【ことわざ】
女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄
【読み方】
おんなはめのてんごく、さいふのれんごく、たましいのじごく
【意味】
美しい女性は目を楽しませるが、交際すると金がかかり、ついには心や身まで滅ぼされることがあるというたとえ。


【英語】
・A fair woman is a paradise to the eye, a purgatory to the purse, and a hell to the soul(美しい女性は、目には天国、財布には煉獄、魂には地獄)
【類義語】
・女の髪の毛には大象もつながる(おんなのかみのけにはたいぞうもつながる)
・女の足駄にて造れる笛には秋の鹿寄る(おんなのあしだにてつくれるふえにはあきのしかよる)
「女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄」の語源・由来
このことわざは、日本で古くから生まれた言い回しではなく、イギリスで記録された英語の格言をもとにした表現と考えられます。「天国」「煉獄(れんごく)」「地獄」を並べる構成には、キリスト教文化の考え方がはっきりと表れています。
「煉獄」とは、カトリックの教えで、天国へ入る前に魂が清められる状態を指します。永遠の罰を受ける地獄とは異なりますが、苦しみを伴う清めの段階とされるため、英語では、一時的につらい場所や状態を表すたとえにも使われます。
この表現の古い用例は、イギリスの女性作家エリザベス・グライムストンが著した『Miscelanea. Meditations. Memoratiues』(1604年刊)にあります。この書物は、グライムストンが一人息子に残した信仰上・道徳上の教えをまとめたもので、彼女の死後に出版されました。
同書の格言を集めた部分には、「A faire woman is a paradise to the eie, a purgatorie to the purse and a hell to the soule.」とあります。現代のつづりに直せば、「美しい女性は、目には天国、財布には煉獄、魂には地獄」という意味です。
「目の天国」は、美しい女性を見る喜びを表します。「財布の煉獄」は、交際や贈り物などによって金銭が失われ、財布が苦しい状態になることをたとえています。そして、「魂の地獄」は、恋愛への執着によって心の平安や正しい判断を失い、精神的・道徳的な破滅に至るという意味を表します。
この三つは、目から財布へ、財布から魂へと、受ける害が次第に深くなるように並べられています。初めは見た目の美しさによって喜びを得ても、その美しさに心を奪われれば金銭を失い、最後には自分自身まで滅ぼしかねないという流れです。
原文の「A faire woman」は、女性すべてではなく、「美しい女性」を指します。しかし、日本語では「女は」と訳され、女性一般について述べる形になっています。そのため、日本語のことわざは原文よりも対象が広く、女性を一まとめにして悪く捉える意味合いが強くなっています。
この言い回しは、十六世紀から十七世紀ごろのイギリスで、女性の美しさを、男性にとって魅力であると同時に危険なものとみなす社会観の中で広まりました。後の時代にも、女性の美しさを「目の楽園」「財布の煉獄」「魂の地獄」にたとえる格言として引用されています。
日本語の「女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄」は、原文と同じ三つのたとえを、同じ順序で並べています。この一致から、英語の格言をほぼそのまま訳し、日本のことわざ集などに取り入れた形と考えられます。
現在では、女性の性質を正しく表す教訓としてではなく、昔の男性中心の社会にあった一面的な女性観を伝える表現として扱う必要があります。美しさに心を奪われ、金銭や判断力を失う側にも責任があるため、実際の女性一般を非難する言葉として用いるのは適切ではありません。
「女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄」の使い方




「女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄」の例文
- 女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄は、十七世紀初めの英語の格言につながることわざである。
- 授業では、女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄に表れた古い女性観について話し合った。
- 女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄という表現には、キリスト教の天国・煉獄・地獄が用いられている。
- 研究発表では、女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄の英語の原文と日本語訳を比べた。
- 女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄を女性一般への評価として使うのは、現代にはふさわしくない。
- その本は、女は目の天国、財布の煉獄、魂の地獄を、昔の男性中心の社会観を示す例として取り上げた。
主な参考文献
・Elizabeth Grymeston『Miscelanea. Meditations. Memoratiues』Melch. Bradwood for Felix Norton、1604年。
・Oxford University Press『Oxford English Dictionary』「paradise, n.」。
・Elizabeth A. Nist「Tattle’s Well’s Faire: English Women Authors of the Sixteenth Century」『College English』46巻7号、1984年。
・Oliver Ford Davies『Shakespeare’s Fathers and Daughters』Bloomsbury Arden Shakespeare、2017年。
・Catholic Church『Catechism of the Catholic Church』Libreria Editrice Vaticana、1992年。























