【慣用句】
同じ釜の飯を食う
【読み方】
おなじかまのめしをくう
【意味】
家族ではない人どうしが、いっしょに暮らし、苦楽をともにした親しい仲であることのたとえ。


【英語】
・break bread together(食事をともにする)
【類義語】
・一つ釜の飯を食う(ひとつかまのめしをくう)
・一鍋の物を食う(ひとつなべのものをくう)
「同じ釜の飯を食う」の語源・由来
「同じ釜の飯を食う」は、一つの釜で炊いた飯を分け合う姿を、生活や苦楽をともにすることに重ねた表現です。「同じ釜」は、同じ家や宿舎などで暮らし、毎日の食事をともにする生活を表し、「飯を食う」は、その暮らしを続けることまで含んでいます。
現在の形に先立つ、よく似た発想をもつ古い表現として、「一鍋の物を食う」があります。『浮世風呂(うきよぶろ)』(1809〜1813年・江戸時代後期、式亭三馬著)には、「ひとつ鍋の物を食合ふ者」とあり、同じ鍋の物をともに食べる者どうしだから、互いに事情をくんで収めようという場面で使われています。
この例は、「同じ釜の飯を食う」そのものではありませんが、同じ食物を分け合う人々を、家族のように親密な間柄とみなす考え方を表しています。一つの食卓を囲むことが、単なる食事ではなく、日々の暮らしや人間関係を共有することにつながっていたのです。
「釜」を用いた形は、『海に生くる人々(うみにいくるひとびと)』(1926年・大正15年、葉山嘉樹著)に出てきます。作中には、船員たちについて、「一つ釜の飯を食ふ」仲間であったという表現があり、家族ではない者どうしが生活をともにする親しい関係を表しています。
『海に生くる人々』は、室蘭と横浜の間を航行する石炭船を舞台に、厳しい労働に耐える船員たちを描いた長編小説です。同じ船の中で働き、寝起きし、食事を分け合う生活が続くため、「一つ釜の飯を食ふ」という言い方は、船員たちの強い仲間意識を表すものとなっています。
現在と同じ「同じ釜の飯を食う」という形は、『石狩川(いしかりがわ)』(1940年・昭和15年、本庄陸男著)に出てきます。そこには、「同じ釜の飯を食へば」とあり、暮らしをともにすれば、互いの考えもそれほど遠く隔たるものではないという文脈で使われています。
ここでは、同じ食事を続けて取ることが、相手の考え方や人柄を理解することへと結び付いています。「一つ釜」から「同じ釜」へと言い回しは変わっていますが、一つの生活を共有した仲間という意味は共通しています。
高橋和巳の『堕落』(1965年・昭和40年)にも、「共に生活し同じ釜の飯を食う場を作る」という用例があります。この段階では、同じ場所で実際に暮らしながら、理解と結び付きを深めるという、現在と同じ意味で用いられています。
このように、「同じ釜の飯を食う」は、同じ鍋の物を食べる親密な者という江戸時代の表現から、「一つ釜の飯を食う」という近代の形を経て、現在の言い回しへとつながります。ただ一度、食事の席をともにするのではなく、毎日の生活、仕事、苦労、喜びまで分かち合うことで生まれた、特別な仲間意識を表す慣用句です。
「同じ釜の飯を食う」の使い方




「同じ釜の飯を食う」の例文
- 寮で三年間暮らした二人は、同じ釜の飯を食う親しい仲間である。
- 合宿で厳しい練習に耐えた選手たちは、同じ釜の飯を食う仲として強く結ばれた。
- 若いころに同じ釜の飯を食う生活を送った同僚とは、退職後も交流が続いている。
- 住み込みで働いた職人たちは、同じ釜の飯を食ううちに家族のような関係になった。
- 災害の復旧作業で寝起きをともにした人々は、同じ釜の飯を食う仲間として互いを支えた。
- 同じ釜の飯を食う経験を重ねた劇団員の間には、深い信頼が育っていた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary, “break bread.”
・式亭三馬『浮世風呂』1809〜1813年。
・葉山嘉樹『海に生くる人々』1926年。
・本庄陸男『石狩川』1940年。























