【慣用句】
親方日の丸
【読み方】
おやかたひのまる
【意味】
国や自治体が後ろ盾となり、経営が行き詰まっても救済されるだろうと安心して、仕事や経営が安易になりやすい状態を皮肉る言葉。


【英語】
・count on a government bailout(政府による救済を当てにする)
【類義語】
・殿様商売(とのさましょうばい)
【対義語】
・独立採算制(どくりつさいさんせい)
「親方日の丸」の語源・由来
「親方日の丸」は、「親方は日の丸」を縮めた言い方です。「親方」は、職人や弟子などを指導し、保護する立場の人を指します。一方、「日の丸」は日本の国旗であることから、日本という国や日本政府を表す言葉としても使われます。
したがって、「親方は日の丸」とは、直接の経営者よりもさらに上に、日本の国が大きな親方として控えているという意味です。国や自治体が最後には面倒を見てくれるため、経営が破綻しても、普通の会社のように倒産する心配が少ないという考え方を表しています。
この表現が批判するのは、国や自治体が事業を行うこと自体ではありません。損失が出ても公の資金で補ってもらえると考え、費用を抑える努力や利用者への配慮を怠るような、安易な経営姿勢を皮肉っています。
「親方日の丸」の初期の用例としては、『週刊朝日』(昭和30年6月12日号)に掲載された、浦松佐美太郎の「日本拝見(八幡)」が挙げられます。その中の「強兵」と題する部分で、この表現が使われています。
「日本拝見」は、各地の産業や社会の様子を伝えた連載で、のちに『日本拝見 東日本篇』(昭和32年、朝日新聞社出版局週刊朝日編集部編)にもまとめられました。この用例から、「親方日の丸」は古くから伝わる表現ではなく、戦後の日本社会の仕組みを背景として広まった言葉だと分かります。
戦後の日本では、日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社などの公企業が、鉄道・通信・専売事業といった国民生活に欠かせない仕事を担っていました。こうした組織は国の強い支えを受けていたため、その経営姿勢を批判する際に、「国が親方なのだから安心だ」という意味を込めた「親方日の丸」が用いられるようになりました。
「親方」と「日の丸」を結び付けたところに、この表現の特徴があります。単に「国が経営している」と述べるのではなく、国旗を掲げる国そのものを大きな親方にたとえることで、責任を引き受けてくれる存在に頼り切る姿を、分かりやすく皮肉っています。
その後は、国営・公営の組織そのものだけでなく、民営化された組織に残る古い経営姿勢についても使われるようになりました。「親方日の丸の意識」「親方日の丸の体質」のように、公の支えを当てにして、競争や責任を軽く見る考え方を指す用法へと広がっています。
現在の「親方日の丸」は、国が支える仕組みを表すだけの言葉ではありません。守ってくれる存在があるからと安心し、自分たちで経営を改善する努力や、失敗に対する責任を忘れてしまうことへの戒めとして用いられています。
「親方日の丸」の使い方




「親方日の丸」の例文
- 赤字になれば自治体が補ってくれるという親方日の丸の考えでは、経営の改善は進まない。
- その会社は、政府の支援を当てにした親方日の丸の体質から抜け出そうとしている。
- 公共施設の運営に親方日の丸の意識が残れば、費用を抑える工夫が生まれにくい。
- 民営化したあとも親方日の丸の気分を改めなければ、利用者の信頼は得られない。
- 国が最後には救ってくれるという親方日の丸の経営が、責任の所在をあいまいにした。
- 町の第三セクターは親方日の丸と批判され、事業計画を一から見直した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』全3巻、小学館、2006年。
・小学館大辞泉編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・集英社辞典編集部編『ルーツでなるほど慣用句辞典』集英社、1991年。
・朝日新聞社出版局週刊朝日編集部編『日本拝見 東日本篇』角川書店、1957年。
・浦松佐美太郎「日本拝見(八幡)」『週刊朝日』朝日新聞社、1955年6月12日号。























