『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』講談社より出版。詳細はコチラ!

【知らぬが仏】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

「知らぬが仏」の漫画

【ことわざ】
知らぬが仏

【読み方】
しらぬがほとけ

【意味】
本当のことを知らないために、腹を立てたり苦しんだりせず、平気でいられることのたとえ。転じて、当人だけが事情を知らずにのんきにしているさまをいう。

ことわざ博士
知らぬが仏は、事実を知れば心が乱れるのに、知らないために穏やかでいられるという状態を表すよ。
助手ねこ
悪口、失敗の裏事情、知らないほうが気楽な事実などを、当人だけが知らずにいる場面で用いるニャン。

【英語】
・Ignorance is bliss.(知らないことは幸せである)
・What you don’t know can’t hurt you.(知らないことは人を傷つけない)

【類義語】
・見ぬが仏(みぬがほとけ)

【スポンサーリンク】

「知らぬが仏」の語源・由来

ことわざを深掘り

「知らぬが仏」は、中国の故事に由来する故事成語ではなく、日本で広く使われてきたことわざです。知れば怒りや苦悩が起こるようなことでも、知らなければ心を乱さずにいられる、という人間の心理を、「仏」の穏やかな姿に重ねた表現です。

ここでいう「仏」は、単に仏像や死者を指すのではなく、煩悩(ぼんのう)から離れた静かな心のあり方を思わせる言葉です。仏教では、煩悩は人の心身を悩ませ、迷わせる心の働きと説明され、解脱(げだつ)は煩悩の束縛を離れて迷いの苦しみから離れる境地を指します。

このことわざは、仏そのものの教えを説いた言葉というより、仏教的な言葉を日常のたとえに取り入れたものです。事情を知らずに平然としている人を「仏」にたとえるのは少し大胆ですが、心が波立っていない様子だけを取り出すと、たしかに仏の穏やかさに似ている、という見立てが働いています。

古い用例として、『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年の序がある江戸時代前期の俳諧書、松江重頼編)に「ふみてもや雪にしらぬか仏のざ」という句が出てきます。これは、「仏の座」という植物名をかけながら、「知らぬが仏」に通じる言い方を用いたものと考えられます。

この段階では、現代の文章でよく使われる教訓めいた言い方だけでなく、俳諧の言葉遊びの中にも取り入れられていました。つまり、「知らぬが仏」は、早くから人の心の平静を表すだけでなく、言葉の響きや連想を楽しむ表現としても受け入れられていたのです。

江戸時代には、このことわざは江戸のいろはかるたにも収められ、広く知られるようになりました。かるたの絵札には、地蔵の頭の上にとんぼがとまっている情景が描かれていたと伝えられます。頭の上に何かがとまっていても気にせず静かにしている姿が、「知らないから穏やかでいられる」という意味を、目で見て分かる形にしていたのです。

のちには、皮肉の意味も強まりました。『処女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし)』(1864年、河竹黙阿弥作)には、「然しおれが斯ういふ気になって居るのを知らぬが仏」という用例が出てきます。この場合は、相手が真相を知らずにいることを、やや冷ややかに言う使い方に近いものです。

さらに近代以降の文章にも、「知らぬが仏」は、知れば後悔するような真相を知らずにいたほうがよい、という意味や、本人だけが事情を知らずにいることを皮肉る意味で用いられました。穏やかな心を表す面と、事情を知らない人をあざける面の二つが、現代まで残っています。

「見ぬが仏」や「見ぬもの清し」も、見たり知ったりしなければ心を乱されずにすむ、という考えをもつ近い表現です。「知らぬが仏」は、その中でも「知ること」と「心の平静」との関係を短く言い表したことわざとして定着しました。

現在では、軽い皮肉として使うこともあれば、「あえて知らせないほうが相手のためになる」という意味で使うこともあります。ただし、人をだますことをよいとする言葉ではありません。知れば苦しむこともあり、知らなければ穏やかでいられることもある、という人の心の動きを表すことわざです。

「知らぬが仏」の使い方

健太
昨日のリレーで、ぼくが走る順番を間違えたこと、先生は気づいていないみたいなんだ。
ともこ
ほかの班の子は気づいていたけれど、先生は結果だけ見てほめてくれたんだよね。知らぬが仏かもしれないね。
健太
本当のことを知ったら、先生はがっかりするかもしれない……。でも、次は順番を絶対に間違えないようにするよ!
ともこ
それがいいね。今回は先生が知らずにすんだけれど、自分では反省して直していこう。
【スポンサーリンク】

「知らぬが仏」の例文

知らぬが仏
  • 友人が自分の忘れ物をこっそり届けてくれたことを知らず、本人は知らぬが仏で平然としていた。
  • 会議で名前を呼び間違えられていたが、本人は録音を聞いていないので知らぬが仏だった。
  • 兄が大切にしている本を弟が落としてしまったが、傷が目立たず、兄は知らぬが仏のまま読んでいた。
  • 旅行の計画で一度予約を取り違えたことを父は知らず、知らぬが仏で出発の日を楽しみにしていた。
  • 自分の料理が少し焦げていたことに客は気づかず、知らぬが仏でおいしそうに食べていた。
  • 陰で悪口を言われていることを本人だけが知らず、知らぬが仏という様子で笑っていた。

主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序。
・河竹黙阿弥『処女翫浮名横櫛』1864年。





『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』(講談社)発売中♪

マンガでわかる ことわざ図鑑

◆試験に出ることわざを網羅
ことわざは小学、中学、高校、大学、さらに就職試験の問題になっています。ことわざの試験対策としてもオススメの一冊。

◆マンガで楽しみながらことわざを知る! 憶える!
本書では、マンガで楽しくわかりやすくことわざを解説し、記憶に定着させます。