【故事成語】
衣は新に如くはなく、人は故に如くはなし
【読み方】
いはしんにしくはなく、ひとはこにしくはなし
【意味】
衣服は新しいものがよく、人は古くからつきあいのある人のほうがよいということ。古くからの友人や知人を大切にすべきだという教え。


【英語】
・Old friends and old wine are best(古い友人と古い酒は最もよい)
【類義語】
・衣は新しきに若くは莫く、人は故きに若くは莫し(ころもはあたらしきにしくはなく、ひとはふるきにしくはなし)
・友と酒は古いほどよい(ともとさけはふるいほどよい)
【対義語】
・喜新厭旧(きしんえんきゅう)
「衣は新に如くはなく、人は故に如くはなし」の故事
「衣は新に如くはなく、人は故に如くはなし」は、中国の古い言い方である「衣莫若新、人莫若故」や「衣不如新、人不如故」にもとづく表現です。「如くはなし」は「及ぶものはない」という意味で、「衣」は新しいものに及ぶものがなく、「人」は昔からのつきあいがある人に及ぶものがないという対比をなしています。
早い時期の形として、『晏子春秋(あんししゅんじゅう)』巻五・内篇雑上第五に「衣莫若新,人莫若故」とあります。『晏子春秋』は、春秋時代の斉の宰相である晏嬰の言行録で、成立年は未詳ですが、後人が編集したものです。
その場面では、景公と晏子が曲潢のほとりに立ったとき、晏子が「衣莫若新,人莫若故」と述べます。景公は、衣服は新しいものがよく、人は古い相手なら互いの情を知っているという趣旨で応じます。
このやりとりの後、晏子は、自分が年老いて力が足りないとして退きます。すると、景公の治める国は乱れ、景公は恐れて晏子を呼び戻します。この流れから、ことわざの「人は故に如くはなし」は、単なる懐かしさではなく、長く仕えてきた人物の信頼や経験を軽んじてはならないという教えにつながっています。
一方、「衣不如新,人不如故」という形は、漢代の作者未詳の詩『古艷歌』にも出てきます。この詩には、「煢煢白兔,東走西顧。衣不如新,人不如故。」とあり、孤独な白兎が東へ走りながら西を振り返る姿を通して、捨てられた女性の思いを表しています。
この詩の後半の句では、古い衣服は新しい衣服に及ばないが、人については、新しい相手より昔からの相手がよいという意味が述べられます。ここでの「故」は、昔から知っている人、旧交のある相手を指します。
「衣莫若新,人莫若故」は、君主と旧臣の関係をめぐる政治的な場面で語られ、「衣不如新,人不如故」は、離れていく相手に昔からの縁を思い出させる詩の言葉として伝わりました。どちらも、物は新しさが価値になりやすい一方で、人間関係では、時間をかけて築いた信頼こそ大切であるという、同じ考えを含んでいます。
日本語の「衣は新に如くはなく、人は故に如くはなし」は、この漢文の形を訓読調にして受け入れた言い方です。現在では、古い友人、長年の知人、昔から支えてくれた人を大切にする教えとして用いられます。
「衣は新に如くはなく、人は故に如くはなし」の使い方




「衣は新に如くはなく、人は故に如くはなし」の例文
- 転校先で新しい友人ができても、衣は新に如くはなく、人は故に如くはなしと思い、幼なじみに手紙を書いた。
- 祖父は、長年助け合ってきた仲間こそ宝だと語り、衣は新に如くはなく、人は故に如くはなしを大切にしていた。
- 新しい取引先に気を取られすぎず、衣は新に如くはなく、人は故に如くはなしの心で古くからの客を訪ねた。
- 部活動で新入部員と仲よくなったが、衣は新に如くはなく、人は故に如くはなしと考え、先輩への感謝も忘れなかった。
- 久しぶりに旧友と会い、衣は新に如くはなく、人は故に如くはなしという言葉の意味を実感した。
- 衣は新に如くはなく、人は故に如くはなしというように、長い時間をかけて築いた信頼は簡単に代えられない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・臺灣教育部編『重編國語辭典修訂本』臺灣教育部、2021年。
・『晏子春秋』成立年未詳。
・李昉等奉勅撰『太平御覧』984年。
・『古艷歌』。























