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【君子は死するに衣冠を脱がず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語)

君子は死するに衣冠を脱がず

【故事成語】
君子は死するに衣冠を脱がず

【読み方】
くんしはしするにいかんをぬがず

【意味】
徳のある立派な人物は、死を前にしても身なりや態度を崩さず、最後まで品位と礼節を守るということ。

ことわざ博士
衣冠は、衣服と冠を合わせた言葉で、身なり全体を指すよ。
助手ねこ
死に直面するような重大な場面でも、姿勢や礼節を崩さない人物を表すときに用いるニャン。

【類義語】
・君子は死すとも冠を免がず(くんしはしすともかんむりをぬがず)

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「君子は死するに衣冠を脱がず」の故事

故事成語を深掘り

「君子は死するに衣冠を脱がず」は、古代中国の歴史書に記された、孔子の弟子・子路(しろ)の最期に由来します。もとになった出来事は、『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』の「哀公(あいこう)十五年」にあり、のちに司馬遷が前漢時代に著した『史記(しき)』(前91年ごろ完成)の「仲尼弟子列伝(ちゅうじていしれつでん)」にも収められました。

子路は、姓を仲、名を由といい、孔子の優れた弟子を指す「孔門十哲(こうもんじってつ)」の一人です。武勇に優れ、率直で正義感が強く、晩年には衛(えい)の国で、大夫(たいふ)である孔悝(こうかい)に仕えていました。

紀元前480年ごろ、衛では君主の位をめぐる内乱が起こりました。国を追われていた蒯聵(かいかい)が戻り、孔悝を捕らえて高い台へ連れて行き、当時の君主であった出公(しゅつこう)を国から追い出したのです。

このとき、子路は城外にいましたが、乱が起きたと聞くと、すぐに城へ引き返しました。途中で出会った同門の子羔(しこう)は、すでに城門が閉じられていたため、むざむざ災いを受けずに帰るよう勧めました。

しかし、子路は「食其食者不避其難」と答えました。人から俸禄(ほうろく)を受けて仕えている者は、その人が困難に陥ったときに逃げてはならない、という意味です。子路は、自分の身の安全よりも、仕える者としての責任を選びました。

やがて城内へ入った子路は、台の上にいる蒯聵に向かい、孔悝を捕らえておいても事態は収まらないと訴えました。さらに、孔悝を解放させるために台へ火を放とうとしたので、蒯聵は部下を差し向け、子路を攻撃させました。

激しい戦いの中で、子路の冠を固定していた纓(えい:冠のひも)が切られました。纓が切れれば冠が落ちてしまいますが、子路は戦いを続けるより先に、冠を正そうとしました。

そのとき、子路が口にしたのが、「君子死、冠不免」、すなわち「君子は死すとも冠を脱がない」という言葉です。古い注釈には、冠を地面に落とさないという意味だとあります。子路は切られたひもを結び直し、冠を整えたまま敵に討たれました。

『史記』では、原文が「君子死而冠不免」となり、その後に「遂結纓而死」と続きます。「そこで冠のひもを結び、そのまま死んだ」という意味です。この故事から、「結纓(けつえい)」は冠のひもを結ぶことだけでなく、死を覚悟して礼を守ることを表す言葉にもなりました。

中国の原文に出てくるのは「冠」ですが、日本語では、衣服と冠を合わせた「衣冠」という言葉を用い、「君子は死するに衣冠を脱がず」と表すことがあります。冠だけでなく、身なりや振る舞いまで含め、立派な人は最後まで品位を失わないという教えが、分かりやすく表されています。

この故事は、単に、いつも正式な服を着るよう勧めるものではありません。苦しいときや、敗北が避けられないときであっても、投げやりにならず、自分が大切にしてきた礼節や誇りを最後まで守ることの尊さを伝えています。

昭和18年に発表された中島敦の小説『弟子(ていし)』でも、子路が冠を拾って正しくかぶり、ひもを結んで最期を迎える場面が描かれました。この作品を通して、子路の「結纓して死ぬ」姿は、近代の日本でも、信念と礼を最後まで貫く人物像として広く知られるようになりました。

「君子は死するに衣冠を脱がず」の使い方

ともこ
今日の野球大会、九点差で負けているね。健太くん、帽子を投げてベンチに戻るの?
健太
もう勝てないと思ったら、悔しくて投げやりになってしまったよ……。
ともこ
君子は死するに衣冠を脱がずというよ。負けそうなときほど、主将らしく最後まで礼儀を守ろう。
健太
そうだね!帽子をかぶり直して、試合後のあいさつまで堂々とやり通すよ。
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「君子は死するに衣冠を脱がず」の例文

例文
  • 敗戦が決まっても、主将は君子は死するに衣冠を脱がずの姿勢で、帽子をかぶり直して整列した。
  • 退任会見の最後まで礼を失わなかった知事は、君子は死するに衣冠を脱がずを体現した。
  • 閉店の日、主人は君子は死するに衣冠を脱がずと心得、いつもどおり身なりを整えて客を迎えた。
  • 重い病の床でも来客の前では身支度を整えた祖父の姿に、君子は死するに衣冠を脱がずという言葉が重なった。
  • 舞台装置が壊れる事故の中でも、主演者は君子は死するに衣冠を脱がずの心で、最後の礼まで落ち着きを保った。
    激しい非難を受けても、議長は君子は死するに衣冠を脱がずを忘れず、乱暴な言葉を使わなかった。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・白川静『字通 普及版』平凡社、2014年。
・『春秋左氏伝』。
・杜預注、孔穎達疏『春秋左氏伝注疏』。
・司馬遷『史記』前91年ごろ。
・中島敦『弟子』1943年。





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