を唱え、魏王に合従から離れるよう求めました。
張儀は、合従を説く人々が激しい口調でその利益を語り続ければ、君主は巧みな弁論に引かれ、正しい判断を失いかねないと述べます。そして、「積羽沈舟、群軽折軸、衆口鑠金」と続けました。羽毛も積み重なれば舟を沈め、軽い荷物も集まれば車軸を折り、多くの人が同じことを言えば、金属さえ溶かすほどの力になるという意味です。
ここでの「群軽」は、数多く集まった軽い物を指します。「群」には数が多いという意味があり、「軸」は、車輪の中心を通して車体を支える心棒です。一つずつなら車にほとんど負担をかけない荷物でも、際限なく積めば、合計した重さによって丈夫な車軸まで折れてしまいます。
張儀はこのたとえによって、軽く見える一つ一つの言葉も、何度も重ねられれば、人の心を大きく動かすと説きました。したがって、原典の場面では、単に大勢が力を合わせるすばらしさをほめるのではなく、小さな働きかけの積み重ねが判断を左右するため、よく考えなければならないという戒めを含んでいます。
司馬遷の『史記(しき)』(前漢、紀元前1世紀)の「張儀列伝」にも、同じ言葉が収められています。そこでは、「積羽沈舟、群軽折軸、衆口鑠金、積毀銷骨」と続き、羽や軽い荷物が積み重なる力と、人々の言葉や非難が積み重なる力とが並べて表されています。張儀の説得を受けた魏の哀王は、合従の約束に背き、秦との講和を求めました。
また、『淮南子(えなんじ)』(前漢、紀元前2世紀、劉安編)の「繆称訓」では、小さな善を軽んじず、小さな悪を害がないと思って行ってはならないという教えの中で、「積羽沈舟、群軽折軸」が使われています。小さな悪も重なれば大きな悪となるため、立派な人は、問題がわずかなうちに慎むという文脈です。
この用例では、車軸を折る重さが、日々の小さな過ちの積み重ねに重ねられています。『戦国策』では言葉や説得が重なる影響を表し、『淮南子』では小さな行いが積み重なる結果を表しているため、このたとえが古くから広い場面に応用されていたことが分かります。
後には、原文の「群軽折軸」が四字の形で定着し、日本語では「群軽軸を折る」とも読むようになりました。「叢軽折軸」という形もあり、いずれも、軽く小さなものを一つずつ侮ってはならないことを教えています。現在では、小さな力が集まって大きな成果を生む場合にも、わずかな負担や失敗が積み重なって重大な結果を招く場合にも用いられる故事成語です。
「群軽軸を折る」の使い方




「群軽軸を折る」の例文
- 生徒一人一人の小さな提案が学校の決まりを変え、まさに群軽軸を折る結果となった。
- わずかな寄付でも大勢から集まれば、群軽軸を折るように被災地を支える大きな力となる。
- 小さな確認不足が何度も重なり、群軽軸を折るように重大な事故を引き起こした。
- 地域住民の署名は群軽軸を折る力となり、危険な道路の改修を実現させた。
- 毎日のわずかな貯金も、群軽軸を折るというように、数年後には大きな金額になった。
- 一件ずつは軽く扱われた苦情も、群軽軸を折るように積み重なり、会社の方針を改めさせた。
主な参考文献
・小川環樹・西田太一郎・赤塚忠・阿辻哲次・釜谷武志・木津祐子編『角川新字源 改訂新版』KADOKAWA、2017年。
・Jennifer Speake ed., The Oxford Dictionary of Proverbs, 6th ed., Oxford University Press, 2015.
・劉向編『戦国策』前漢末。
・司馬遷『史記』前漢。
・劉安編『淮南子』前漢、紀元前2世紀。




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