【ことわざ】
明日は明日の風が吹く
【読み方】
あしたはあしたのかぜがふく
【意味】
今日どんなことがあっても、明日はまた別の成り行きになるので、くよくよ心配しても始まらないということ。先のことを思いわずらいすぎず、気持ちを切り替える考え方を表す。


【英語】
・Tomorrow is another day.(明日はまた別の日)
【類義語】
・明日の事は明日案じよ(あすのことはあすあんじよ)
・ケセラセラ(けせらせら)
・成り行き任せ(なりゆきまかせ)
【対義語】
・取り越し苦労(とりこしくろう)
・備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし)
「〇明日は明日の風が吹く〇」の語源・由来
「明日は明日の風が吹く」は、古い中国の故事に由来する言葉ではなく、日本語の中で「明日」と「風」を結びつけて、これからの成り行きを表したことわざです。「風」は人の力で思いどおりにできない自然の動きであり、明日になれば今日とは違う風が吹く、つまり事態もまた変わるという考え方につながっています。
このことわざの古い用例として重要なのが、歌舞伎(かぶき)の『上総綿小紋単地(かずさもめんこもんのひとえじ)』です。読みは「かずさもめんこもんのひとえじ」と確認され、河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)の作品として伝えられています。
河竹黙阿弥は1816年に生まれ、1893年に没した、江戸から明治にかけて活躍した歌舞伎の狂言作者です。江戸末期の世情を写した白浪狂言などを多く書き、人物の気持ちや町の空気をせりふに生かすことにすぐれた作者でした。
『上総綿小紋単地』は、慶応元年、1865年に中村座のために書かれた作品です。上総市兵衛(かずさいちべえ)をめぐる歌舞伎狂言として位置づけられ、江戸時代末期の舞台でこの言い回しが使われていたことが分かります。
この作品の六幕には、「まあ、差掛って今夜の所を、明日は明日の風が吹けば」という形のせりふが出てきます。現在の定まった形は「明日は明日の風が吹く」ですが、古い用例では「吹けば」という形で、今夜は今夜としてしのぎ、明日になればまた別の成り行きがある、という気分を表していました。
この古い形から分かるのは、もともとこの言葉が、ただ無責任に投げ出すためのものではなかったという点です。目の前の困りごとをすぐに解決できないとき、今夜はひとまずその場を受け止め、明日の流れに望みをつなぐ、という町人らしい軽みと強さをもつ言い方だったといえます。
その後、この言葉は舞台のせりふにとどまらず、日常の中で使いやすいことわざとして定着していきました。「明日は明日の風」という言い方は、将来を細かく決めつけず、時が来れば別の展開もあると考える、やわらかな楽観を表します。
同じ考え方を表す異形として、「明日の事は明日案じよ」「明日の事は天道様次第」も伝えられています。どちらも、まだ来ていない明日を今日のうちから悩みすぎない、という発想を含んでいます。
昭和49年、1974年刊行の石牟礼道子(いしむれみちこ)『天の魚(てんのうお)』にも、「明日は明日の風の吹く」という近い形が出てきます。この用例は、近現代の文章の中でも、このことわざが暮らしの実感に近い言葉として生き続けていたことを示しています。
「明日は明日の風が吹く」は、今日の苦しさを軽く見る言葉ではありません。今日には今日の事情があり、明日には明日の成り行きがあると受け止めることで、過ぎたことやまだ来ないことに心を縛られすぎないようにする言葉です。
そのため、現在では、失敗した人を励ますとき、思いどおりにならない一日を終えるとき、また新しい気持ちで明日を迎えたいときに使われます。風の向きが変わるように、物事の流れも変わることがあるという、穏やかな希望をこめたことわざです。
「明日は明日の風が吹く」の使い方




「明日は明日の風が吹く」の例文
- 試合に負けて落ち込んだが、明日は明日の風が吹くと思い、次の練習に気持ちを向けた。
- 予定していた遠足が雨で延期になったので、明日は明日の風が吹くと考えて、家で読書を楽しんだ。
- 仕事の提案が通らなかった日は、明日は明日の風が吹くと自分に言い聞かせ、資料を見直した。
- 友人と少し気まずくなった夜、明日は明日の風が吹くと思い、明朝きちんと話そうと決めた。
- 旅行の計画が急に変わっても、明日は明日の風が吹くと受け止めれば、別の楽しみ方が見つかる。
- 思いどおりに進まない日こそ、明日は明日の風が吹くという言葉が心を軽くする。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・河竹黙阿弥著、河竹糸女補修、河竹繁俊校訂編纂『黙阿弥全集 第21巻』春陽堂、1926年。
・石牟礼道子『天の魚』講談社、1974年。























