【慣用句】
顔を合わせる
【読み方】
かおをあわせる
【意味】
顔を向き合わせて会うこと。また、演劇や映画で共演すること、競技で対戦する組み合わせになること。


【英語】
・meet face-to-face.(直接会う)
・come face to face with someone.(人と面と向かう)
【類義語】
・会う(あう)
・対面する(たいめんする)
・顔合わせ(かおあわせ)
【対義語】
・顔を背ける(かおをそむける)
「顔を合わせる」の語源・由来
「顔を合わせる」は、文字どおりには、互いの顔が向き合う状態を表します。「顔」は、頭部の前面を指し、目・口・鼻などがある部分を意味します。そこから、表情や顔つき、人前に出る姿などにも意味が広がりました。
この慣用句で大切なのは、「顔」が体面や名誉を表す場合ではなく、人と人が向かい合う具体的な姿を表している点です。相手の顔が見える距離で会うことから、「直接会う」という意味が生まれています。
「合わせる」は、二つ以上のものを向き合わせたり、そろえたりする意味をもつ言葉です。「合せる」には、対面させる、面会させる、また「顔を互いに向ける」という意味があり、古くは『落窪物語』(10世紀後半成立、平安時代中期)にも、人をひそかに会わせる意味の例が出てきます。
つまり、「顔」と「合わせる」が結びつくと、単に同じ場所にいるだけでなく、相手と向き合い、互いの顔を認め合う形になります。この具体的な動作が、現在の「会う」「対面する」という意味につながっています。
「顔を合わせる」の古い用例として、人情本『春色梅美婦禰』(1841〜1842年ごろ・江戸時代後期、為永春水著)五に、「のめのめ顔を合はされた義理じゃアありませんから」とあります。ここでは、相手と直接会うことを、顔を向き合わせる形で言い表しています。
『春色梅美婦禰』は、為永春水の著作で、歌川国直・静斎英一が画を添えた人情本です。早い本には天保12年の序をもつ後刷の伝本があり、江戸時代後期の町人生活や人情を描く作品の流れに属します。
この時代の「顔を合わせる」は、現在と同じように、相手と会うという意味で使われています。ただし、用例の「顔を合はされた義理じゃアありませんから」には、会うことに気まずさや義理がからむ場面の響きもあります。顔を向き合わせることは、人間関係の中で避けられない対面を示すこともあったのです。
その後、この表現は、会う意味だけでなく、演劇や映画などで共演する意味にも広がりました。舞台や画面の上で、俳優どうしが同じ作品に出て、互いに役として向かい合うことを「顔を合わせる」と言うようになりました。
さらに、相撲や試合などで、競技を争う組み合わせになる意味も生まれました。『東京風俗志』(1899〜1902年・明治時代、平出鏗二郎著)下には、「終日に至りて両大関顔を合はするやうに計らひたれば」という用例があり、対抗する力士どうしが取り組む形で「顔を合わせる」が使われています。
競技での用法では、ただ会うだけではなく、相手と向かい合って争うという意味が加わります。顔を向き合わせる姿から、対面、共演、対戦へと意味が広がったことが分かります。
現在の「顔を合わせる」は、日常では「久しぶりに友人と顔を合わせる」のように、直接会う意味でよく使われます。また、「二人の俳優が初めて顔を合わせる」「強豪校どうしが決勝で顔を合わせる」のように、共演や対戦にも自然に使われます。
この慣用句は、顔という人を見分ける大切な部分と、合わせるという向き合いの動作が合わさってできた言い方です。相手と同じ場に立ち、互いを直接認めるという具体的な姿が、今の「会う」「共演する」「対戦する」という意味を支えています。
「顔を合わせる」の使い方




「顔を合わせる」の例文
- 転校してから十年後、同級生たちは同窓会で久しぶりに顔を合わせることになった。
- 兄は仕事が忙しく、家族と朝食の席で顔を合わせる時間が少なくなった。
- 二人の俳優は新しい映画で初めて顔を合わせる。
- 決勝戦では、昨年の優勝校と今年の注目校が顔を合わせる。
- 謝る機会を逃したまま、翌日の会議で相手と顔を合わせるのは気が重かった。
- 地域清掃の日、近所の人たちが公園に集まり、久しぶりに顔を合わせる。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・為永春水『春色梅美婦禰』1841〜1842年ごろ。
・平出鏗二郎『東京風俗志』富山房、1899〜1902年。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Dictionary.』























