【慣用句】
借りてきた猫
【読み方】
かりてきたねこ
【意味】
ふだんとは違って、非常におとなしくしている様子のたとえ。いつもは元気な人やよく話す人が、慣れない場所や改まった場で急に静かになることをいう。


【英語】
・as meek as a kitten.(子猫のようにおとなしい)
【類義語】
・内弁慶(うちべんけい)
・内弁慶の外地蔵(うちべんけいのそとじぞう)
「借りてきた猫」の語源・由来
「借りてきた猫」は、よその家から借りてこられた猫が、慣れない場所でおとなしくしている様子を、人の態度に重ねた言い方です。ふだんと違って、たいへん静かにしている様子を表します。
もとの情景には、ねずみを捕るために猫を借りてくるという発想があります。活発にねずみを捕るはずの猫でも、よその家へ連れてこられるとおとなしくなって動かない、という見立てから生まれた表現です。
この見立ての背景には、「猫は家につき犬は人につく」という言い方に表れる、猫と場所との結びつきの強さがあります。住み慣れた場所から離れた猫が、警戒して動かなくなる様子が、「借りてきた猫」の比喩を支えています。
猫は、環境の変化に強く影響を受ける動物です。猫の快適さは環境と深く結びついており、環境上の必要が満たされないと、ストレスや行動の変化につながることがあります。
そのため、「借りてきた猫」は、単に静かな人を指すだけではありません。ふだんは元気だったり、よく話したりする人が、慣れない相手や場所の前で、急に小さくなったようにおとなしくなる、という変化を表します。
表記には、「借て来た猫」という形もあります。この形でも意味は同じで、ふだんとは違って、たいへんおとなしくしている様子を表します。
近代の用例として、葛西善蔵の『蠢く者』(大正13年、葛西善蔵著)に「借りられて來た猫かのやうに」という表現が出てきます。そこでは、おせいという人物が、部屋のすみに身を小さくして座っている様子を、この比喩で表しています。
この用例では、猫を借りてくるという実際の場面を述べているのではなく、人の態度を猫にたとえています。つまり、この時点で「借りてきた猫」は、人が場に慣れず、いつもと違っておとなしくしている様子を表す言い方として使われています。
現在は、「借りてきた猫のように」「まるで借りてきた猫だ」の形でよく使います。特に、家や親しい友だちの前ではにぎやかな人が、先生や来客、初めての場所などを前にして、急に静かになる場面に合う表現です。
「借りてきた猫」は、静かであることだけでなく、「いつもの姿と違う」という点が大切です。ふだんの元気さと、慣れない場でのおとなしさとの落差を、借りられてよその家に来た猫の姿で分かりやすく表した慣用句です。
「借りてきた猫」の使い方




「借りてきた猫」の例文
- 家ではよく話す弟も、初めて親戚の集まりに出ると借りてきた猫のようになる。
- いつも元気な友人が、校長先生の前では借りてきた猫のようにおとなしかった。
- 面接会場に入ったとたん、彼は借りてきた猫のように静かになった。
- 祖父母の家に着くまでは騒いでいた子どもたちが、玄関を入ると借りてきた猫のようになった。
- 新しいチームの会議で、彼女は借りてきた猫のように一言も発しなかった。
- ふだんは冗談ばかり言う兄が、先生との面談では借りてきた猫のように座っていた。
主な参考文献
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年。
・EDP『英辞郎』データ、アルク『英辞郎 on the WEB』。
・Ilona Rodanほか「AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines」『Journal of Feline Medicine and Surgery』2013年。
・葛西善蔵『蠢く者』1924年。























