【ことわざ】
赤子は泣き泣き育つ
【読み方】
あかごはなきなきそだつ
【意味】
赤ん坊がよく泣くのは元気な証拠であり、泣きながら健やかに育っていくということ。


【類義語】
・泣く子は育つ(なくこはそだつ)
「赤子は泣き泣き育つ」の語源・由来
「赤子」は、生まれて間もない子、すなわち赤ん坊を指す言葉です。『狭衣物語(さごろもものがたり)』(1069〜1077年ごろ成立、平安時代)を伝える承応版の本文にも、「赤児(あかご)」という形が出てきます。このことから、赤ん坊を表す「あかご」は、古くから用いられてきた言葉です。
「泣き泣き」は、「泣きながら」という意味の言い方です。『申楽談儀(さるがくだんぎ)』(1430年・室町時代、観世元能が世阿弥の芸談を筆録した書)には、「なきなき女とうことなれば」とあり、「泣き泣き」という言い方そのものも、古い日本語の中で使われていました。
この二つを合わせた「赤子は泣き泣き育つ」は、赤ん坊が声を上げて泣く日々の姿と、その子が成長していくこととを結び付けた表現です。泣くことをただ困ったこととして受け取るのではなく、元気に生き、育っていく姿の一つとして受け止める、子育ての中の知恵を表しています。
古い記録の一つに、内田邦彦著『南総の俚俗(なんそうのりぞく)』(1915年・大正4年)があります。この本のことわざの部には、「赤子は泣きながら育つ」という形が収められています。
ここに記されている形は、現在の見出しに用いられる「泣き泣き」ではなく、「泣きながら」です。しかし、どちらも赤ん坊が泣きつつ育つことを表しており、「赤子」と「泣くこと」と「育つこと」とを結び付ける言い回しが、大正時代には地域に伝わることわざとして記録されていたといえます。
また、「泣く子は育つ」という短い形も、赤ん坊が泣くのは元気な証拠で、よく泣く子は丈夫に育つという、同じ考え方を表します。「赤子は泣き泣き育つ」は、赤ん坊を意味する「赤子」を初めに置き、「泣き泣き」と重ねて言うことで、泣き声を上げながら日々大きくなっていく姿を、より具体的に伝える言い方です。
このことわざは、赤ちゃんの泣き声に戸惑う人へ、泣くことも成長の道のりの一部なのだと伝える言葉です。赤ん坊の暮らしに寄り添う日常の経験から生まれた表現として、泣き声を前向きに受け止め、子どもの育ちを見守ろうとする心を表しています。
「赤子は泣き泣き育つ」の使い方




「赤子は泣き泣き育つ」の例文
- 初めての子の激しい泣き声で不安になる母親へ、祖父は赤子は泣き泣き育つと穏やかに語った。
- 夜泣きが続く日にも、父は赤子は泣き泣き育つと思い、落ち着いて子をあやした。
- 妹の大きな泣き声を聞いた兄は、赤子は泣き泣き育つという祖母の言葉を思い出した。
- 里帰りした娘に、母は赤子は泣き泣き育つのだから慌てすぎるなと声をかけた。
- 近所の人々は、元気な泣き声を聞いて、赤子は泣き泣き育つと笑顔で見守った。
- 子育てに疲れた夫婦は、赤子は泣き泣き育つという言葉に励まされ、気持ちを整えた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』全3巻、小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・内田邦彦『南総の俚俗』桜雪書屋、1915年。























