【慣用句】
風穴を開ける
【読み方】
かざあなをあける
【意味】
槍や鉄砲の弾丸などで胴体を貫くこと。転じて、閉塞感のある組織や事態に新風を吹き込み、変化のきっかけをつくること。


【英語】
・change the status quo.(現状を変える)
【類義語】
・新風を吹き込む(しんぷうをふきこむ)
【対義語】
・現状維持(げんじょういじ)
「風穴を開ける」の語源・由来
「風穴」は、もともと、風を通すために壁などに設けた穴や、風が吹き通るすき間を指す言葉です。閉じた場所に風の通り道を作り、空気を入れ替える働きがあります。
古い用例は、『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年の序をもつ江戸時代前期の俳諧書、松江重頼編)に出てきます。「寒き夜の風穴ふさぐ置火哉」とあり、寒い夜に風の入る穴をふさぎ、暖を取る情景を詠んでいます。
『口真似草(くちまねぐさ)』(1656年・江戸時代前期、高瀬梅盛編)にも、「風穴ふさぎ寒さふせがん」とあります。この段階での「風穴」は、家の壁や戸などに生じた、実際に風が通る穴やすき間を表しています。
また、「風穴」には、山腹などにある奥深い洞穴という意味もあります。『諸国里人談(しょこくりじんだん)』(1743年・江戸時代中期、菊岡沾凉著)には、岩窟から絶えず強い風が吹くため、「風穴」と呼ぶという記述があります。
一方、「風穴を開ける」というまとまった言い方の古い用例は、洒落本(しゃれぼん)『卯地臭意(うじしゅうい)』(1783年・江戸時代中期、鐘木庵主人著)に出てきます。洒落本は、主に遊里の風俗や会話を描いた、江戸時代の読み物です。
その一節には、「こいつらは横ぱらへかざ穴をあけて、ふいごのかはりにしてやるべい」とあります。相手の脇腹を突き通し、空気を送る「ふいご」の代わりにしてやろうという、乱暴な脅し文句です。
ここでは、人の体に開いた傷口を、風が通り抜ける穴に見立てています。「ふいごのかはり」という言葉も、穴から空気が出入りする様子を意識した表現になっています。
このため、「風穴を開ける」には、槍や鉄砲などで胸や腹を突き通すという意味が生まれました。特に「どてっぱらに風穴を開ける」という形で、相手を傷つけたり、殺したりすると脅す言い方として使われました。
現在よく使われるのは、閉塞感のある組織や事態に、新しい動きを起こすという意味です。固く閉ざされた場所に穴を開ければ、そこから新しい風が入るように、古い制度や考え方に変化をもたらすことを表します。
古い脅し文句では、体を貫く恐ろしい穴が思い描かれていましたが、現代の比喩的な用法では、空気を通す穴という「風穴」本来の働きが前面に出ています。この二つの意味には、どちらにも「閉じていたものを突き破り、通り道を作る」という共通の形があります。
現代では、古い慣習が残る組織、競争の少ない市場、停滞した業界、意見を出しにくい集団などに対して用います。新しい方法や人物が、それまで動かなかった状況を揺り動かしたときに、「風穴を開ける」と表します。
つまり、「風穴を開ける」は、風を通す実際の穴を表す言葉から、体を貫く穴を表す脅し文句を経て、閉ざされた状況を破り、新しい流れを生み出すという現在の慣用的な意味へと広がった表現です。
「風穴を開ける」の使い方




「風穴を開ける」の例文
- 新人監督の大胆な戦術が、古い体質の野球界に風穴を開けた。
- 小さな出版社の新しい販売方法が、閉鎖的な流通制度に風穴を開けるきっかけとなった。
- 生徒会は意見箱を設け、発言しにくい校風に風穴を開けようとした。
- 地域の若者たちの企画が、停滞していた商店街に風穴を開けた。
- 新しい治療法の研究は、長く進展のなかった分野に風穴を開ける可能性をもつ。
- 彼女の率直な提案が、前例を重んじる職場に風穴を開けた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・EDP編『英辞郎 on the WEB』アルク。
・水野稔校注『黄表紙・洒落本集 日本古典文学大系59』岩波書店、1958年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序。
・鐘木庵主人『卯地臭意』1783年。























