【ことわざ】
後の祭り
【読み方】
あとのまつり
【意味】
時機を逃してしまい、今さら何をしても役に立たないこと。手遅れで、取り返しがつかないことのたとえ。


【英語】
・It is too late for regrets now.(今さら後悔しても遅すぎる)
・What’s done is done.(済んだことは仕方がない)
・That’s water under the bridge.(過ぎたこととして、もはや変えられない)
【類義語】
・後悔先に立たず(こうかいさきにたたず)
・覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)
・時既に遅し(ときすでにおそし)
【対義語】
・転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ)
・備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし)
「後の祭り」の語源・由来
「後の祭り」は、もともと「祭りがすんだあとのこと」を表す言い方と深く関わっています。古い用法では、祭りの翌日に神前に供えた神饌(しんせん)を下げて飲食することを指し、後宴の意味をもっていました。『鷹筑波集(たかつくばしゅう)』(1642年刊、西武編)には、八月十六日に八幡へ参詣し、「跡の祭」をするという例が出てきます。ここでは、まだ現在の「手遅れ」の意味ではなく、祭りのあとに行う行事という具体的な意味で使われています。
現在の意味に近い古い用例としては、『虚堂録臆断』(1534年)五に「あとのまつり也」という形が出てきます。そこでは、死んだあとに紙銭(しせん:死者のために用いる紙製の銭)を焼いて不吉を除こうとしても無用である、という文脈で使われています。すでに大事な時を過ぎてから何かをしても役に立たない、という考えが、この用例にははっきり表れています。
江戸時代に入ると、「あとのまつり」「跡の祭」などの形で、時機を逃したことをいう表現として広がっていきます。『毛吹草(けふきぐさ)』(1645年刊、松江重頼編)には「あとのまつり」が収められ、浄瑠璃(じょうるり)『艶容女舞衣』(1772年)にも、悔やんでも「跡の祭」という使い方が出てきます。これらの用例では、単に祭りのあとをいうのではなく、すでに物事が決まってしまい、あとから悔やんでも間に合わないという意味へ近づいています。
このことわざが直接何を指すかについては、祭りがすんだあと、祭りのあとの山車(だし)、死後の祭りなど、いくつかの説があります。祭りが終わったあとに山車を出してもにぎわいに間に合わない、という時機遅れの説明と、亡くなったあとに供養しても生前の悔いは取り戻せない、という後悔の説明が重なり合って、今の意味につながったと考えられます。
その後、『諺苑(げんえん)』(1797年、太田全斎著)には「時に及はさる喩なり」とあり、近世の段階で、時機に間に合わないことのたとえとして整理されています。明治以降の文学作品にも「後の祭り」の形が見られ、現在では、祭礼そのものを指すよりも、取り返しのつかない段階での後悔や、時機を逃した行動を表すことわざとして用いられています。
「後の祭り」の使い方




「後の祭り」の例文
- 申し込み期限を一日過ぎてから参加したいと言っても、後の祭りだった。
- 大切なデータを保存せずに消してしまい、あとで悔やんでも後の祭りだった。
- 試合が終わってから作戦の間違いに気づいたが、後の祭りで結果は変わらなかった。
- 火災保険に入らないまま被害を受けてから備えの大切さを知っても、後の祭りである。
- 集合時刻を過ぎてから電車の時間を調べても、後の祭りになってしまう。
- 契約書をよく読まずに署名してしまい、不利な条件にあとで気づいたが、後の祭りだった。
松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・増井金典『日本語源広辞典』ミネルヴァ書房、2010年。
・米川明彦・大谷伊都子編『日本語慣用句辞典』東京堂出版、2005年。
・太田全斎『諺苑』1797年。
・Electronic Dictionary Research and Development Group『JMdict Japanese-Multilingual Dictionary』。























