【ことわざ】
匙を投げる
【読み方】
さじをなげる
【意味】
もうだめだと思って、見切りをつけて手を引くこと。医者が病人の治療をあきらめるほと、病状が悪化して、手の施しようがないこと。
治療や病人に対してだけではなく、これ以上どのように努力をしても、もう成功する見込みがないと悟り、あきらめてしまうこと。
【語源・由来】
昔の医者は、匙(スプーン)を使って薬の材料を計り、まぜ合わせていた。その薬を計る匙を投げだして治療をやめ、病人を見放すことから。
江戸時代には、医者(漢方医)が診察や治療の他に、薬の調合を行っていた。まだ医療技術が未発達で、薬しか治療方法がなかったため、薬がだめな場合は治す方法がなく、薬で治せないものは、もうあきらめざるを得ないことが多かった。江戸後期の川柳集、「排風柳多留(はいふうやなぎだる)」には、「田舎医者 さじを投げては 馬で逃げ」という川柳が見られる。そこから、医者が治療をあきらめる以外でも、物事を断念するという意味で用いられるようになった。
【類義語】
・お払い箱にする
【英語】
to give up (something as hopeless).
to throw in the towel.
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「匙を投げる」の使い方
またテストで悪い点数をとっちゃった。
どこを間違えたの?
何度も教えてもらったのに、わからなかったんだ。
匙を投げたくなるけれど、もう一度説明するから、よく聞いてね。
「匙を投げる」の例文
- せっかく途中まで計画していたのに、うまくいかなそうだと匙を投げた。
- こんなに強そうな相手には勝てないと、戦う前に匙を投げる。
- ペットの猫に芸を教えようとしたけれど、全然覚えてくれなくて匙を投げた。
- 名医が匙を投げてしまいたくなるほどの症状を抱えている。
- 何度注意しても、遅刻をするので、先生も匙を投げた。
- 最終回、ノーアウト満塁で、勝ち目がないと匙を投げた。
「匙を投げる」の文学作品などの用例
一面のレコードは僅かに三分そこそこで終りました。鈴子夫人始め佐瀬弁護士も森川森之助も、四五人の近親者達も、たがいに顔を見合わせるばかり。「これはどうしたことでしょう。一句も一言もわかりませんが」佐瀬弁護士が真っ先に匙を投げてしまいました。(野村胡堂の奇談クラブより)