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【恩の腹は切らねど情けの腹は切る】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語)

恩の腹は切らねど情けの腹は切る

【ことわざ】
恩の腹は切らねど情けの腹は切る

【読み方】
おんのはらはきらねどなさけのはらはきる

【意味】
受けた恩に報いるために命を捨てる者は少ないが、義理や人情のためには命を捨てる者が多いということ。

ことわざ博士
恩に報いる義務よりも、親しい人との結び付きや義理人情のほうが、人を強く動かすことを表すよ。
助手ねこ
恩人への返礼と、身近な人への情との違いを述べる場面に用いるニャン。

【類義語】
・恩の死にはせねども義理の死にはする(おんのしにはせねどもぎりのしにはする)
・恩の主より情けの主(おんのしゅよりなさけのしゅ)

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「恩の腹は切らねど情けの腹は切る」の語源・由来

ことわざを深掘り

「腹を切る」は、もともと切腹して命を絶つことを表す言い方です。このことわざでは、実際に腹を傷つける行為そのものではなく、ある人や信念のために、命を投げ出すほどの強い決意を表しています。

「恩」は、人から受けた恵みや助けをありがたく思う心につながる言葉です。一方、「情け」は、他人をいたわる心、思いやり、人情などを指します。この二つを対照させ、受けた利益への返礼よりも、人と人との身近な心の結び付きのほうが、時には強い行動を引き起こすことを表したのが、このことわざです。

現在の形に先立つ古い言い回しとして、「恩の死にはせねども義理の死にはする」があります。松江重頼編『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年・江戸時代前期)に用例があり、恩のために死ぬ者は少ないが、義理や人情のためなら命を捨てる者は多いという、同じ考えを表しています。

『毛吹草』は、俳諧(はいかい)に用いる言葉や諸国の名物、当時伝わっていたことわざなどを集めた書物です。ここに近い形が収められていることから、この考え方は、遅くとも江戸時代前期には、世間で通用する言い回しになっていたことが分かります。

「恩の腹は切らねど情けの腹は切る」という形は、近松門左衛門の浄瑠璃(じょうるり)『大職冠(たいしょかん)』(1711年・江戸時代前期)に出てくる言葉として伝わっています。『大職冠』は、正徳元年に大坂の竹本座で初演された五段の時代物で、藤原鎌足や蘇我入鹿をめぐる物語に、海人が宝玉を取り戻す玉取伝説を組み合わせた作品です。

作中では、鎌足に仕える則風が、妻である満月への義理から重大な行動に及びます。満月もその心をくみ、自らの危険を承知のうえで、竜宮から宝玉を取り戻す役目を引き受けます。このように『大職冠』では、義理や情によって、人が命にかかわる決断へ進む物語が描かれています。

『毛吹草』の「死にはする」という形に対し、『大職冠』に結び付く言い方では、「腹を切る」という具体的な表現を用いています。意味の中核は同じですが、「死」を「切腹」に置き換えることで、義理人情に動かされた覚悟を、江戸時代の人々が思い浮かべやすい姿で、強く示したと考えられます。

表記には、「情の腹は切る」とする形と、「情けの腹は切る」とする形があります。どちらも「なさけ」と読み、思いやりや人情、義理によって結ばれた心を表すため、ことわざの意味は変わりません。

このことわざは、恩を軽く扱ってよいと教えるものではありません。人は、過去に受けた利益を返すという考えだけでなく、親しみや同情、仲間への義理といった身近な感情によって、いっそう強く動かされることがあるという、人間の心の傾きを述べた言葉です。

「恩の腹は切らねど情けの腹は切る」の使い方

健太
昨日の放課後に僕の失くしたノートを一緒に探してくれてありがとう!
ともこ
気にしないで、健太くんがすごく困っていたから助けたくて残ったんだよ。
健太
自分の習い事の時間を遅らせてまで協力してくれた真心に感動したよ。恩の腹は切らねど情けの腹は切ると言うけれど、僕も今度は君が困ったときに全力で助けるよ!
ともこ
ふふっ、大げさだけど気持ちはとても嬉しいな!
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「恩の腹は切らねど情けの腹は切る」の例文

例文
  • 主君から恩賞を受けた武士が、旧友との義理を守って危険な役目を引き受ける姿は、恩の腹は切らねど情けの腹は切るのたとえに当たる。
  • 恩の腹は切らねど情けの腹は切るというように、彼は自分の安全よりも苦楽を共にした仲間の救助を選んだ。
  • その時代小説は、恩の腹は切らねど情けの腹は切るという人間の心を、二人の武士の選択を通して描いている。
  • 祖父は恩の腹は切らねど情けの腹は切るを引き、損得よりも人との結び付きを重んじる心について語った。
  • 恩人の頼みは断った男が親友のためには危険を承知で立ち上がり、恩の腹は切らねど情けの腹は切ると言われた。
  • 国語の授業で恩の腹は切らねど情けの腹は切るを学び、恩と義理人情とでは人を動かす力が異なるという昔の考え方を知った。

主な参考文献

・小学館大辞泉編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』全3巻、小学館、2006年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・松崎仁ほか校注『新日本古典文学大系91 近松浄瑠璃集 上』岩波書店、1993年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年。
・近松門左衛門『大職冠』1711年。





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