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【朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随う】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随う

【故事成語】
朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随う

【読み方】
あしたにはふじのもんをたたき、ゆうべにはひばのちりにしたがう

【意味】
富裕で身分の高い人や権力者に取り入ろうとして、こびへつらいながら従うさま。

ことわざ博士
朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随うは、富や地位を持つ人に近づき、利益を得ようとへつらう姿をいうんだよ。
助手ねこ
権力者や有力者の機嫌を取るために、自分の考えを曲げて従う場面で用いるニャン。

【英語】
・to curry favor with those in authority.(権力のある人に取り入ろうとする)

【類義語】
・後塵を拝する(こうじんをはいする)
・肥馬の塵を望む(ひばのちりをのぞむ)

【対義語】
・富貴も淫するあたわず(ふうきもいんするあたわず)

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「朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随う」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語は、唐代の詩人・杜甫(とほ)の詩『奉贈韋左丞丈二十二韻』に出てくる「朝扣富兒門、暮隨肥馬塵」にもとづく言葉です。日本語では「朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随う」と訓読され、富貴の人の門をたたき、立派な馬に乗る権力者の後ろについて行く姿を表します。

杜甫は、712年から770年まで生きた中国・盛唐期の詩人で、字(あざな)は子美(しび)といいました。社会や人々の苦しみを深く見つめた詩を多く作り、後に詩聖とも呼ばれます。

『奉贈韋左丞丈二十二韻』は、杜甫が自分の志や不遇を語りながら、高官に贈った長い詩です。この詩は、杜甫が自分自身を語る詩の中でも重要な作品として扱われ、士人、つまり学問や文筆をもって世に出ようとする人の姿を、具体的に描いたものといえます。

詩の前半では、杜甫が若いころから学問と文章に自信をもっていたことが語られます。「書を読みて万巻を破り、筆を下せば神有るが如し」という有名な句も同じ詩の中にあり、豊かな読書と優れた文才への強い自負が示されています。

しかし、その志は思うようにはかなえられませんでした。詩の中では、「驢(ろば)に騎ること三十載、旅食す京華の春」と続き、都で長く暮らしながらも、安定した地位を得られずにいた姿が語られます。

その流れの中で、「朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随う」という句が出てきます。「富児」は富んで身分の高い人、「肥馬」はよく肥えた立派な馬であり、そこには、力ある人の家を訪ね、その外出の後ろに従うみじめな姿が描かれています。

この句のすぐ後には、「残杯と冷炙と、到る処潜かに悲辛す」と続きます。飲み残しの杯や冷めた肉を受けながら、行く先々でひそかにつらさをかみしめるという意味で、杜甫の生活の苦しさと屈辱がにじんでいます。

したがって、この言葉は、もともと軽い悪口として生まれたものではありません。高い志をもちながら、現実には有力者に頼らなければ生きていけない士人の苦しい姿を、杜甫が自分自身の身の上として強く描いた句です。

後の日本語では、この漢詩の一節が、富裕な人や権力者に取り入ろうとしてへつらう姿を表す故事成語として使われるようになりました。現在の使い方では、尊敬して従うというより、利益のために相手の機嫌を取る態度を批判的にいう表現です。

この句の「塵」は、馬や車が通った後に立つ土ぼこりを思わせます。後ろからその塵を浴びる姿は、権力者のあとについて離れず、その勢いにすがろうとする人のあり方を印象的に示しています。

また、日本の古い文章にも、「肥馬の塵」を望む、あるいは「肥馬の前に塵を望む」という近い言い方が出てきます。これは、立派な馬に乗る有力者の後ろに付き従う姿が、日本語の表現の中でも、権勢にすがる姿を表す言い方として受け取られていたことを示します。

つまり、この故事成語は、朝から夕方まで有力者のまわりを動き回る姿を通して、富や権力に取り入ろうとする生き方の卑しさと、その奥にあるみじめさを表します。杜甫の不遇を背景にもつため、ただ人を笑う言葉ではなく、自分の志を失ってまで権力にすり寄ることへの戒めとして読むことができます。

「朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随う」の使い方

健太
児童会の係を決める前に、太一くんが人気のある六年生にだけお菓子を分けて、ずっとついて歩いているよ。
ともこ
係に選ばれたいからって、相手の言うことに何でもうなずいているのね。それは少し見ていてつらいね。
健太
朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随うみたいだね。自分の考えを話さないまま、目立つ人に取り入ろうとしているんだ。
ともこ
本当に信頼されたいなら、へつらうより、みんなのために何ができるかをまっすぐ言ったほうがいいよ!
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「朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随う」の例文

例文
  • 出世のために上役の意見ばかりほめる彼の態度は、朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随うそのものだ。
  • 有力者の集まりにだけ顔を出し、弱い立場の人を見向きもしない姿は、朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随うと言われても仕方がない。
  • 委員長に選ばれたい一心で人気者の機嫌ばかり取るのは、朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随うような行いだ。
  • 取引先の社長にだけ大げさにへりくだる彼を見て、朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随うという言葉を思い出した。
  • 利益をくれそうな人にだけ近づく態度は、朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随うと受け取られやすい。
  • 朝には富児の門を扣き、暮には肥馬の塵に随うような生き方では、いつか周囲からの信頼を失う。

主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・川口喜治「李頎の士人描写詩について(三)」『山口県立大学学術情報』第10号、2017年。
・杜甫『奉贈韋左丞丈二十二韻』唐代。
・『太平記』14世紀後半成立。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』。





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