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【轅を北にして楚に適く】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

轅を北にして楚に適く

【故事成語】
轅を北にして楚に適く

【読み方】
えんをきたにしてそにゆく

【意味】
目的と行動が食い違うこと。目指す所と、実際に進んでいる方向が反対で、努力するほど目的から遠ざかることのたとえ。

ことわざ博士
「轅を北にして楚に適く」の「轅」は、馬車や牛車の前方に突き出た二本のかじ棒を指すよ。
助手ねこ
南方にある楚へ行こうとしながら北へ向かうことから、目標と手段が合っていない場面で用いるニャン。

【英語】
・work at cross-purposes(目的や働きが食い違って失敗を招く)
・go against one’s own purpose(自分の目的に反する行動をする)

【類義語】
・北轅適楚(ほくえんてきそ)
・適楚北轅(てきそほくえん)
・南轅北轍(なんえんほくてつ)

【対義語】
・言行一致(げんこういっち)
・首尾一貫(しゅびいっかん)

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「轅を北にして楚に適く」の故事

故事成語を深掘り

「轅を北にして楚に適く」は、中国の古い書物に出てくる「南へ行くべきなのに北へ向かう」というたとえにもとづく故事成語です。「轅」は車を引かせるために前方へ出したかじ棒で、「適」は、ある所を目ざして行くという意味をもつ字です。

この形に近い文言は、『申鑒(しんかん)』(後漢、荀悦撰)「雜言下第五」に出てきます。『申鑒』は、政治のあり方や物事の道理を述べた思想書で、政体・時事・俗嫌・雑言に分けて構成されています。

荀悦は、後漢末の学者で、148年から209年に生きた人物です。曹操に招かれて献帝に講義し、『漢紀』や『申鑒』を著した学者として知られます。

『申鑒』「雜言下第五」には、「先民有言、適楚而北轅者」とあります。これは、昔の人の言葉として、「楚へ行こうとして、轅を北へ向ける者」というたとえを引いたものです。

その人は、楚へ行くのに北へ向かいながら、「吾馬良、用多、御善」と言います。つまり、「自分の馬はよく、旅費は多く、御者の腕もよい」と言って、方向そのものが間違っていることを気にしません。

しかし、馬がよく、旅費が多く、御者が上手であっても、北へ進めば南方の楚からは遠ざかります。『申鑒』では、これらの条件がよくなればなるほど、「其去楚亦遠矣」、すなわち楚からますます遠くなると述べています。

このたとえは、才能や条件があるだけでは十分ではない、という教えにもつながっています。進む道が正しくなければ、力を注ぐほど目的から離れてしまうため、行動の方向を目的に合わせることが大切だと示しています。

同じ発想を、さらに物語として伝える有名な話が、『戦国策(せんごくさく)』「魏策四」にあります。『戦国策』は、戦国時代の遊説の士の言説や献策を国別にまとめた書物で、前漢の劉向が整理したものとして伝わります。

『戦国策』の話では、魏王が趙の都である邯鄲を攻めようとします。これを知った臣下の季梁は、旅の途中から急いで引き返し、服のしわも直さず、頭の塵も払わないまま王に会いに行きます。

季梁は王に、道で出会った不思議な人の話をします。その人は楚へ行くと言いながら、車を北へ向けて走らせていました。

季梁が「楚は南にあるのに、どうして北へ向かうのか」と尋ねると、その人は「馬がよい」「旅費が多い」「御者が上手だ」と答えます。季梁は、条件がどれほどよくても、その道は楚へ向かう道ではないと諭します。

この話は、魏王への遠回しな忠告でした。王が諸侯の信頼を得て大きな事業を成し遂げたいなら、人々から信頼されることが大切であり、武力で趙を攻めれば、目標からかえって遠ざかるという意味です。

『戦国策』では、このたとえを「猶至楚而北行也」と表します。これは「楚へ行こうとして北へ進むようなものだ」という意味で、のちに「南轅北轍」などの成語としても定着しました。

「轅を北にして楚に適く」は、この古い発想を日本語で読み下した形です。楚を目ざすなら、まず南へ向かわなければならないという当たり前の道理を使って、目的と手段が食い違う愚かさを分かりやすく表しています。

現在では、合格したいのに勉強しない、健康になりたいのに不健康な生活を続ける、信用を得たいのに約束を破る、といった場面に使えます。望みをかなえるには、願いそのものだけでなく、そこへ向かう行動の方向が合っていなければならない、という教えを伝える故事成語です。

「轅を北にして楚に適く」の使い方

健太
テストで100点を取るために、今日から毎日夜遅くまでゲームをして夜更かしすることにしたんだ!
ともこ
えっ、勉強時間を増やすどころか、ゲームをして睡眠時間を削っちゃうの?
健太
うん、ゲームで脳をリフレッシュすれば、きっと明日の授業に集中できるはずだよ。
ともこ
それは轅を北にして楚に適くというもので、目標からどんどん遠ざかっているから、すぐに計画を見直したほうがいいよ!
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「轅を北にして楚に適く」の例文

例文
  • 合格したいと言いながら遊んでばかりいるのは、轅を北にして楚に適くようなものだ。
  • 健康になりたいのに夜更かしと暴食を続けるのでは、轅を北にして楚に適くことになる。
  • 店の信用を高めたいのに約束の納期を守らないのは、轅を北にして楚に適くだ。
  • 貯金を目標にしながら無計画な買い物を重ねるのは、轅を北にして楚に適く行動だ。
  • 友人と仲直りしたいのに悪口を言い続けるのは、轅を北にして楚に適くとしか言えない。
  • 実力を伸ばしたいなら、轅を北にして楚に適くような方法を改め、目的に合う努力を選ぶべきだ。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・教育部『成語典』2020年。
・荀悦『申鑒』後漢。
・劉向編『戦国策』前漢。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster、2026年。





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