【ことわざ】
縁に連るれば唐の物を食う
【読み方】
えんにつるればとうのものをくう
【意味】
縁があれば、遠い所の物でも食べることができるように、思いがけないものや疎遠なものと関係ができることのたとえ。


【英語】
・Connections can open doors(人とのつながりが思いがけない機会を開く)
【類義語】
・袖振り合うも多生の縁(そでふりあうもたしょうのえん)
・縁は異なもの味なもの(えんはいなものあじなもの)
【対義語】
・縁もゆかりもない(えんもゆかりもない)
「縁に連るれば唐の物を食う」の語源・由来
「縁に連るれば唐の物を食う」は、縁やめぐり合わせに引かれていくと、ふだんは届かない遠方の物にまで関わることがある、という考えから生まれた言葉です。「唐」は中国を指す古い言い方で、このことわざでは、遠い土地を思わせる語として働いています。
もとの姿は、遠い国の食べ物を口にするという、とても具体的なたとえです。昔の人にとって、遠方の珍しい食物は、だれでも気軽に手に入れられるものではありませんでした。
そのため、「唐の物を食う」という表現には、ふつうなら自分と関係のない遠いものにまで、思いがけず手が届くという意味合いがあります。ここから、食べ物だけでなく、人・場所・物事との予想外のつながりをいうことわざとして使われるようになりました。
古い用例として、『毛吹草』(寛永十五年序・江戸時代前期、松江重頼編)に「えんにつるれは唐〔たう〕のものをくふ」という形が出てきます。『毛吹草』は俳諧に関わる書物で、世に用いられる言葉や言い回しを含んでおり、このことわざが江戸時代前期には知られていたことを示します。
この古い形では、「連るれは」と濁点のない表記になっています。現代の形では「連るれば」と書き、「縁に引かれてつながっていくならば」という流れが読み取りやすくなっています。
後には、「縁に連るれば唐の物」のように末尾の「食う」を省いた形や、「縁によって唐の物を食う」という形も用いられました。言い回しにはゆれがありますが、縁があれば遠くの物とも関係ができる、という意味の芯は変わりません。
『俚言集覧』(江戸時代、太田全斎著)には、「縁につるれば唐土の物を食」という形が出てきます。「唐土」は中国、または遠い外国を思わせる言葉で、ここでも遠方の物を口にするたとえとして働いています。
『俚言集覧』には、さらに「遠々の物をくふ」ともいう、という説明が添えられています。「遠々」を「トホド」と読むことから、「唐土」という形になったのではないか、という説も記されています。
この説は、遠い土地の物という意味を強く意識した説明です。ただし、ことわざとして大切なのは、語形の細かな由来だけでなく、縁が人を思いがけない所へ連れていくという考え方です。
現在の使い方では、実際に外国の食べ物を食べる場面だけを指すわけではありません。人との紹介、偶然の出会い、思わぬきっかけによって、ふだん関係のない世界とつながるときに用いることわざです。
つまり、このことわざは、縁の力によって遠いもの・疎遠なもの・思いがけないものと関係が生まれることを、遠方の食べ物を口にするという分かりやすいたとえで表した言葉です。
「縁に連るれば唐の物を食う」の使い方




「縁に連るれば唐の物を食う」の例文
- 町内の手伝いで知り合った人の紹介で海外の料理教室に招かれ、縁に連るれば唐の物を食うと思った。
- 父の友人を通じて遠方の名産品を味わうことになり、縁に連るれば唐の物を食うとはこのことだ。
- 小さな親切がきっかけで外国の文化祭に参加できたのは、まさに縁に連るれば唐の物を食うである。
- 隣の席になった転校生の家族から珍しいお茶をいただき、縁に連るれば唐の物を食うと感じた。
- 会社の先輩とのつながりから遠い地域の仕事に携わることになり、縁に連るれば唐の物を食うを実感した。
- 商店街の案内をした旅行者から現地の菓子を贈られ、縁に連るれば唐の物を食うという言葉を思い出した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館『デジタル大辞泉』小学館。
・松江重頼編『毛吹草』寛永十五年序。
・太田全斎『俚言集覧』寛政九年以降成立。
・Merriam-Webster, “open doors for.” Merriam-Webster.com Dictionary.























