【慣用句】
朝駆けの駄賃
【読み方】
あさがけのだちん
【意味】
少しの負担なら苦にせずこなせるほど、物事がたやすいことのたとえ。


【英語】
・a piece of cake(とても簡単なこと)
・be a breeze(楽にできること)
・be no trouble at all(少しも苦にならないこと)
【類義語】
・朝飯前(あさめしまえ)
・お茶の子さいさい(おちゃのこさいさい)
・屁の河童(へのかっぱ)
【対義語】
・骨が折れる(ほねがおれる)
・一筋縄ではいかない(ひとすじなわではいかない)
・手に余る(てにあまる)
「朝駆けの駄賃」の語源・由来
この慣用句の出発点には、朝早く馬を走らせる場面があります。朝の馬は元気がよく、少しくらいの荷物は苦にしないというところから、たやすさのたとえになりました。
「駄賃」は、荷物を運んで受け取る運賃や手間賃を指す言葉です。もともと「行き掛けの駄賃」は、馬子が荷物を受け取りに行く途中に別の荷物も運び、その分の手間賃を得ることをいいました。
一方、「朝駆」は、もともと朝早く馬を走らせることをいう言葉です。そこから、早朝に不意をついて敵に攻めかかることも「朝駆」と呼ばれるようになりました。
1548年(天文17年・戦国時代)の『勝山記』には、朝早く攻めかける意味の「朝駆」が出てきます。早い時刻に勢いよく動けば、相手を破りやすいという感覚が、この言葉の後ろにありました。
そのため「朝駆」には、しだいに「たやすい仕事」「朝飯前の仕事」という意味も生まれます。1708年(宝永5年・江戸時代中期)の浄瑠璃(じょうるり)にも、「朝がけ」が、相手を生け捕りにするのがたやすいという意味で使われています。
「朝駆の駄賃」という形そのものは、1692年(元禄5年・江戸時代前期)の浄瑠璃『天智天皇』に、今たどれる古い例が残っています。そこでは「五人や十人は朝がけの駄賃ぞ」とあり、それくらいの人数はたやすい相手だ、という強気の気持ちを表すせりふになっています。
また、この言い方は「行きがけの駄賃」をもじったものと説明されています。もとの言い回しにある「駄賃」という言葉を生かしながら、意味を「ついでの利益」ではなく「楽にできること」へ移した形です。
ここで大切なのは、「朝駆けの駄賃」と「行き掛けの駄賃」は、似ていても意味が違うことです。前者は「少しの負担なら楽にこなせること」をいい、後者は「ある事のついでに別の利益を得ること」をいいます。
古い辞書の形では「朝駆の駄賃」と書かれ、実例では「朝がけの駄賃」という書き方も確かめられます。今は「朝駆けの駄賃」と書くことが多く、これは書き方の違いによるものです。
つまり、この慣用句は、朝の馬の勢いと、早朝の行動の強さを背後にもつ言い方です。そうした具体的な場面が重なって、「少しの負担なら楽にこなせる」という意味へ育っていったと考えられます。
今では日常で使う機会は多くありませんが、意味ははっきりしています。難しいところがもう済んでいて、残りがごくたやすい場面などで使うと、古い言い回しらしい味わいがよく出ます。
「朝駆けの駄賃」の使い方




「朝駆けの駄賃」の例文
- 計算が得意な姉にとって、小学校の九九の確認など朝駆けの駄賃だ。
- 準備が十分に済んでいたので、会場の案内板を書く作業は朝駆けの駄賃だった。
- その職人にとって、短い時間で机を組み立てることくらい朝駆けの駄賃であった。
- 毎日練習していた選手にとって、予選を通るだけなら朝駆けの駄賃だった。
- 資料を読みこんでいた担当者には、会議で質問に答えることは朝駆けの駄賃に見えた。
- 基本操作を覚えた社員にとって、その入力作業は朝駆けの駄賃というべきものだった。























