【慣用句】
気が気でない
【読み方】
きがきでない
【意味】
気がかりで落ち着かない。ひどく心配で、平常の心持ちでいられないこと。


【英語】
・be worried sick.(ひどく心配している)
・be beside oneself with worry.(心配で自分を保てないほどである)
【類義語】
・気が揉める(きがもめる)
・気を揉む(きをもむ)
・居ても立っても居られない(いてもたってもいられない)
【対義語】
・安心(あんしん)
・胸を撫で下ろす(むねをなでおろす)
「気が気でない」の語源・由来
「気が気でない」は、「気」という言葉を重ねて、心がふだんの状態ではいられないほど乱れていることを表す慣用句です。「気」には、生命・意識・心などの状態や働き、物事に反応する心の働き、気分や気持ち、心配などの意味があります。
この言い方では、前の「気」は不安に動いている心、後の「気」は本来の落ち着いた心持ちに近い意味で受け取れます。つまり、心がいつもの心でなくなるほど気がかりだ、という強い不安を、同じ言葉のくり返しで表しています。
形の上では、「気が心でない」という説明も古くから添えられています。これは、心が本来の場所におさまらず、心配に引っぱられて落ち着かない状態を、分かりやすく言い換えたものです。
古い用例として、『好色訓蒙図彙(こうしょくきんもうずい)』(1686年・江戸時代前期、無色軒三白居士作、吉田半兵衛画)に、「腹にあたらうかと、気が気でなし」という形が出てきます。この「気が気でなし」は、現代の「気が気でない」にあたる形です。
『好色訓蒙図彙』は、江戸時代前期に刊行された小本三巻三冊の書物です。分類して図を添える「訓蒙図彙」系の書物の一つで、当時の風俗を項目ごとに分けて示しています。
この用例では、体にさしさわるのではないかと案じ、安心できない気持ちが表れています。現代の「気が気でない」と同じく、まだ結果が分からないために、心が落ち着かない場面で使われています。
吉田半兵衛は京都の人で、江戸時代前期から中期にかけて上方で活躍した浮世絵師です。仮名草子や浮世草子の挿絵を描き、『好色訓蒙図彙』などにも関わった人物として知られます。
「浮世草子(うきよぞうし)」は、井原西鶴の『好色一代男』(1682年)以後、江戸時代に上方を中心として流行した町人文学です。人々の暮らしや風俗を写実的に描く作品の中で、「気が気でなし」のような日常の心情表現も文章に現れました。
「気が気でない」は、特定の物語や人物の故事から生まれた言葉ではなく、日常の不安を表す日本語の言い回しとして育った表現です。古い形の「気が気でなし」から、現代語の「気が気でない」へと形を整えながら、心配で落ち着かないという意味を保ってきました。
現在では、子どもの帰りが遅い、試験の合否がまだ分からない、大切な返事を待っているなど、心配が強くてほかのことが手につかない場面で使います。単に少し気になるというよりも、心配が大きく、平静でいられない気持ちを表す慣用句です。
「気が気でない」の使い方




「気が気でない」の例文
- 娘の帰りが夜遅くなり、母は気が気でない様子で玄関の外を何度も見た。
- 合格発表の日が近づくにつれ、兄は気が気でない顔で通知を待っていた。
- 手術が無事に終わるまで、家族は気が気でない思いで待合室にいた。
- 大事な書類を郵送したあと、先方に届いたかどうか気が気でない。
- 遠足の日に雨雲が広がり、実行委員の生徒たちは気が気でない朝を迎えた。
- 取引先からの返事がなかなか来ず、担当者は気が気でない時間を過ごした。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年。
・無色軒三白居士作、吉田半兵衛画『好色訓蒙図彙』1686年。
・Oxford University Press『Oxford Learner’s Dictionaries.』
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary.』























