【ことわざ】
過ちの功名
【読み方】
あやまちのこうみょう
【意味】
失敗したことがかえって幸いし、思いがけずよい結果を生むこと。ねらって得た成功ではなく、偶然によい結果になった場合にもいう。


【英語】
・a blessing in disguise(初めは悪く見えたことが、あとでよい結果になる)
【類義語】
・怪我の功名(けがのこうみょう)
「過ちの功名」の語源・由来
「過ち」は、動詞「あやまつ」の連用形が名詞になった言葉で、古くから「やりそこない」「まちがい」「罪・とが」などを表しました。『万葉集』(8世紀後半成立、奈良時代)には「安夜麻知」と仮名で表された例があり、『日本書紀』(720年成立、奈良時代)の古い訓読にも、政の「失」を「あやまち」と読む例があります。
「功名」は、手柄を立てて名をあげること、またはその手柄を表します。もとは「高名」と書く例もあり、「高名」は平安時代には名声の意味で用いられ、鎌倉時代から軍記物語の中で「手柄を立てること」の意味が強まり、江戸時代を経て明治以後には手柄の意味を「功名」と書く形が主になりました。
この二つを結ぶと、「過ち」という悪い出発点から、「功名」というよい結果に至る意外さが生まれます。つまり、失敗・しくじりに見えたことが、あとから振り返ると手柄のような結果になった、という対照の面白さをもつ言い方です。
近い表現の「怪我の功名」は、『日葡辞書』(1603〜1604年、イエズス会宣教師ら編)にすでに出ています。この表現の「怪我」は、日常でいう負傷ではなく、過ちやしくじりを指し、「功名」は古くは「高名」とも書かれました。
「過ちの功名」に直接近い古い形としては、『世話尽(せわづくし)』(1656年・江戸時代前期、皆虚編)に「過の功名」が出てきます。この形も、「失敗したことがかえって幸いして、良い結果を生む」という意味を表し、現在の「過ちの功名」と同じ考え方につながります。
このことわざは、失敗をすすめる言葉ではありません。失敗そのものは失敗であっても、そのあとに偶然よい結果が生まれることがあり、人はそこに意外な幸いを見いだすことがあります。「過ちの功名」は、そうした思いがけない好転を、少しおかしみを含めて言い表すことわざです。
「過ちの功名」の使い方




「過ちの功名」の例文
- 資料を印刷し忘れたため全員で画面を見たところ、話し合いがまとまり、過ちの功名となった。
- 道をまちがえたおかげで静かな公園を見つけたのは、過ちの功名だった。
- 予定と違う材料を使ったら新しい味が生まれ、過ちの功名として店の人気商品になった。
- 発表の順番を取り違えたことで緊張がほどけ、過ちの功名で落ち着いて話せた。
- 企画書の形式をまちがえたが、かえって内容が見やすくなり、過ちの功名と言える結果になった。
- 電車を乗り過ごした結果、久しぶりの友人に会えたのは、まさに過ちの功名だった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・皆虚編『世話尽』1656年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』Cambridge University Press.























